米保険会社CEO射殺事件、男を殺人罪で起訴 マクドナルドで発見
Yahoo news 2024/12/10(火) BBC News
米ニューヨーク中心部の路上で、米医療保険大手ユナイテッドヘルスケアのブライアン・トンプソン最高経営責任者(CEO)が銃撃され死亡した事件で、警察は9日、重要参考人の男を逮捕した。男は同日夜、殺人罪で起訴された。
トンプソンCEO(50)はニューヨーク・マンハッタンのミッドタウンにあるヒルトンホテル前の路上で、4日午前6時45分ごろ、背中などを撃たれて死亡した。実行犯はトンプソン氏の所持品を奪ったりせず、そのまま現場から逃走した。
警察は逃走した男の画像などを公開し、行方を追っていた。
警察は9日、ニューヨークから約370キロ離れたペンシルヴェニア州アルトゥーナのマクドナルドで、銃を不法に所持した疑いでルイジ・マンジョーネ容疑者(26)を拘束したと発表した。
犯人に似た男がいると、店の従業員が警察に通報したという。警察は当初、重要参考人として拘束した。
捜査当局は、9日以前は事件の容疑者リストにマンジョーネ容疑者の名前はなかったことを明かし、マンジョーネ容疑者の発見は全く予想外だったとした。
マンジョーネ容疑者は9日夕、ペンシルヴェニア州の裁判所に出廷し、無許可で銃器を所持した罪、偽造罪、警察に偽の身分証を提示した罪で起訴された。保釈請求は却下され、同日中にペンシルヴェニア州の矯正施設に移送される。
さらに同日夜には、トンプソンCEOの射殺事件をめぐり、殺人罪で起訴された。
■追跡不能な「幽霊銃」を所持
マンジョーネ被告は、未登録で追跡不能ないわゆる「幽霊銃」を所持していた。「幽霊銃」は自宅で銃キットを組み立てて作ることができる。犯行に使われた銃は、おそらく3Dプリンターで製造されたものだと、警察はみている。被告は、発砲音を軽減する抑制装置も所持していたという。
「幽霊銃」の組み立てキットの大半は、身元確認なしでオンラインや店舗で購入できる。部品にはシリアルナンバーがついていない場合が多く、追跡が難しい。
オンライン上のチュートリアルでは、基本的な工具だけで1時間以内に、完全に機能する銃器を組み立てる方法が説明されている。
アルコール・たばこ・火器爆発物取締局(ATF)によると、犯罪現場で押収された「幽霊銃」の数は2017年から1000%以上増加している。アメリカで最も加速している、銃の安全をめぐる問題だと、専門家たちは指摘している。
「幽霊銃」を規制する連邦法はないが、少なくとも15州では規制する政策が取られている。
■米医療制度への不満記した文書
警察によると、被告は複数の身分証も所持していた。1つは本物の身分証で、別のものは偽物だったという。これらの身分証にはアメリカのパスポートや、ニュージャージー州の偽の身分証が含まれる。被告は銃撃事件の前、この偽の身分証を使ってニューヨークのホステルにチェックインしていた。
メリーランド州ボルティモア出身の被告が所持していた3ページにおよぶ手書きの文書には、米医療制度に対する不満がつづられていた。当局は、被告の「動機と考え方」を示すものだとしている。
ニューヨークの事件現場から押収された薬きょうには、「deny(拒否)」、「defend(防御)」、「depose(追放)」という文字が書かれていた。これは、保険会社が保険金の支払いを避けるために使う手法を批判する書籍のタイトルと似ている。
捜査当局は、これらの文字は、保険会社が利益を増やそうと保険金の支払いを避けるために用いる戦略だと、保険業界に反発する人々が指摘する「保険の3つのD」を指している可能性があるとみている。
アメリカの医療保険制度は複雑なだけでなく高額で、莫大な費用を個人が負担することも多い。
医療保険のほとんどは民間保険会社が提供しており、日本の国民皆保険制度のような公的医療保険制度はない。患者の治療内容の決定に、保険会社が影響力を持つこともある。
米コモンウェルス基金の最近の調査では、現役世代の保険加入者の45%が、本来は無料または保険が適用されるはずの医療費を請求されたと答えている。請求ミスの疑いを報告した人の半数以下が、実際に異議を唱えたという。また、回答者の17%は、医師から勧められた医療について、保険会社から支払いを拒否されたとしている。
米医療保険大手ユナイテッドヘルスケアのトンプソンCEOが射殺された事件は、1兆ドル規模の保険業界へ対するアメリカ国内の激しい怒りをあらわにした。
ソーシャルメディア「リンクトイン」にあるトンプソンCEOのアカウント履歴からは、多くの人が、保険金の支払いを拒否されたことに憤っていた様子がうかがえる。
