寝室の籐のソファ…其処はノエルの大好きな場所…滝川は今…その場所に身を沈めてぼんやりと音楽を聴いている…。
愛用のDAPを通してジャンル無視のお気に入りの曲が滞ることなく…滝川の鼓膜から脳に伝わる…。
来週から撮影も本番に入る…。 すでに必要なセットは用意されていた…。
西沢の依頼を受けた仲根が、見たままの像を送ってくれるお蔭で、少しはまともな写真が撮れてはいるらしいが…それを表に出すつもりはさらさらなかった…。
自分自身の眼で撮れない以上…それは自分の生み出したものではない…。
やはり…松村にチャンスを与えてやるべきなのだ…。
紫苑を他の写真家の手に委ねるのは…個人的には…面白くはないが…。
あれこれと考えごとをしていたせいか…足元を照らす窓からの陽射しが揺らぎながら忍び寄ってくる気配にも気付かずにいた…。
何者かに身体を探られるような感覚を覚えた時…すでに全身が柔らかい光に包まれていた…。
「間違えてないか…? 僕は紫苑じゃないぜ…。 」
イヤホーンを外しながら滝川は自分を弄っている者に問いかけた…。
『。o○…。』
滝川にとって意味を成さない音が悪戯に鼓膜を刺激した。
困ったな…僕には奴等の言葉が分からないからなぁ…。
何か話しかけてきているようでもあるが…理解できない…。
ノエルが居たら…媒介して貰えるんだが…。
『○o。…。』
滝川の手にしているイヤホーンにひと際強い光があたった…。
光がまったく見えないわけじゃないが…何となくもわっと温かくなったことでそれがさらにはっきりと分かった。
えっ…これをつけろって…?
滝川はもう一度イヤホーンをつけた…。
相変わらず曲が続いている…。
『ら…ぷら…す…ま…もの…。 』
曲のどこか遠くの方で…そんな音がしたような…。
なんじゃ…そりゃ…?
『.。o○…。』
耳を澄ませても…何を話しているのか…さっぱり分からなかった。
魔物…と言う言葉を聞きなれた耳が何とか働いて…やっとこれだけ…。
ラプラス…魔物…。
滝川を包んでいた光は次第に薄れていき…やがてもとの穏やかな陽射しに戻った。
何を言おうとしていたのか…?
いつもなら…滝川には姿どころか気配でさえもまともには捉えさせない太極…。
それが滝川に直接語りかけてきた…。
ほとんど通じない言葉ではあるけれど…。
滝川の意識がある時にこれほど接近したのは気との攻防以来のことだ…。
紫苑なら分かるだろうか…?
それとも…怜雄か…?
怜雄の方が知識的には確実だけど…話が他所へ飛んじゃうかも…。
紫苑に…訊いた方が早いかな…。
滝川は立ち上がると急いで寝室を出た…。
「ラプラスは…物理学者だ…。 」
背広の上着を脱ぎながら…ゆったりと怜雄は言った。
そこんとこはもういいんだよ…と内心…滝川は焦れた…。
とっくに紫苑から聞いてる…。
「ナポレオン時代の内務大臣でな…。 数学者であり…天文学者でもあった…。
よく知られているニュートンよりは少し後の人だよ…。 」
西沢とノエルが居間のテーブルに夕餉の料理を運んできた…。
よく煮込まれた牛肉の塊がふわんと湯気を立てている。
怜雄は思わず嬉しそうな声をあげた…。
「…で魔物というのは…? 」
怜雄が料理に気を取られているのを、急かすように滝川が訊いた…。
「ラプラスが考えた仮想上の生き物で…宇宙のすべての物質の今在る状態を厳密に把握していると仮定されている…。
ラプラスは…そういう魔物が居るとしたら…その魔物は未来を予言することができるというんだ…。 」
未来を…?
聞いていた三人は思わず顔を見合わせた…。
「そう…宇宙を構成する物質の未来を…ね。 けれども…これは量子論によって否定された…。
物理学の講義をするな…って釘差されてるから…簡単に言うとだな…。
量子論で扱うミクロの世界…電子レベルの世界では…いろんな状態が共存しているから…その何処を観測するかで結果が変わるんだ…。
たとえ…現在の状況をすべて厳密に把握していても…何処を観るか…がまだ決まってないのに…魔物はこの宇宙の未来を正確には予言できるはずない…ってこと…。」
うぅ…全然…簡単じゃねぇし…。
聞き手三人が揃って固まった…。
人間の未来じゃなくて…物理的な未来の話かよ…。
「…量子論は…ともかく…太極はなぜラプラスの魔物を持ち出したんだろう…?
