祐さんの散歩路 Ⅱ

日々の目についたことを、気ままに書いています。散歩路に咲く木々や花などの写真もフォトチャンネルに載せました。

・ 東電よさらば 

2014-07-09 22:04:37 | 原発事故
日経新聞に「東電よさらば 会津の造り酒屋が挑む電力自立 会津電力社長に聞く」(編集委員 滝順一 2014/7/7 7:00 記事保存)という記事があります。無責任な政府や東電に対して、地方の造り酒屋の社長が立ち上がっています。一人一人が立ち上がり、意思表示をすることによって、企業や官僚の責任を問わなければならませんね。
記事を転載します。


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 原子力に頼らない、再生可能エネルギーによる地域の自立を目指して昨年発足した会津電力(福島県喜多方市)。5月末に喜多方市内で、最初のメガソーラー発電所を起工した。社長の佐藤弥右衛門氏は、同市で220年以上続く造り酒屋の9代目社長でもある。機会があれば「東京電力から猪苗代湖などの水利権を買い取って、会津をエネルギー面で自立させたい」と話す。


■「小水力発電所を20カ所ほど設けたい


 ――発足1年でメガソーラーの起工に至った。これからの事業の展望は。

「起工した雄国(おぐに)発電所は喜多方市東部の山の斜面、約2万7千平方メートルに3740枚の太陽光パネルを設置する。発電容量は1メガ(1千キロ)ワットだ。経済産業省の市民交流型再生可能エネルギー導入推進事業の補助を得て、子どもたちが再生可能エネルギーについて学べる体験学習施設を併設する。今年10月には完成させたい」
「このあと、会津地域で小水力発電所を20カ所ほど設けたい。適地は調査中だが、分散型のシステムとして通常は固定価格買い取り制度に基づき売電しつつ、停電時などはコミュニティーの電気を送る非常電源に使えるものを目指す」

「その次はバイオマスだ。会津は森林が豊かだ。戦後の植林の後、間伐などが進まず、森は問題を抱えている。再生可能エネルギーによる地域振興を目指す一般社団法人会津自然エネルギー機構(五十嵐乃里枝理事長)が森林資源を活用したバイオマス発電の実現を考えており、連携していきたい。バイオマスは雇用を生み地域振興に直結する」
「東邦銀行(福島市)など地域の金融機関も出資してくれた。さらに会津ソーラー市民ファンドを設けて、一般の人たちから資金を集めている。会津から日本のエネルギーの仕組みを変えたいと考える人たちから多く出資してもらっている」


 ――東日本大震災と福島第1原子力発電所事故が転機だったのか。


佐藤弥右衛門・会津電力社長
「震災が起きて、被災地では水があれば助かるだろうと、水を浜通りや中通りの取引先に運んだ。7代目(祖父)も関東大震災のときに水を一升瓶に入れて送った。酒屋には長年くみ上げてきた井戸水がある。7代目は孫の私に『心して生きろ』と言っていた。生きている間には戦争や天変地異、大恐慌があるぞと。先代はすべて経験していた」

「飯舘村とは村おこしの酒をつくるのに協力してきた縁があった。菅野典雄村長から依頼され『までい大使』にも任命されていた。までいとは『真心をこめて』といった意味だ。(被災地に)水を届けて帰ってくるとき、西へ向かう道路は避難する人々の車で大渋滞で、赤いテールランプがどこまでも長くつながって見えたのを覚えている。後から知ったのだが、あのころ原発から出た放射性物質が飯舘村の方に流れて雪で地面に落ちていた。ひどい話だ
「そのときは、会津もこれからたいへんだと思った。土壌が傷めば農業はできないからだ。幸いにも会津の放射性物質による汚染は極めて限定的だった」

「その後、飯舘村の『までいの会』や福島再生を話し合う『ふくしま会議』などで、民俗学者の赤坂憲雄さん(福島県立博物館館長)やクアルコムジャパンの山田純特別顧問らと話し合ううちに、会津はエネルギーの自立ができると改めて気がついた」

「会津には猪苗代湖があり阿賀野川、只見川がある。本来は会津の電気を賄って十分のはずだが、いつの間にか東京の電力会社に水利権をおさえられ、電気は東京にもっていかれる。東電はお金をばらまいて原発をつくったうえ、事故を起こしてもだれも責任をとらない。建設を認めた政府もほっかむりだ。原発がなくても自分たちで電気を生み出す資源も資力も会津にはある」



