残念ながらガイドのデイブが引退したことで現在は行っていないカナダオフロードファンライドでの出来事。取り組みはじめて3年目位のことなのでおそらく1997年頃。なんとあれから20年も経ったのかと今更ながら驚きます。
ちょうど、バイクの入れ替えが完了しようとしていた頃で、キックスターターのみのDR350SからセルフスターターのついたDR350Sへ移行していたのです。ただしまだ完全移行が完了しておらず、私を含めたガイドのバイクはキックスターターのみの古い車両です。
時は9月。前年にデイブと試走して取り入れたウエストクートニー地方のコースで比較的舗装路も多いのですがその分、オフロードの難易度が非常に高くて人間にとってもバイクにとっても過酷なツアーです。経験のあるライダーでも何人もが峠の登りで転倒したり、廃道の丸太越えで苦戦したり、そんな毎日。おまけに天候も少しずつ悪くなりはじめ3日目に宿泊したスロカーン湖畔のティピキャンプで雨が降り始めました。
翌朝になっても雨は止まずスロカーン湖畔でバイクを預かってくれた納屋から出発するときにはレインウェアを着用しました。カナダの9月の雨は日本の11月の雨のように冷たく、今日の憂鬱な一日を予想させます。
スタートしてまず給油のためにガソリンスタンドへ向かいます。添乗員の私は最後尾を行くわけですが走りはじめてすぐに異変に気づきました。エンジンの回転がスロットルに適切についてきません。そのうちストールして止まってしまいました。最後尾の私は置き去りです。
ちょうどガス欠のような症状だったので燃料コックをリザーブに切り替えてエンジンを始動してみたらかかりました。ところが走り始めてみるとやっぱり不調。それでも息を吹き返したようでとにかくガソリンスタンドに到着。
遅れてきた私にデイブは”なんか変だね。自分のバイクもなんか変なんだけど、そっちは直ったか?”
私は”わからないけれど、とりあえず走れるようにはなった”と。
ガソリンを満タンにして再スタート。
ところが私のバイクはまた不調。ストールして止まってしまいました。燃料に雨水が混入したのかと考えた私はレザーマンツールを取り出してキャブレターのガソリンを排出してみたのです。これが功を奏して私のバイクは回復。皆が向かった方へ追いかけます。
ハイウェイを少し走ったところで先行のお客様が分岐に止まって私に道を教えてくれています。その方と2台でダートに入って少し走った所で皆が待ってくれていました。
全員揃った所で再スタートしようとしたところ、今度はデイブのバイクとバックアップのダグのバイクが始動不能。それから小一時間、交代でキックを繰り返すのですがどうしてもかかろうとしません。
デイブは私のバイクが回復した理由を知りたがったので、私はキャブレターのガソリンを一度排出することを提案。やってみたのですが、デイブとダグのバイクのエンジンはかかりませんでした。
エアクリーナーが水を吸ったかと考えた私たちはエアクリーナーエレメントを取り外して始動を試みますがやはり始動しません。スパークプラグの火花をチェックすると、見た目では火花は飛んでいます。空気、燃料、火花、どれもオッケーならエンジンがかならないはずはないのですが....。
いつしか雨はみぞれ混じりとなり、キックで体が温まっているガイド3人を除いて皆が震え始めました。このままだと皆で凍えてしまうのでデイブに不調の2台を切り捨てる事を提案。始動不能の2台を置いて、回復した私のバイクでデイブが皆をガイド。バックアップのダグと私で始動不能の2台を受け持って、時間をかけて回復させてハイウェイで迂回してネルソンのホテルで合流する事にしたのです。
デイブは別れ際に”メインスイッチのコネクターベースがリークしてないかチェックしてみて。以前、それでかからなくなったことがある”と言い残して、皆を連れて去っていきました。
ダートへ入ったハイウェイとの分岐に、林業作業のために使うのか、よくイベント会場などにあるようなテントが立てられていました。幸運な事に今日は使われていませんので使わせてもらいます。エンジンがかからなくなった地点からはずっと下りなので惰性でバイクをハイウェイまで降ろしてテントの下に作業場所を確保したのです。
