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ニートクリスマス スキック

2017-11-14 02:43:24 | ニートクリスマス前編

前回
④ニートクリスマス燃える欲望

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 クドウは監獄のお姫さまで出てくるような俺の家服に着替え、俺の家で24時間過ごすことになった。海外ではトゥエンティフォーだ。



 俺の家が監獄=プリズンなら、男性目線の少年漫画。プリズンスクールのような万人ウケするような男性の心をえぐる方向でもいいのだろうけど。



 プリズンプリンセス。少女漫画のような、女性の心をえぐってしまうとなれば好き嫌いがあっても不思議ではない。だってクドウは女なのだから、女は好き嫌いを主張してもいいはずだ。
男はピーマンが嫌いでも、大人になるまでに食べられるように克服しようとする。女は嫌いなものは大人になっても「嫌い」と主張し、それがある意味女性的なスタイル。

「あたしピーマン嫌い」

そこにケチをつけた男は嫌われる。食物連鎖どころか嫌われ連鎖になる。

 少女漫画のプリンセスの前では「好き嫌い」がハッキリと浮かび上がる万人ウケしない方向が正解なんだろうか?

「そうよ男子」「クドウを女として扱うべきよ」

(なんか耳鳴りがした)



 俺の家ではあるが、俺の家でも主役はクドウなのだ。クドウが俺を「嫌い」と言わずに俺の家で24時間過ごすことになった。



 俺とクドウは体育で知り合った、いわいるアスリートな関係。ふたりとも恋人のような恋愛表現の言葉を交わしたことはまだなかった。



それが「休もうか」のあとに



まるで解放された時間を過ごすように、ふたりは大人の気分になっていた。

 これからが、俺はクドウに恋愛関係である言葉を交わさないといけない。
その先にある世界と向かい合わなければならない。トゥエンティフォーラブ。



 クドウが俺の家服を着て過ごした翌日の夕方に俺のおふくろが俺の家に訪ねてきた。
俺の両親は、個人経営者。おふくろと親父で合資的経営で生活をしている。俺の食事も用意し、俺のおなかが空いた頃に、総菜弁当などを持ってくる。おふくろは専業主婦。家事が苦手でおふくろの居場所になるために親父が経営者になった。親父は夜のバイトをし、おふくろと事業資金の穴埋めをしていた。
俺も就職中。俺の給料の一部をおふくろの事業資金に補っていたが、今は俺は無職中でおふくろとの仲は最悪だった。

 高校を卒業し、就職した頃から俺はおふくろに家事や会社で食べる弁当の事で文句を言うと決まって

「嫁をもらえだっち」

嫁をもらえばすむことだと、俺の勤めてた会社にまでカップ麺を平気で持ってくるようなおふくろだ。
遊行費と私服代を省いたあとの給料は家に収めていた。給料日前の何日かは親をあてにお金を貰っていて、そのため俺はおふくろに頭が上がらなかった。

 最初に勤めた2社は俺がだんだん会社に居られなくなって転職したのだった。
俺の給料日になると、おふくろはカレーライスを作って俺の帰りを待っていて、俺はそれがストレスだった。カレーライスを食べながら、俺は給料の一部をおふくろに世話をしてもらった分より足りないと文句を言われ。

「先月これだけ出して、タダで食べさせてあげたのに」
「今月これだけしか持ってこないだっちか?」

「うるせー こんな金いらねーくそ!!」

「食べ物を粗末にしてだっち 感謝しないからだっち!」

俺も仕事の疲れもありイライラし、給料で貰った札束と食べかけのカレーライスを部屋中にぶちまけ大暴れするので俺の給料日の日はいつも修羅場となり近所迷惑だった。

 興奮した俺はいつも、ぶちまけた札束を拾うおふくろの姿を見ては、哀れに思い後悔をしていた。
俺は中卒野郎におふくろの話しをしていたが、中卒野郎もさすがにこう続くとなんと言っていいのか?わからない顔をしていた。そして3度目のニートになった俺の両親は一緒に住むのが心苦しく感じ、両親は別な場所で寝泊りをしていた。

 クドウは俺のおふくろが訪ねて来た時、緊張した様子だった。
食事を用意している最中だったがおふくろに挨拶した後、キッチンを向いたまま目を合わさなかった。

「お茶美味しいだっちな」

「職場でよく お茶をお出ししていたので」

「ほお」

俺もおふくろの機嫌をとるために履歴書を書いてたことを話した。おふくろもさすがにクドウの前では、俺がカレーライスの日に札束を叩きつけ大暴れしたことは話さなかった。

 クドウが俺に食事を作り、久しぶりにおふくろと手料理を食べた。大学で独り暮らしの経験もあり、料理もちゃんと出来ていた。親父にも食べさせたかったが、その日の親父は夜勤工場でバイト中だった。



翌日の午前。今度は親父が訪ねてきた。夜勤明けで疲れているのに、わざわざクドウの顔を見に来たようだ。

 クドウはおふくろと同様、深々と親父にもお辞儀をした。俺の親父は昔、クドウの両親とPTAの役員を一緒にやっていたこともあって、クドウも親父とは顔見知りだった。

「ご両親お元気か?」

「はい」

俺の親父は軽い会釈をし、戻って行ったが、クドウは俺の親父のこともよく覚えていた。

「アララギのお父さん人当りいいし、優しいもんね」

「うん 家でも真面目であんな調子だ」





 クドウが俺の家に来てから、まず、関心をもったのは本棚に置いてあった実務本だ。俺が買って置いてたギャグ漫画には一切触れず、親父が持っていた古い実務本を手にして読んでいたのだ。クドウは大学を出たあと実業家になりたかったんだろうか?前に勤務してた仕事のことを熱心に俺によく話した。

 俺はその側に置いてあったスキー入門について話をした。

「俺、スキーのインストラクターにでもなろうと思ってさ」
「前の会社に居た時、よく練習で滑ってたんだよ」
「ほぼ、ひとりで暇があれば山に行って滑ってて」
「いずれ級をとって資格をとって、冬はスキー場で働こうと思っててさ」

「ふーん」
「カノも時々行ってたみたいだけど」

「カノ?」
「あー以前、大学生の連中らと飲んだときにスキーの話題にもなったな」
「カノはゴルフとかにも行ってたみたいだけど、俺はゴルフはまだ行けないわ」

「あたしの前の上司もゴルフには行ってたけど、スキーは聞いたことないな」

「今年中に季節社員の工場に面接してさ、お金出来たら春スキーにでも行こうよ」

「えー」
「スキー滑ったことないよ」

「俺ちゃんと滑れるから大丈夫だよ」
「働いたお金でスキーウエア買ってやるよ」



俺はようやく恋人気分になった。これまでグラビアやAVの女性しか見たことがなかったが、俺の前で解放感溢れるクドウの姿は、これまで会ったことのない女性の姿だった。




その無防備なまでの魅力は、俺にも平等に届いた。



(夢のリフトを繋いで、やがてその頂上にクドウがいること)



(そして夢が現実になることを信じ)



(隙間を埋めるように)



クドウをまるごと好きになっていたのだった。

promise
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Victor


次回
⑥ニートクリスマス ナ・ナ・ナ


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