水力だけでも会津地域の電気を賄えるはずだ

 ――東京電力の水力発電所を買い取る考えもあるとか。

「猪苗代湖や阿賀野川の水系で、東電はいくつもの水力発電所を保有する。政府出資で存続する東京電力が今後、水利権などを売ると言い出す事態がありうると思っている。そのときに私たちが買いとれる企業規模と態勢をつくっておきたい」

「水力だけでも会津地域の電気を賄うことができるはずだ。エネルギーの自立を果たし安価な電力を地域に提供できれば、データセンターや電気自動車などの産業を持ってこれる。喜多方には昭和電工から続く素材産業の基盤があり、金属加工の本田金属(埼玉県川越市)が研究開発拠点を川越から喜多方へ移してくる予定だ。電気自動車を地域内で普及させ交通インフラを変えて、化石燃料を使わない地域にもできる。エネルギーで地域の再生ができると信じている」


取材を終えて

佐藤さんが社長を務める大和川酒造店は、寛政2年(1790年)創業という。どの地域でも故郷を誇りに思う気持ちはあるが、会津ではとりわけ強いように思える。佐藤さんのように200年続く造り酒屋の当主とあれば、なおさらだ。原発事故で自然環境を汚されたことに加え、郷土の水資源の恩恵が東京に持ち出され消費されてきた歴史を振り返り、東電や政府に対する強い異議申し立ての意思が会津電力を立ち上げた底流にある。

福島県の資料によれば、猪苗代湖や阿賀野川水系などにある東電の水力発電の容量は約35万キロワット、Jパワーや東北電力を合わせれば300万キロワットを超える。会津は「水力発電王国」と呼んでもおかしくない潜在力を備えている。

 地域自立のエネルギーづくりを目指す動きは全国各地にあり、5月には地域間の連絡を強め活動を広げる目的で「全国ご当地エネルギー協会」が発足した。佐藤さんは協会の代表幹事も務めている。


・ 日本が失うもの

2014-07-02 05:06:18 | 政治
戦争をしたがる自民党は、集団的自衛権の行使容認に踏み切りましたが、それに対して世論は反発しています。毎日新聞の記事を転載します。


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特集ワイド:集団的自衛権の行使容認で「日本が失うもの」
毎日新聞 2014年07月01日 東京夕刊


10年前の陸上自衛隊イラク派遣は復興支援が目的だったが、「歯止め」を失えば戦渦にまきこまれかねない=イラク南部サマワで2004年2月、岩下幸一郎撮影


他国の戦争に参加する大義名分−−集団的自衛権の行使などを認める1日の閣議決定で政府が手に入れるのは、まさにそれ、憲法9条の無力化だ。だとすれば、代わりに「日本が失うもの」とは何か。海外経験が豊富な識者とともに考えた。【吉井理記】

 70年かけて築いてきた平和的、非暴力イメージ

平和的、非暴力……。戦後日本が約70年かけて懸命に築いてきたイメージです。それが『あの戦争』で一部が壊れた。今度は全部が崩れてしまう。政治家は日本が失うものの大きさを本当に理解しているのでしょうか」。そううめくのは日本国際ボランティアセンター(JVC)顧問で日本映画大教授の熊岡路矢(みちや)さん(67)だ。アジアやアフリカ、中東などの紛争地で約30年間人道支援活動を続けてきた、日本のNGO(非政府組織)の草分け的存在だ。熊岡さんが「あの戦争」と言うのは2003年のイラク戦争だ。「大量破壊兵器が隠されている」との理由で米英が始めた戦争を日本も支持し、人道支援目的で自衛隊も派遣した。ところがイラク国内は一向に安定せず、これまでに17万人以上が死亡して混迷が続いている

そのイラクを熊岡さんは戦争を挟んで計3回訪れ、医薬品輸送などにあたった。「もともとイラク人は親日的だったのです。日本の建設会社が病院建設などをしていたから『オレも日本人と一緒に仕事したことがある』という人も多く、何より日本はイラク・中東で軍事行動をしたことがなく、好感を持たれていたんです。だから支援活動がすんなり受け入れられた、と感じました」

ところが、日本政府のイラク戦争支持や自衛隊派遣が現地新聞で報じられると空気が一変する。「気温で言えば30度から15度、10度くらいにすとん、と落ちる感じ。表立って攻撃されたりしませんが、彼らから『日本は好きだったのにどうして?』と問われました。これには私たちも、強いショックを受けたのですが……」