出所はアカシックレコードなんだろうけど…そんなものまったく知らん人の方が多いだろうに…。 」
何考えてんだかな…滝川は首を傾げた。
だいたい…そんな個人の名前…よくもまあ膨大な記憶の中からピックアップしたもんだ…。
ひとりひとりの人間になんてよほどのことがない限り眼を向けないくせにさ…。
「ひょっとしたら…太極たちから見れば…科学者こそがみんなに知られていて当然の存在なのかも知れないよ…。
エナジーにとっちゃ…自分たちのことを研究さているようなもんだからね…。 」
案外…学者オタクだったりしてな…と西沢は笑った。
あっ…なるほどね…。
見方によっちゃ…奴等…そこにだけは注目してるかもしれん…。
けどなぁ…。
自分たちを調べている〇〇というやつがいる…のは把握したとして…だ…。
そいつがどんな説を唱えているか…なんてとこまでは考えないと思うぞ…。
存在のレベルが違い過ぎて…其処まで知る意味がない…。
「現在のことが全部分かっていても…未来は予言できない…。
太極…自分のことを言ってるんだろうか…? 」
誰にともなく…ノエルがぼそっと呟いた…。
えっ…?
周りの視線が一斉にノエルに向けられた。
「何となく…そんな気がしたんだ…。
自分とラプラスの魔物とを重ねてるんじゃないかと…。 」
太極に見通せない未来…。
「なぜ…そんなことを僕に…?
紫苑やノエルに…なら分かるけど…。 」
滝川は怪訝そうな表情を浮かべた。
「なぜ…って訊かれても…太極の話を聞いてないから…わかんないけど…。
このところ…先生のこと認めてるようなんだ…エナジーたち…。
先生に用事があったことは確かだと思うよ…。 」
ふ~ん…用事…ねぇ…。
まぁ…仮にそうだとしても…言葉分からねぇんじゃどうしようもねぇ…。
「紫苑の中の魔物…のことじゃ…ないかな…? 」
少しばかり自信なさげに怜雄が言った。
西沢は身を強張らせた。
「紫苑の中の滅のエナジーが目覚めて動き出すか否か…は人間の選択にかかっているんだろ…?
それは太極にも予測ができない…。 そういうことじゃないのか…? 」
紫苑の中の…魔物…。
それなら…満更…無関係というわけでもないか…。
けど…どうしろと…言うんだろう…。
紫苑ひとりでさえ完全には抑えられないのに…と滝川は困惑した…。
玄関の方で子供たちの声がした。
ぱたぱたと駆けて来る足音が聞こえる…。
「ただいまぁ…。 キャメレル買ってきたよ…。 」
吾蘭が嬉しそうにキャラメルの箱を見せた。
傍に来人と絢人がぴったりとくっついている…。
美味しそうだね…と言いながらノエルは笑顔で立ち上がった。
ひとちゅだけ食べていい…?
子供たちは真剣な顔でノエルに訊ねた。
晩御飯の前だと…ちゃんと自覚しているようだ…。
ノエルが返事するより早く…三人の背後から荷物を抱えた輝が現れた。
「あんたたち…手を洗ってらっしゃい…。 キャラメルはそれからよ…。 」
子供たちに声をかけながら輝は袋をノエルに渡した…。
きゃっきゃと歓声をあげながら子供たちは洗面所に向かって駆けて行った…。
「はい…デザート…。 遅くなって御免ね…。
ついでに電気屋さんに寄ってたのよ…。 」
電気屋さん…?
滝川は輝の方に顔を向けた。
305号室はもともと滝川の部屋なので、電球でも切れたのかと思った。
「恭介…御免ねぇ…。 あの高そうなDVDレコーダー…壊しちゃったのよ…。
今…修理して貰ってる…。 修理できなかったら弁償するわ…。
気付かないうちにケントが触ってたらしいの…。
子供番組…録画して見せてたのが不味かったらしくて…ボタン押せば絵が出ると思ってたのね…。
見たい絵が全然出てこないものだから…あれこれ弄りまくったみたいで…。
ケント…先生に御免なさいして…。 」
ちょうど…戻ってきた絢人を輝は滝川の前へ押し出した。
あぁ…そう…DVDレコーダーね…。
子供は何でも触りたがるからな…。
「いいよ…そんなの…。 ケント…おいで…。 」
滝川が手を差し出すと絢人は嬉しそうに飛んできた。
「先生の大事なものに…黙って触らないって約束してくれる…?