私のレザーマンツールとダグがデイブから預かった工具を使ってヘッドライトを取り外し、メインスイッチのコネクターベースの配線接点をペーパータオルで拭いてエンジンをかけたらあっけなくエンジンはかかりました。次にもう1台。これもあっけなく始動。私とダグは、”皆はこの悪天候の中を山越えだけど、我々は彼らが着く頃にはネルソンでシャワーを浴びてビールを呑んでる感じだな”などと笑いあっていたものです。
ヘッドライト周りを組み立て直して装備を整え、2台でハイウェイを走り始めました。実は我々2人共、このハイウェイルートは知りません。このまま走っていけばネルソンに着く事と、ネルソンのホテルの電話番号だけが頼りですが、90年代の話。今のように携帯電話で連絡を取り合う事はできません。デイブと別れ別れになった今、本隊と連絡を取るには民家も見当たらないバックカントリーで公衆電話を探すという離れ業が必要。なおかつデイブがホテルに着くまでは連絡はとれません。
さて、ハイウェイを気持ちよく走り始めた私、バックミラーをチラと見ると後続しているはずのダグの姿がありません。引き返してみると道端でキックを繰り返すダグの姿。
肩で息をしているダグに代わって私がキックしてみるとなんとかエンジンは始動。ところが明らかに調子が悪いのです。二人共、もう一度戻って分解する気にはなれず、そのまま行ってしまう事に。スロットルから手を離せないので今度は私がこの不調な車両に乗って騙し騙し走りますが、2kmほど進んだらエンジンはストールして止まってしまいました。
キックすればかかるのですが少し走ると止まってしまう。まるで尺取り虫のように少し走ってはキックして..そんな事を繰り返しているうちに日も暮れ始め気温はどんどん低下。街灯などないバックカントリーのハイウェイで少し途方にくれそうになりながらも、とにかく少しずつでもネルソンへ向かうしかないのでありました。
====続く=====
P.S.
この時、牽引用のロープを持っていないことをとても後悔した私はその後はロープを必ず持つようになり、スーパーカブで旅するタイ北部でも洗濯ロープとして活躍しているのでした。
====
□ 第4回旅行好きの夕べ参加者募集中□
美味しい食事を楽しみながら他の旅人との交流と旅の情報交換をしませんか。次の旅に思いを馳せようではありませんか。
日時 6月16日(金)午後19時~21時30分
場所 東京 四谷 サロンガイヤール
会費 3,500円
詳しくは下記ページから。
http://www.bekkoame.ne.jp/i/eandg/event/yube.html
ちょうど、バイクの入れ替えが完了しようとしていた頃で、キックスターターのみのDR350SからセルフスターターのついたDR350Sへ移行していたのです。ただしまだ完全移行が完了しておらず、私を含めたガイドのバイクはキックスターターのみの古い車両です。
時は9月。前年にデイブと試走して取り入れたウエストクートニー地方のコースで比較的舗装路も多いのですがその分、オフロードの難易度が非常に高くて人間にとってもバイクにとっても過酷なツアーです。経験のあるライダーでも何人もが峠の登りで転倒したり、廃道の丸太越えで苦戦したり、そんな毎日。おまけに天候も少しずつ悪くなりはじめ3日目に宿泊したスロカーン湖畔のティピキャンプで雨が降り始めました。
翌朝になっても雨は止まずスロカーン湖畔でバイクを預かってくれた納屋から出発するときにはレインウェアを着用しました。カナダの9月の雨は日本の11月の雨のように冷たく、今日の憂鬱な一日を予想させます。
スタートしてまず給油のためにガソリンスタンドへ向かいます。添乗員の私は最後尾を行くわけですが走りはじめてすぐに異変に気づきました。エンジンの回転がスロットルに適切についてきません。そのうちストールして止まってしまいました。最後尾の私は置き去りです。
ちょうどガス欠のような症状だったので燃料コックをリザーブに切り替えてエンジンを始動してみたらかかりました。ところが走り始めてみるとやっぱり不調。それでも息を吹き返したようでとにかくガソリンスタンドに到着。
遅れてきた私にデイブは”なんか変だね。自分のバイクもなんか変なんだけど、そっちは直ったか?”