イラクではフセイン政権が崩壊した03年4月以降、国連ビルの爆破や日本人外交官の殺害事件などが相次いだ。JVCも日本人スタッフをイラクから引き揚げざるを得ない状況に陥った。「日本のNGOが世界各地で活動できるのは現地住民から信頼を得られたから。その信頼の根源は日本の憲法9条による平和主義や、私たちが武器を持たず、戦争当事国の軍や国益と無関係に行動するところにある。NGOの活動が住民の評価を受け、日本の平和に貢献した、との自負もあるんです」

安倍晋三首相は記者会見などで「NGOメンバーが武装集団に襲われても自衛隊は助けることができない」と強調し、国連平和維持活動(PKO)で自衛隊が幅広く動けるよう、武器使用基準の緩和を訴えた。集団的自衛権の行使容認と並ぶ今回の閣議決定のポイントだが、熊岡さんは「自衛隊に助けてほしいと思ったことは一度もありません。紛争地の現実とかけ離れています」と一蹴した。カンボジアでもイラクでも、安全の要は住民の情報や彼らの持つ人脈であり、軍隊ではない。仮に自衛隊と一緒に行動すれば目立つし、戦争当事国との関係を疑われて逆に襲われる危険が高まる−−と。自衛隊員にとっても危険この上ないのだ。

「僕は自衛隊の若者が殺されてほしくないし、人を殺してほしくない。安倍首相は『積極的平和主義』と言っていますが、世界の大国のように武器を輸出せず、他国の戦争にくみすることも禁じ、非軍事で国際協力活動をしてきたこれまでの日本こそが本当の積極的平和主義であり、欧米流に言えば非常に『クール』、日本にしかできないことですよ。なぜ、みすみすこんなかっこいいニッポンを捨ててしまうのかな」


 ◇「まともな外交・安保政策」という国家運営の根本

海外からの信頼や評価だけではない。「集団的自衛権行使は矛盾だらけ。日本は『まともな外交・安保政策』という国家運営の根本を失った」と語るのは、駐レバノン大使を務めた元外務官僚、天木直人さん(66)だ。大使当時、03年のイラク戦争が国際法に違反するとの意見を上層部に送った後、依願退職した。

外交の根幹には、外国との信頼関係が不可欠だ。「特に集団的自衛権で想定される他国とは米国です。安倍首相は行使容認への世論の反発が強いと見るや、とにかく閣議決定に持ち込みたいから『限定的』とか『日本人を守るため』と言っているが、米国や他国からは理解されません。集団的自衛権とは、イラク戦争に参戦した英国のように『同盟国としてともに戦う』ことを意味するのであって、『限定』などという概念が入る余地はありません。まして『事例研究』などと言っているのは日本だけ。米国から見たら『日本は口だけだ』と、逆に信頼を失うのではないか」。天木さんは疑問を投げかける。

加えて「安倍首相が集団的自衛権を使いたいのは、米国に従属せず、対等関係になりたいという思いがある。ならば在日米軍撤退や日米安保改正論議は避けて通れないはずです。自民党の政策綱領にも『(改憲して)自衛軍備を整え、駐留外国軍の撤退に備える』と明記していますから。そこをあいまいにしたツケはいつか回ってくる」。懸念の一つが米国以外の他国、特に米国と関係悪化している中東諸国からの「視線」だ。

「対等関係どころか、いよいよ対米従属を深めたとしか受け取られません。日本のエネルギーを支える湾岸産油国との関係など経済面でも悪影響が及ぶかもしれません」

 それでも集団的自衛権の行使容認で「日本はより平和になる」のならまだしものことだが……。

熊岡さんは「今のイラクを見れば答えは見えてきます。米軍がフセイン政権を倒した後、今も内戦状態が続いています。アフガニスタンでもアフリカでも欧州でも、テロの危険性は減るどころかどんどん高まっている。武力で平和は生みだせないんです」。天木さんも続ける。「日本では憲法9条の平和主義は空想的だと言われますが、世界は今、武力で物事は解決しないことに気付き始めた。米国ですらアフガンやイラク戦争の轍(てつ)はもう踏まない。そんな時代なのに、日本は逆行しています。中国が脅威だというなら、そうでない外交関係を築けばいい。これからの時代、9条の価値観がスタンダードになるかもしれないのに、日本はそれを捨ててしまった

 国際的な信頼だけではない。9条の持つ先進性をも日本は失うということか。