ママがいいよ…って言ってからなら…触ってもいいけど…。 」
滝川は絢人を膝の上に座らせて頭を撫でながら話した…。
絢人はうんうんと頷いた。
よし…いい子だ…。
「子供って本当に何をやるか分からないよな…。
恵も有理も小さい頃には思っても見ない悪さをやらかしてくれたぜ…。
VHSのスロットに玩具詰めたりしてな…。 」
怜雄が笑いながら言った。
何をするか分からない子供…。
太極にとっては人間もそうだ…。
何を…するか…分からない…子供…。
現在のことはすべて分かっていても…未来は…。
何かが…滝川の脳裏で閃いた…。
「紫苑…庭田が危ない…! あいつ…また何かしでかすぞ…! 」
あいつ…って…HISTORIANの…?
新天爵さまが養育を引き受けた…あの少年の顔が西沢の眼に浮かんだ…。
今は普通の少年たちと同じように学校へ通っていると聞いている…。
特に…少年の行動に問題があるとは報告されていない…。
「あいつを助けたのは僕なんだ…。 だから…僕に忠告してきた…。
また何か企んで…エナジーの記憶領域にアクセスしたに違いない…。
ラプラス…が何を意味するのか分からないけれど…あいつが何か仕出かせばまた紫苑の中の魔物が目覚める…。
紫苑…とりあえず…急ぎ庭田に連絡を…。
天爵さまのことだから大事無いとは思うけど…あいつは見た目よりずっと大きな力を使うから…。
宗主や祥さんにも知らせておいた方がいいかも…。 」
ただならぬ気配を感じ取った滝川の勢いに促されて…西沢は急ぎ受話器を手にした…。
ものの数分後には…関連するすべての組織が再び警戒態勢に入った…。
それが何時起こることなのかさえ…誰も予測できないままに…。
次回へ
愛用のDAPを通してジャンル無視のお気に入りの曲が滞ることなく…滝川の鼓膜から脳に伝わる…。
来週から撮影も本番に入る…。 すでに必要なセットは用意されていた…。
西沢の依頼を受けた仲根が、見たままの像を送ってくれるお蔭で、少しはまともな写真が撮れてはいるらしいが…それを表に出すつもりはさらさらなかった…。
自分自身の眼で撮れない以上…それは自分の生み出したものではない…。
やはり…松村にチャンスを与えてやるべきなのだ…。
紫苑を他の写真家の手に委ねるのは…個人的には…面白くはないが…。
あれこれと考えごとをしていたせいか…足元を照らす窓からの陽射しが揺らぎながら忍び寄ってくる気配にも気付かずにいた…。
何者かに身体を探られるような感覚を覚えた時…すでに全身が柔らかい光に包まれていた…。
「間違えてないか…? 僕は紫苑じゃないぜ…。 」
イヤホーンを外しながら滝川は自分を弄っている者に問いかけた…。
『。o○…。』
滝川にとって意味を成さない音が悪戯に鼓膜を刺激した。
困ったな…僕には奴等の言葉が分からないからなぁ…。
何か話しかけてきているようでもあるが…理解できない…。
ノエルが居たら…媒介して貰えるんだが…。
『○o。…。』
滝川の手にしているイヤホーンにひと際強い光があたった…。
光がまったく見えないわけじゃないが…何となくもわっと温かくなったことでそれがさらにはっきりと分かった。
えっ…これをつけろって…?
滝川はもう一度イヤホーンをつけた…。
相変わらず曲が続いている…。
『ら…ぷら…す…ま…もの…。 』
曲のどこか遠くの方で…そんな音がしたような…。
なんじゃ…そりゃ…?
『.。o○…。』
耳を澄ませても…何を話しているのか…さっぱり分からなかった。
魔物…と言う言葉を聞きなれた耳が何とか働いて…やっとこれだけ…。
ラプラス…魔物…。
滝川を包んでいた光は次第に薄れていき…やがてもとの穏やかな陽射しに戻った。
何を言おうとしていたのか…?
いつもなら…滝川には姿どころか気配でさえもまともには捉えさせない太極…。
それが滝川に直接語りかけてきた…。
ほとんど通じない言葉ではあるけれど…。
滝川の意識がある時にこれほど接近したのは気との攻防以来のことだ…。
紫苑なら分かるだろうか…?
それとも…怜雄か…?
