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浮気ホリデー
椎名林檎 歌舞伎町の女王
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タチバナナツコ、専業主婦。浮気ホリデー法が施行する前から会社経営者の男性と浮気をしていた。ナツコは旦那が仕事で居ない間、その男性の家に通い浮気でエンジョイしていた。
ナツコの浮気相手と出会った頃は、その男性は会社員だった。ナツコと付き合い始め仕込まれてゆくうちに男性は会社経営者になり、そして家まで建てナツコの浮気の相手をしていた。お互い年をとり年金暮らしを始める頃には一緒になろうと誓い合い。ナツコの旦那が定年退職するまでは別れずに夫婦生活を続けていた。
「どう?」
「いつ聴いても素晴らしい演奏です」
「初めはこのピアノも弾きずらかったけど、今ではあたしの手に馴染んでいて」
「気持ち良かった」
「椅子持って来てくれる」
「かしこまりました」
「浮気ホリデー法」
「邪魔だと思わない?」
「ええ、まあ」
ナツコは浮気ホリデー法が施行される前から浮気の事は旦那には内緒にしていた。浮気ホリデー法は子孫を増やす事を目的としていて、ナツコの浮気相手とは子孫を創る行為は行わずに会っていた。浮気ホリデー法施行前からの浮気は、申請と同時に浮気報告税を支払わなければならなかった。
ただし、施行前に出産、妊娠の事実があれば免税となり、浮気ホリデー法が施行される直前は駆け込み受精が行われていたが、ナツコはそれをしないでいた。施行から3年。ナツコは旦那に内緒で浮気を続けていたのだ。
「あたしたちの間に子供はいなくてもいいのにね」
「鬱陶しいわ」
「6月から9月までの間とか・・」
「あたしたちは年中こうしていたいのにねえ・・」
「ナツコさん、そのことでお話しが」
「なに?」
「実は、僕の会社が今度合併することになりまして」
「私は合併後、役員となりまして」
「それはどういうことなの?」
「大手会社との合併で、今より収入がアップするのです」
「それもみな、ナツコさんのアドバイスにより今まで以上に僕は大きくなりました」
「しかし合併で大手会社の従業員になりまして」
「浮気ホリデーも適用することになるのです」
「それって、あたしたちのことを会社に申請するってことなの?」
「いいえ、申請はしません」
「じゃ、このまま内緒ってことでいいのよね?」
「お別れいたします」
「今までありがとうございました」
「ちょっとなんでよ!」
「旦那が定年するまで今の暮らし続けるって誓ったじゃない!」
「理由をちゃんと説明しなさい!」
「会社のためです」
「今の関係だとプラスにはなりません」
「会社にも世間にもこれ以上浮気を隠蔽することもできませんし」
「浮気ホリデー法から3年が経ってますから、追徴課税も多くなりますし」
「ナツコさん、僕たちはやり直しましょう」
「浮気ホリデー法」は国民投票で行われ、国民投票では反対票のほうが上回った。しかし、その後に国民投票審議法が適用され、議会で審議された結果、立案した賛成派の与党側議員の多数議決により国民の反対意見は却下。そして浮気ホリデー法は成立したのだった。ナツコも「浮気ホリデー法」の影響で、長い間付き合っていた浮気相手から見放されることになった。
続く
浮気ホリデー 本能