東京国立博物館「挂甲の武人 国宝指定50周年記念特別展「はにわ」」。
2024年10月29日(火)。
第5章 物語をつたえる埴輪
埴輪は複数の人物や動物などを組み合わせて、埴輪劇場とも呼ぶべき何かしらの物語を表現します。ここではその埴輪群像を場面ごとに紹介します。例えば、古墳のガードマンである盾持人(たてもちびと)、古墳から邪気を払う相撲の力士など、多様な人物の役割分担を示します。また、魂のよりどころとなる神聖な家形埴輪は、古墳の中心施設に置かれ、複数組み合わせることで王の居館を再現したのではないかと考えられます。このほか動物埴輪も、種類ごとに役割が異なります。この章の動物埴輪は、従来にないダイナミックな見せ方で展示します。
重文・家形埴輪 大阪府八尾市 美園古墳出土 古墳時代・4世紀。
文化庁(大阪府立近つ飛鳥博物館保管)。
本件は、美園古墳(方墳)の周溝から出土した家形埴輪2点のうち1点である。本件は昭和六十二年に国保有となった。
家形埴輪2点は北側周濠コーナー部分より出土しており、1点は入母屋造の高床建物(平面2間×2間)を表現したもので、高さ70cm、棟の最大長75cm、桁行最大長55cm、梁行の最大長45cmであった。
大棟の妻部分に棟木を支える斗(ます)や束(つか)を表現し、また屋根の部分には鰭(ひれ)状の飾り、室内には床部分とそれより、3.5cm高くしたベッド状施設を設けるなど、細かな表現をしている。特にこのなかで、ベッド状の施設は、敷物を敷いた状態を細かな沈線で表現した、他に例のないものである。さらに、室内にはベッド状施設以外の床・内壁に赤彩が施され、赤彩された外壁の四面には、細密な沈線で「盾」を描く。それらの盾には鋸歯文による文様が施されていた。
この家形埴輪は、かなり精巧に作られており、当時の首長の住居を忠実に再現している可能性が高いとされる。
重文・家形埴輪 奈良県桜井市外山出土 古墳時代・5世紀。東京国立博物館。
上屋根部が切妻、下屋根部が寄棟となった入母屋造と呼ばれる屋根の家である。切妻部には棟覆(押縁)を線刻で表現し、妻には破風板をつけ、寄棟部には四面それぞれに線刻で区画を施している。建物の壁には入口ないし窓の表現がある。