季節はずれのインテルメッツォ(続)

音楽、文学、絵画、スポーツ、シェパード等々についての雑記帖。

静けさと巨大さ

2016年07月07日 | 音楽
Youtubeを適当に検索していると思いもかけない映像に出会うことがある。

シュヴァイツァーがアフリカでバッハを練習しているひとコマだ。こんなものがあるとは知らなかった。

僕は若い時分、同じ年頃の青少年と同様に、よく分からぬイライラに襲われた生活を送っていた。そんな時の昼間はハイドンのカルテット、夜はシュヴァイツァーのオルガンを聴いて気持ちをなだめることが多かった。

シュヴァイツァーの演奏は落ち着きに満ち、静かで、それでいて巨大である。昔シャーマーからバッハのオルガン曲の校訂版が出ていた。買おうにも経済が許さず、後回しになっているうちに市場から姿を消してしまった。今となってはそれをつくづく残念に思う。

彼が亡くなった時、新聞紙上でグールドが「このような人が亡くなった今、人々の尊敬と愛情を一身に受けるのはメニューイン以外にない」といったことを書いていて、当時の僕にはグールドの意外な一面を見たような、怪訝な感情を持ったことを覚えている。

昨今のオルガン演奏は、むしろ豊富なパイプの組み合わせに翻弄されたようで、ざわざわと落ち着かずひとつも心に響くものがない。

練習するシュヴァイツァーの樫の木のような腕を見てもらいたい。このような素朴な力強さが彼の演奏の性質なのである。イラつく小僧の気持ちをなだめるにはこの演奏が必要だった。

音源もひとつ紹介しておこうか。


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