問題集を2往復くらいすると、なんとなく自分の苦手分野がわかってくる。逆に、過去問の選択肢から正答を選ぶだけなら間違えないという分野もわかってくる。
なので、3往復目あたりからは、付箋を貼った分野を中心に、ある程度飛ばしながら解いていく。
ここでどうしても避けられない問題は、同じ過去問を繰り返すことで、各問の正答自体をすっかり覚えてしまうことだ。これは、先ほどの小手先テクニックが行きつくまで行きついた姿であり、過去問では満点を取れるが応用に弱いという弱点がある。
これをどうするか。
とは言え、そんな悩みも手元の問題集を完璧に手中に収めてから考えればよいことで、まずは過去問のマスターに集中する。
そんな折、「衛生管理者受験講習会」なるものに参加したのが、だいたい試験日の3週間前。これは、わが所属団体の斡旋により受講するもので、専門の講師陣が三日間みっちり講義をしてくれるというものだ。
この頃には、自分の問題集も付箋だらけとなり、掲載されている過去問に限れば8割がた正答できるレベルまで習得が進んでいた。つまり、それなりの自信を感じ始めていた。
さてその講習会だが、講師の皆さんは一部の人を除き非常にわかりやすい説明で、知識の補充にとても役に立った。
たとえば、作業環境測定のA測定B測定や第一評価第二評価なんて、どうにもイメージできなかったのだが、講師の説明と講師編集のテキストを見てものすごく納得できた。これもたぶん最初のテキストに書いてあることなんだろうけど、自力では押さえどころがわからない場合があるんだよな。このあたりが独学の限界。
この講習会では、自分の周りの受講生の様子もじっくり観察していた。自分が見た範囲だと、テキストや問題集がほぼ手付かずの状態である人も少なくない。そして、自分のようにベタベタ付箋を貼りまくっていかにも勉強してますというような人はいなかった。
私の悪い癖でもあるのだが、このように周囲と比べて自分の気持ちの拠り所とするみたいな嫌らしさはここでも遺憾なく発揮される。
自分ほど勉強している人なんていないじゃないか。まして、自分はそれなりのレベルの数々の受験をクリアしてきたのだから、まさか落ちる訳がない。
…全くもって意味不明な自信というか、まあバカである。そして、このバカさ加減がのちにしっぺ返しに近い形で襲い掛かってくるのだが。
濃密な3日間の受講を終え、その後の勉強はそこで配布された講師編集のテキストも並行して使用するようになった。
ここで、受験オタクとしての信条の一つに触れるのだが、基本、メインで使用する教材は少なければ少ないほど良い、ということだ。
たとえば大学受験なら、公式の教科書から始まって、授業のノート、学校指定の参考書、問題集、そして自分が選んで使い始めた参考書、問題集の数々。加えて当時は進研ゼミにも入っていたから、その教材。
それらを全部、受験の最終局面まで同じように使う訳にはいかない。例えば、試験日の前夜に宿舎でおさらいするなら、それは極力少ない種類の教材であるべきなのだ。
なので、勉強の過程で、自分がメインと決めた教材に大事な情報をなるべく集約していく。具体的には、メモとして書き込んだり付箋を貼っていく。
今回の勉強で言えば、メインの位置づけは最初に配付された問題集と決めているので、そこに講習会で得た情報を書き込んでいく。
もちろん、スペースや効率性の観点で、講師の配布したテキスト(A4判の紙束)をそのまま使うこともある。そのあたりは柔軟に。
こうして勉強をさらに進めてきたのだが、次第に「飽き」を感じてしまったのは自分でも初めての経験だった。
何しろ同じ過去問を繰り返し、苦手分野なら10回近く解くので、流石に問題文をパッと見ただけで正答がわかってしまう。先ほど触れた、小手先テクニックの弱点だ。
目先を変える意味で、そして退屈と手持無沙汰をしのぐつもりで、私は市販の問題集に手を出した。
ここまでの勉強は全て、講習会も含め、職場が準備してくれた言わば無償の資材だったので、いよいよ自分の懐を痛める形で勉強するという局面に至った訳だ。
最初のほうで言ったように、この試験に受かっても個人的な見返りは全くと言っていいほど無いので、貴重な自分のプライベート時間を費やすことに飽き足らずお金まで払うとは、もはや自分でも半分趣味というか意地になっているのかな、と思う。
ここで選んだのは、過去数年間の公表問題とその解説が載っているという、非常にシンプルなもの。1,400円なり。
先ほどの、教材は極力少ないほうが良い理論のもと、あえて参考書類には手を出さなかった。実戦形式の公表問題を解くことで、時間配分も含め肩慣らしをするつもりだった。
最後の10日間、自宅ではこの市販問題集を解き、自分の弱点を補強することに費やした。そして、通勤や職場では、例のメイン問題集の要点を反復で押さえ続けた。
市販問題集の公表問題を実際解いてみると、合格ラインは余裕でクリアしていることがわかる。
ここでいう合格ラインとは、衛生管理者試験の場合、分野ごとに4割、そして全体として6割の正答率と決められており、ある意味わかりやすいものだ。
しかし、一方で不安要素もあり、なんとなく余裕な気分でいるものの、実はこの公表問題とメイン問題集に載っている過去問は(当然ながら)被っているものも多く、言わば見慣れた問題が多い。そのため、ほんとに応用が利くのか?という懸念は結局ついて回ることになる。
ここまでくると、腹の括りようなのかな、と私は判断した。
つまり、この試験は満点を取ることが目的ではなく、さらに言えば合格定員が決まっているものでもない。先ほどの合格ラインさえ満たしていれば良い訳で、仮に過去問にない新機軸の問題が数問出題されたとしても、全体としてラインをクリアしていれば問題ないという理屈だ。
試験を終えた今振り返っても、基本的にこの考え方で間違いはないと思う。衛生管理者のスペシャリストを目指すならともかく、単に資格を得るためだけなら、出るかもしれない過去に未登場の数問のためにテキストを隅から隅まで膨大な労力をかけて浚うことは、効率的ではない。
そして、根拠なき自信を身にまとい、試験当日を迎えたのであった。
続く
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