私は”わからないけれど、とりあえず走れるようにはなった”と。
ガソリンを満タンにして再スタート。
ところが私のバイクはまた不調。ストールして止まってしまいました。燃料に雨水が混入したのかと考えた私はレザーマンツールを取り出してキャブレターのガソリンを排出してみたのです。これが功を奏して私のバイクは回復。皆が向かった方へ追いかけます。
ハイウェイを少し走ったところで先行のお客様が分岐に止まって私に道を教えてくれています。その方と2台でダートに入って少し走った所で皆が待ってくれていました。
全員揃った所で再スタートしようとしたところ、今度はデイブのバイクとバックアップのダグのバイクが始動不能。それから小一時間、交代でキックを繰り返すのですがどうしてもかかろうとしません。
デイブは私のバイクが回復した理由を知りたがったので、私はキャブレターのガソリンを一度排出することを提案。やってみたのですが、デイブとダグのバイクのエンジンはかかりませんでした。
エアクリーナーが水を吸ったかと考えた私たちはエアクリーナーエレメントを取り外して始動を試みますがやはり始動しません。スパークプラグの火花をチェックすると、見た目では火花は飛んでいます。空気、燃料、火花、どれもオッケーならエンジンがかならないはずはないのですが....。
いつしか雨はみぞれ混じりとなり、キックで体が温まっているガイド3人を除いて皆が震え始めました。このままだと皆で凍えてしまうのでデイブに不調の2台を切り捨てる事を提案。始動不能の2台を置いて、回復した私のバイクでデイブが皆をガイド。バックアップのダグと私で始動不能の2台を受け持って、時間をかけて回復させてハイウェイで迂回してネルソンのホテルで合流する事にしたのです。
デイブは別れ際に”メインスイッチのコネクターベースがリークしてないかチェックしてみて。以前、それでかからなくなったことがある”と言い残して、皆を連れて去っていきました。
ダートへ入ったハイウェイとの分岐に、林業作業のために使うのか、よくイベント会場などにあるようなテントが立てられていました。幸運な事に今日は使われていませんので使わせてもらいます。エンジンがかからなくなった地点からはずっと下りなので惰性でバイクをハイウェイまで降ろしてテントの下に作業場所を確保したのです。
私のレザーマンツールとダグがデイブから預かった工具を使ってヘッドライトを取り外し、メインスイッチのコネクターベースの配線接点をペーパータオルで拭いてエンジンをかけたらあっけなくエンジンはかかりました。次にもう1台。これもあっけなく始動。私とダグは、”皆はこの悪天候の中を山越えだけど、我々は彼らが着く頃にはネルソンでシャワーを浴びてビールを呑んでる感じだな”などと笑いあっていたものです。
ヘッドライト周りを組み立て直して装備を整え、2台でハイウェイを走り始めました。実は我々2人共、このハイウェイルートは知りません。このまま走っていけばネルソンに着く事と、ネルソンのホテルの電話番号だけが頼りですが、90年代の話。今のように携帯電話で連絡を取り合う事はできません。デイブと別れ別れになった今、本隊と連絡を取るには民家も見当たらないバックカントリーで公衆電話を探すという離れ業が必要。なおかつデイブがホテルに着くまでは連絡はとれません。
さて、ハイウェイを気持ちよく走り始めた私、バックミラーをチラと見ると後続しているはずのダグの姿がありません。引き返してみると道端でキックを繰り返すダグの姿。
肩で息をしているダグに代わって私がキックしてみるとなんとかエンジンは始動。ところが明らかに調子が悪いのです。二人共、もう一度戻って分解する気にはなれず、そのまま行ってしまう事に。スロットルから手を離せないので今度は私がこの不調な車両に乗って騙し騙し走りますが、2kmほど進んだらエンジンはストールして止まってしまいました。
キックすればかかるのですが少し走ると止まってしまう。まるで尺取り虫のように少し走ってはキックして..そんな事を繰り返しているうちに日も暮れ始め気温はどんどん低下。街灯などないバックカントリーのハイウェイで少し途方にくれそうになりながらも、とにかく少しずつでもネルソンへ向かうしかないのでありました。
====続く=====
P.S.
この時、牽引用のロープを持っていないことをとても後悔した私はその後はロープを必ず持つようになり、スーパーカブで旅するタイ北部でも洗濯ロープとして活躍しているのでした。
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□ 第4回旅行好きの夕べ参加者募集中□
美味しい食事を楽しみながら他の旅人との交流と旅の情報交換をしませんか。次の旅に思いを馳せようではありませんか。
日時 6月16日(金)午後19時~21時30分
場所 東京 四谷 サロンガイヤール
会費 3,500円
詳しくは下記ページから。
http://www.bekkoame.ne.jp/i/eandg/event/yube.html
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