北円堂
金澤 ひろあき
大学の頃、奈良出身の同級生が、「奈良はなーんにもないところで・・・」と謙遜していました。
確かに若者が楽しむものは「なーんにもない」のです。しかし、東大寺、春日大社とそれを囲む自然林や古い町並みが好きな私は、せっせと通うことになりました。
あの頃に比べると、ずいぶん変わってしまいましたが、興福寺や春日大社にはおもかげがいっぱい残っていて懐かしいです。その中でもなくなられた方のことなどを、ふっと思い出します。
興福寺の北西隅に北円堂があります。円堂と言っても八角のお堂です。もとは藤原氏の祖、不比等の供養のために建てられたそうです。廟堂なので八角だとか。
平安末期に平家が大仏といっしょに焼いてしまったのを、再建しています。春と秋にだけ拝観できます。
小さなお堂ですが、中は素晴らしいですよ。運慶作の仏様がいっぱい並んでいます。中央に弥勒如来。50億年後に人類を救いに現れるとか。
そのとき、どんな教えを説かれるのでしょうか。
如来の左に世親。気の強そうな顔をしています。右手に無著。穏やかな顔つきです。二人は北インドの僧で、居間は弥勒とともにトソツ天にいるとか。この像がリアルで今にも動きだしそうです。これも運慶作。周りに四天王。平安時代の仏像だそうです。
法相宗と言われてもピンときませんが、『西遊記』でおなじみに玄奘さんが開かれたそうです。『般若心経』を含めた『般若経』がお経だそうで、そう言われると少し親しみが感じられます。三島由紀夫の『豊饒の海』にも出てきます。
兄弟は弥勒の脇侍風薫る ひろあき