怜雄の方が知識的には確実だけど…話が他所へ飛んじゃうかも…。
紫苑に…訊いた方が早いかな…。
滝川は立ち上がると急いで寝室を出た…。
「ラプラスは…物理学者だ…。 」
背広の上着を脱ぎながら…ゆったりと怜雄は言った。
そこんとこはもういいんだよ…と内心…滝川は焦れた…。
とっくに紫苑から聞いてる…。
「ナポレオン時代の内務大臣でな…。 数学者であり…天文学者でもあった…。
よく知られているニュートンよりは少し後の人だよ…。 」
西沢とノエルが居間のテーブルに夕餉の料理を運んできた…。
よく煮込まれた牛肉の塊がふわんと湯気を立てている。
怜雄は思わず嬉しそうな声をあげた…。
「…で魔物というのは…? 」
怜雄が料理に気を取られているのを、急かすように滝川が訊いた…。
「ラプラスが考えた仮想上の生き物で…宇宙のすべての物質の今在る状態を厳密に把握していると仮定されている…。
ラプラスは…そういう魔物が居るとしたら…その魔物は未来を予言することができるというんだ…。 」
未来を…?
聞いていた三人は思わず顔を見合わせた…。
「そう…宇宙を構成する物質の未来を…ね。 けれども…これは量子論によって否定された…。
物理学の講義をするな…って釘差されてるから…簡単に言うとだな…。
量子論で扱うミクロの世界…電子レベルの世界では…いろんな状態が共存しているから…その何処を観測するかで結果が変わるんだ…。
たとえ…現在の状況をすべて厳密に把握していても…何処を観るか…がまだ決まってないのに…魔物はこの宇宙の未来を正確には予言できるはずない…ってこと…。」
うぅ…全然…簡単じゃねぇし…。
聞き手三人が揃って固まった…。
人間の未来じゃなくて…物理的な未来の話かよ…。
「…量子論は…ともかく…太極はなぜラプラスの魔物を持ち出したんだろう…?
出所はアカシックレコードなんだろうけど…そんなものまったく知らん人の方が多いだろうに…。 」
何考えてんだかな…滝川は首を傾げた。
だいたい…そんな個人の名前…よくもまあ膨大な記憶の中からピックアップしたもんだ…。
ひとりひとりの人間になんてよほどのことがない限り眼を向けないくせにさ…。
「ひょっとしたら…太極たちから見れば…科学者こそがみんなに知られていて当然の存在なのかも知れないよ…。
エナジーにとっちゃ…自分たちのことを研究さているようなもんだからね…。 」
案外…学者オタクだったりしてな…と西沢は笑った。
あっ…なるほどね…。
見方によっちゃ…奴等…そこにだけは注目してるかもしれん…。
けどなぁ…。
自分たちを調べている〇〇というやつがいる…のは把握したとして…だ…。
そいつがどんな説を唱えているか…なんてとこまでは考えないと思うぞ…。
存在のレベルが違い過ぎて…其処まで知る意味がない…。
「現在のことが全部分かっていても…未来は予言できない…。
太極…自分のことを言ってるんだろうか…? 」
誰にともなく…ノエルがぼそっと呟いた…。
えっ…?
周りの視線が一斉にノエルに向けられた。
「何となく…そんな気がしたんだ…。
自分とラプラスの魔物とを重ねてるんじゃないかと…。 」
太極に見通せない未来…。
「なぜ…そんなことを僕に…?
紫苑やノエルに…なら分かるけど…。 」
滝川は怪訝そうな表情を浮かべた。
「なぜ…って訊かれても…太極の話を聞いてないから…わかんないけど…。
このところ…先生のこと認めてるようなんだ…エナジーたち…。
先生に用事があったことは確かだと思うよ…。 」
ふ~ん…用事…ねぇ…。
まぁ…仮にそうだとしても…言葉分からねぇんじゃどうしようもねぇ…。
「紫苑の中の魔物…のことじゃ…ないかな…? 」
少しばかり自信なさげに怜雄が言った。
西沢は身を強張らせた。
「紫苑の中の滅のエナジーが目覚めて動き出すか否か…は人間の選択にかかっているんだろ…?
それは太極にも予測ができない…。 そういうことじゃないのか…? 」
紫苑の中の…魔物…。
それなら…満更…無関係というわけでもないか…。
けど…どうしろと…言うんだろう…。
紫苑ひとりでさえ完全には抑えられないのに…と滝川は困惑した…。
玄関の方で子供たちの声がした。
ぱたぱたと駆けて来る足音が聞こえる…。
「ただいまぁ…。 キャメレル買ってきたよ…。 」
吾蘭が嬉しそうにキャラメルの箱を見せた。
傍に来人と絢人がぴったりとくっついている…。
美味しそうだね…と言いながらノエルは笑顔で立ち上がった。
ひとちゅだけ食べていい…?
