36年ぶりに会った人

2024年06月24日 08時14分00秒 | 巻二 起居注
先ごろ、仕事の関係で公共施設内のスペースを借用する必要が生じたため、区内の数カ所を下見することになった。

そのうちの1か所目のとある施設。
ここ10年以内に出来た新しい建物で、実は私も何度かその前を通ったこともある。
それだけ、一定の人通りが必然的に発生する立地なのだ。


とても暑いとある日。その施設に伺ったところ担当の女性スタッフが笑顔で迎えてくれた。

明るく、愛想が良い。
年の頃は俺よりやや下くらいか?

こちら側が見学をお願いする立場なのに、非常に歓迎してくれている印象。
あちら側にはメリットがない話のはず。むしろ迷惑がられてもおかしくないのに。

一通り施設内を案内して貰う。
正直、その施設の展示内容や事業そのものを知ることは今回の訪問の目的ではないし、有料駐車場の時間のリミットの都合であまりのんびりもしていられなかったのだが、その女性はとても丁寧に、そしてやはり明るく饒舌に説明してくれた。

もちろんこちらも大人なので、先を急かすこともなく彼女の話に耳を傾ける。

館内案内のあとはいよいよ本題である借用候補の部屋について検討。
その女性に必要な情報を問い、答えてもらうこと20分くらいだろうか。

一通り確認すべきことを確認できたので我々一行はその場を去ろうとする。

そこで改めて、名刺を交換する流れに。

彼女は手元に名刺を持っていなかったようで、いったん事務室に戻り小走りで名刺を持ってきた。


私「◯◯の◯◯と言います」
女性「◯◯です。」

みたいな自らの名乗りとともに名刺を交換。

と、その刹那、時間が急にスロー再生になったのだ。


彼女が私の渡した名刺をじっと見つめて「◯◯◯◯◯◯さん、、、」と私のフルネームをゆっくり確かめるように口にする。

それとほぼ同時に私は、彼女から頂いた名刺に書いてあるその名前を見て、一瞬のうちに記憶の大波に飲み込まれる心持ちとなった。

そこに書かれていた名前には明らかに見覚えがある。

そして彼女の顔を見上げると、彼女も私の顔を見つめている。

私「あ、、◯◯◯(出身自治体名)の、、」
二人「あーーーーーーー」



こんなこともあるんだな。

彼女は高校の同級生だった。
彼女がその場で言った通り、確かに同じクラスになったこともある。
記憶の通りなら少なくとも1年と3年の2回。

それどころか、3年生のある時期、隣の席だったのだ。


あああ、

そう言われてみれば面影がある。

お互い様の話だが、年相応に歳を重ねて顔立ちも変わり、全く思い至らなかった。

あの頃の彼女の印象は、比較的地味でおとなしい人。
成績は中の上くらいか。
所属の部活は知らない。
今の時代こんな事言うとルッキズムの誹りを逃れることが出来ないが、端正な顔立ちとボブカットで割合好意的に私は思っていた人だった。

強烈に覚えているエピソードは、彼女が付箋を非常に多用していたこと。
昭和末期の当時、文房具として付箋を使っている生徒はほとんどおらず、なんなら私は彼女の密かな影響で付箋を使うようになったとも言えなくもないのだ。


とにかくもう、驚いたのは。
彼女の振る舞いが、高校時代のそれとは大きく違っていたことだ。
非常に明るく饒舌。言うなれば営業力なら満点と言ってもよいだろう。

こんなにも人は変わるものなのか。
それとも昔から本質はこんな感じだったのか。
でもそうは見えなかったよなあ。あんまりお喋りするイメージがなかった。

まあそれは私自身もそんな感じの人間だったのだが。


その後調べてみると、彼女はイベントのパネリストみたいなこともやっているらしく、嫉妬込みで凄いな、と思う。

それに比べて卯建の上がらぬ自分よ、、みたいな心境はお馴染みの構図だ。
ほんと他人と自分を比べて嫉妬するクセは止めたほうが良いのに。



ところでこれ、訪問の当初に名刺交換していたらどうなっていたんだろう。

もっと話が弾んだろうか?
いや、少なくとも私にとっては非常にやりにくかったろうな。

私の高校時代は、ほんと抹消したい黒歴史なのだ。

勿論卒業以来同窓会のようなものに一回も出たことがない。
当時の同級生とは、取り敢えず同じ大学に進んだ数人を除き、一切会ったことがない。
だからこその今回の久しぶりの邂逅だったのだ。


甘酸っぱいというか、気恥ずかしいというか。
動揺を隠せずにその施設をあとにした。

その後の顛末としては、結果的に諸条件が合わずあの施設を借用することはなくなった。
つまり、少なくともこの件で彼女と再び会うことはない。

ほっとするような、少しだけ残念なような。そんなかんじ。


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