ステージ4の転移性肺がんだという女性は、ユナイテッドヘルスケアの保険を解約したばかりだという。「薬の支払いをすべて拒否されたので。毎月、異なる理由で支払いを拒否される」と、この女性は述べた。
トンプソンCEOの妻は米NBCに対し、CEOが過去に脅迫メッセージを受け取っていたことを明かした。
「いくつか脅迫があった」、「(医療)保険が適用されないことに関してなのか? 詳細はわからない」、「彼(トンプソン氏)が自分を脅している人たちがいると言っていたことだけ知っている」と妻は話していた。
■保険大手トップの死を喜ぶ声も
トンプソンCEOの事件を受け、オンライン上ではユナイテッドヘルスケアの顧客や、ほかの保険サービス利用者らから、様々な反応が見られた。
それには、痛烈なジョークから、ユナイテッドヘルスケアなど保険会社から拒否された保険金請求件数に関するコメントなどが含まれる。
保険業界に批判的な人々からは、トンプソン氏には同情しないとの声が上がった。中には、同氏の死を喜ぶ極端な反応もあり、議論が起きていた。
ペンシルヴェニア州のジョシュ・シャピロ知事は、トンプソン氏殺害をめぐるソーシャルメディア上の一部の反応に言及した。
「特にオンライン上で、殺人犯を非難するのではなく、祝福しようとする向きがあり、非常に気がかりだ」とシャピロ知事は述べた。
「アメリカでは、政策をめぐる相違の解決や、意見の表明のために、冷酷に人を殺害することがあってはならない」
「市民が医療制度に不満を抱いていることは理解している。(中略)しかし、1人の男が自分の意見が最も重要だと考え、違法な幽霊銃を使って誰かを殺害することを、私は決して許さないし、誰も許すべきではない」
(英語記事 Suspect in healthcare CEO killing arrested after being spotted at McDonald's/Luigi Mangione: What we know about CEO shooting suspect/Luigi Mangione charged with murdering healthcare CEO in New YorkWhat we know about the NYC killing of healthcare executiveKilling of insurance CEO reveals simmering anger at US health system )
(c) BBC News
米保険大手CEO銃撃、容疑者はアイビーリーグの卒業生 「ユナボマー」に関する投稿も
Yahoo news 2024/12/10(火) CNN.co.jp
(CNN) 米ニューヨーク市警は9日、米大手保険会社ユナイテッドヘルスケアのブライアン・トンプソン最高経営責任者(CEO)を射殺した事件の重要参考人を26歳のルイジ・マンジョーニ容疑者と特定した。同容疑者はこの日、ペンシルベニア州アルトゥーナの警察に逮捕された。
警察によるとマンジョーニ容疑者にニューヨーク市での逮捕歴はない。
容疑者の祖父はメリーランド州ボルティモアの有力な不動産開発業者のニコラス・マンジョーニ氏。慈善家として知られる祖母のメアリー・C・マンジョーニ氏は昨年死去した。一家はメリーランド州で介護施設のチェーンを所有し、本人のSNSによると、マンジョーニ容疑者も2014年にはそこでボランティアとして働いていたという。
マンジョーニ容疑者は米北東部の名門8大学「アイビーリーグ」の一つ、ペンシルベニア大学を20年に卒業。コンピューター科学で学士と修士の学位を取得した。同大学の広報がCNNに明らかにした。
卒業後はソフトウェアのエンジニアとして、オンラインの自動車販売会社に勤務していた。警察によれば直近の住所はハワイ州となっている。
ユナイテッドヘルスケアのトンプソンCEOは今月4日、ニューヨークで会議が開催されるホテルに向かって歩いていたところを待ち伏せしていた男に至近距離から撃たれ、死亡した。
逮捕されたマンジョーニ容疑者は、事件で使用されたものと同様の銃及び消音装置を所持。その他「企業国家アメリカ」を非難する文言が記された複数の文書も携帯していたと警察は明らかにした。
またSNSの利用履歴から、1978年から95年にかけて連続爆弾事件を起こした「ユナボマー」ことセオドア・カジンスキー受刑者を擁護する書き込みを引用していたことも分かった。
この他、書籍のレビューサイト「Goodreads」の自身のプロフィルでは読んだ本、読みたい本として300冊近い書籍に言及。その中には精神疾患に関する本や原子爆弾を生み出した人物の伝記、慢性的な背部痛の対処法にまつわる多数の本が含まれているという。