子供たちは真剣な顔でノエルに訊ねた。
晩御飯の前だと…ちゃんと自覚しているようだ…。
ノエルが返事するより早く…三人の背後から荷物を抱えた輝が現れた。
「あんたたち…手を洗ってらっしゃい…。 キャラメルはそれからよ…。 」
子供たちに声をかけながら輝は袋をノエルに渡した…。
きゃっきゃと歓声をあげながら子供たちは洗面所に向かって駆けて行った…。
「はい…デザート…。 遅くなって御免ね…。
ついでに電気屋さんに寄ってたのよ…。 」
電気屋さん…?
滝川は輝の方に顔を向けた。
305号室はもともと滝川の部屋なので、電球でも切れたのかと思った。
「恭介…御免ねぇ…。 あの高そうなDVDレコーダー…壊しちゃったのよ…。
今…修理して貰ってる…。 修理できなかったら弁償するわ…。
気付かないうちにケントが触ってたらしいの…。
子供番組…録画して見せてたのが不味かったらしくて…ボタン押せば絵が出ると思ってたのね…。
見たい絵が全然出てこないものだから…あれこれ弄りまくったみたいで…。
ケント…先生に御免なさいして…。 」
ちょうど…戻ってきた絢人を輝は滝川の前へ押し出した。
あぁ…そう…DVDレコーダーね…。
子供は何でも触りたがるからな…。
「いいよ…そんなの…。 ケント…おいで…。 」
滝川が手を差し出すと絢人は嬉しそうに飛んできた。
「先生の大事なものに…黙って触らないって約束してくれる…?
ママがいいよ…って言ってからなら…触ってもいいけど…。 」
滝川は絢人を膝の上に座らせて頭を撫でながら話した…。
絢人はうんうんと頷いた。
よし…いい子だ…。
「子供って本当に何をやるか分からないよな…。
恵も有理も小さい頃には思っても見ない悪さをやらかしてくれたぜ…。
VHSのスロットに玩具詰めたりしてな…。 」
怜雄が笑いながら言った。
何をするか分からない子供…。
太極にとっては人間もそうだ…。
何を…するか…分からない…子供…。
現在のことはすべて分かっていても…未来は…。
何かが…滝川の脳裏で閃いた…。
「紫苑…庭田が危ない…! あいつ…また何かしでかすぞ…! 」
あいつ…って…HISTORIANの…?
新天爵さまが養育を引き受けた…あの少年の顔が西沢の眼に浮かんだ…。
今は普通の少年たちと同じように学校へ通っていると聞いている…。
特に…少年の行動に問題があるとは報告されていない…。
「あいつを助けたのは僕なんだ…。 だから…僕に忠告してきた…。
また何か企んで…エナジーの記憶領域にアクセスしたに違いない…。
ラプラス…が何を意味するのか分からないけれど…あいつが何か仕出かせばまた紫苑の中の魔物が目覚める…。
紫苑…とりあえず…急ぎ庭田に連絡を…。
天爵さまのことだから大事無いとは思うけど…あいつは見た目よりずっと大きな力を使うから…。
宗主や祥さんにも知らせておいた方がいいかも…。 」
ただならぬ気配を感じ取った滝川の勢いに促されて…西沢は急ぎ受話器を手にした…。
ものの数分後には…関連するすべての組織が再び警戒態勢に入った…。
それが何時起こることなのかさえ…誰も予測できないままに…。
次回へ
doveの中で…登場人物たちが繰り返し演技してくれますよ…。
同じ場面でもシチュエーション変えて何度もね…。
とても文章にできないようなことも…時々…。
だから…夢の中のお話…なんです。
おかしいですね…。
創作欲、表現欲なんですよ。
その気にさせるものが体内に居るということが。
本当に日記風なら別ですが・・。
それは本当に不思議な感覚です…。
時折…彼等は本当は実在する人物なんじゃないか…と錯覚するくらいです。
doveさんのはストーリー性のあるもので、「詩」の場合と違うかも。僕はトランス的な状態もdoveさんの状態もわかるけど、他人には説明しづらいですね。
夢想家ゆえ・・?ここまでですね。
芸術家に有りがちなエピソードですね。
生活が出来ない。
美を追求せずには生きられない。
傾向の強い人間なだけで
これでナルシスは止めましょう。