前回
③ニートクリスマス番外編 わたしの首領
同じパターンを繰り返した僕は、再びあの状況へ巻き戻した。
石野真子 日曜日はストレンジャー
日曜日はストレンジャー | |
クリエーター情報なし | |
Victor |
「ドライヤーありがと」
「ああ、うん、ちゃんと乾いたか?」
「うん、ありがと」
「ちょっと帰るから車かしてくれる?」
「え、あの、俺送って行くけど」
「家に行ったら、あれでしょ」
「また来るから車ちょっと貸して」
「カノ、彼氏とかいるんじゃないのか?」
「いるけどなにか?」
「彼氏がいるなら、俺みたいなニート相手しちゃダメだろ」
「よくわかんない」
「車だけちょっと貸して」
「どこにも出かけないでしょ?」
「まあ、このとおりだから俺」
「じゃ、あしたまた来るから」
(カノは俺の車を運転して実家へ帰ると・・・)
「何日か泊めてくれる?」
「何日かって心配するんじゃないのか?」
「心配しないよ 近くだし」
クドウがまた、その晩にやって来た。一度起きたことは、どう巻き戻しても再びそこに訪れる。しかし、それは俺へのご褒美なのだと感じた。
「クドウ!」
「家で揉めたかなんかしたのか?」
「泊めてくれる?」
「それは俺にとってはご褒美にしか過ぎないんだよ」
「俺はクドウに”ヤラせてくれ”ってしか言えないぜ」
「夕べだって、カノは泊まったんじゃないの?」
「泊まったよ」
「昼に弟が迎えに来て、そのあと俺の車借りて帰ったよ」
「俺はカノの両親にも面と向かって紹介できない立場なんだぜ」
「前は会社でおまえらに会ったけど、今はニート、無職だぜ」
「カノとクドウは少しは心配してくれたのか?ニートが珍しくてか?は知らないが」
「俺にとっちゃそれがご褒美。まあ、おまえらと会った頃は、少しは頑張ったからな」
「そういうつもりで来たわけじゃないんだけど」
「俺はクドウに”ヤラれてくれ”としか言えない」
「そんな男、両親に紹介できるか?」
「ニートだぜ、俺、この先の将来未定だぜ」
「俺の親もよそんちの縁談話し頼まれたりしてるけど」
「俺の見合い話しは一度も無いぜ」
「俺たちの同級生でも、何回か見合いしたとか聞いてるけど」
「クドウにだって、お見合いのひとつやふたつ来てるんじゃないのか?」
「あたしは別に、その・・・」
「俺は、クドウの両親に合わせるような顔ではない」
「せいぜい、今夜中にクドウの家に帰すことぐらいだ」
「それに、明日またカノが来るけど」
「カノにも俺は同じような立場だし」
「送って行くから帰るよ クドウ」
「揉めてないで、さっさと帰ったら親に謝れ」
「うん」
・・・・
「仕事早く見つけて頑張るんだよ」
「うん」
石野真子 ジュリーがライバル
ジュリーがライバル | |
クリエーター情報なし | |
Victor |
「こんばんはー」
「こんばんはー」
「今夜は夕方の続きをやろうか」
「今夜は少し早めに落ちます」
「了解」
翌日の夕方、カノが帰ってきた。
「車、ありがと」
「家の人心配したんじゃないか?」
「大丈夫」
「ちょっと荷物置かせてもらうね」
「ああ、うん、なにこれ?」
「着替えていい?」
「いいけど、夕べクドウが来てさー」
「なにかあった?」
「別になにもなかったけど」
「ふーん」
「クドウがなにもなくて来ないでしょ」
「あ、うん なんか家で揉めたらしくて」
「夕べ、でも、俺も泊めるわけいかないから」
「泣きべそかいてたけど帰した」
「ご飯食べた?」
「まだだけど、相槌ぐらいしろよ」
「クドウを帰したんだー」
「泊めればよかったのに」
「ニートの分際でそんなことできないよ」
「そうなんだー」
カノからは微動だにしない空気が漂った。俺はカノのマイペースで作る料理をじっと待っていた。
「お盆かなにか敷いて食べれるよね」
「テーブルだすよ」
「いいよー別に今出さなくても」
俺らは床の上にお盆を置いて料理を食べた。
「ごちそうさまー」
「ごちそうさまー、旨かったな」
「少ししたら、せんねん灸しない?」
「せんねん灸?そんなの買ってきたんだ」
「肩こりとか酷くて、この頃は腰痛もあって」
「アララギもどっか痛くない?」
「あちこち痛いけど、せんねん灸ってお灸のことか?」
「そう インスタントのだから、ツボに貼って火をつけるだけだから」
「そんなの誰かにやってもらったほうがよくないか?」
「頼めないから頼んでるんでしょ」
「俺やったことないぜ」
「最初、あたしがやるから、説明書もあるし、ツボは一緒でしょ」
「ええー」
「横になって、横になって」
「えっと」
「ここのツボに貼って火をつける」
「じっとしててね」
「はい」
・・・・・
「熱いんですけど」
「動かない」
「熱い?」
「だからさっきから熱いって」
「じゃ、今度は交代」
「肩こりのツボからやって」
こうしてふたりはお灸の時間を過ごした。
<ニートクリスマス番外編>
続く
次回
⑤ニートクリスマス番外編 ワンダーブギ