東埼玉病院 リハビリテーション科ブログ

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介入初期から遊脚能力を重視して伸ばすべきか? 脳卒中者の歩行の質向上のために【専門職向け】

2017年01月15日 | 回復期リハビリテーション
結論から言うと、
介入初期の段階で、立脚能力がある程度保たれていて、遊脚能力が不十分であれば、
介入当初から積極的に遊脚能力を伸ばす基礎練習から始めるべきだと思います。

順を追って考えてみます。

立脚能力は立位歩行の基礎としてとても重要です。
重要ですが、
立脚期に働く筋は、適切なアライメントを誘導したうえで荷重刺激を加えていけば(+条件などを工夫すれば)、
応答性に収縮を促通することができると思います。
また、下肢装具も状態に合わせて種々の機能のものがあるので、外部デバイスにより立脚能力は代償が利きやすいというのも強みだと思います。
つまり、立脚能力は介入しやすく、また介入に対する応答が得られやすいと考えてられます。

それに比べて問題となるのは、遊脚能力でしょうか?
遊脚能力は、下肢を重力に抗して持ち上げる筋群の働きが寄与する所が大きいと思われます。
具体的には、股関節屈曲(腸腰筋など)、膝関節屈曲(ハムストリングスなど)、足関節背屈(前脛骨筋、腓骨筋群など)の動きを生成する筋活動になります。
もちろん、その前提として立脚期(片脚立位)の安定条件が必要なことは言うまでもないことですが。

臨床場面でよく遭遇することの一つに、このような問題があると思っています。
つまり、
① 立位支持や片脚支持が満足にできない状態だから立脚能力向上にしぼって介入を繰り返す
② 立脚能力が向上し安定してくる
③ 遊脚能力の向上を目的に介入をする
④ 遊脚能力があまり伸びないまま代償を利用した歩行にて患者さんが退院する
という流れです。
まずは、立脚支持を高めよう。という考えになるのは最もだとは思いますが、本当にそれでよいのでしょうか?
なぜもっと早期から遊脚能力を向上させるアプローチを始めることは行われない傾向があるのでしょうか?

下肢は伸展運動が屈曲運動よりも優位にコントロール・随意運動が可能です。
これは脳卒中による不全麻痺でもそのまま当てはまります(例外はありますが)。

また、随意性の回復には発症早期からの積極的な運動練習が必要です。
一般的に、随意性の変動がなくなってから介入を始めても効果は乏しくなります。

ということは、遊脚能力を伸ばしたいのであれば、それこそ早期から始める必然性があるのではないでしょうか?
立脚能力が十分安定するのを待っていたら、随意性回復のゴールデンタイムを逃してしまいます。
立脚能力が安定することで(初めて)適切な遊脚能力を引き出せるとは思いますが、
遊脚能力の基礎機能(特に随意性)を事前に高めておくことは意義があるかもしれません。
各関節運動や基礎的な遊脚運動だけでも立脚能力向上と並行して進める視点が重要だと思います。

ということで、繰り返しますが、
介入初期の段階から、立脚能力がある程度保たれていて、遊脚能力が不十分であれば、
介入当初から積極的に遊脚能力を伸ばす基礎練習から始めるべきだと思います。
M1(PT)

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