前回
浮気ホリデー 歌舞伎町の女王
タチバナアキオ、ナツコの旦那、派遣会社勤務。以前はブランドメーカーの総務部、人事課に勤めていたが、会社の人件費改革によって人事課ごと左遷された。人事課を派遣子会社化したアキオの元会社は、キャリア候補社員以外は派遣子会社から雇い、アキオは今はその派遣会社の主任を務めている。ブランドメーカーの人事権はキャリア役人が握るようになり、社員教育はメーカー各部署に任せられ、人事課そのものはメーカー社員の教育から外された形となった。
「俺が昔、人事課勤めをしていた頃は、社員教育が俺たちの仕事だった」
「セクハラ、パワハラ、不倫など、文系を出た俺たちがあれこれ考え講習をしていた・・」
「今じゃ、浮気ホリデーに不倫が推進され」
「俺たちは浮気相手の人材集め」
「なんとも情けない」
「そして俺は昨晩、浮気を申し込みフラれた・・・」
「おはよ」
「どうしたの?朝から浮かれない顔をして」
「夕べ、フラれた」
「浮気を申し込んで」
「あなたはまだ、会社の言いなりになってるの?」
「俺だってこんなことはしたくない」
「だけど、結果を出さないと今の派遣会社にもいられなくなりそうだ」
「会社はプロフェッショナルを求めてる。派遣集めにも浮気集めにも」
「夏季休暇中に浮気相手を申請しないと、ボーナスも減る」
「減り続けている。オスプレイのように落ちてばかりだ」
「あたしも、浮気相手にフラれたわ」
「この際、言っちゃうけど」
「浮気相手にフラれちゃった!」
「ナ、ナツコ!」
「ナツコなんて呼ぶの久しぶりね」
「今まで、ママとしか呼んでなかったくせに」
ナツコとアキオ夫婦には子供がひとりいて、今は語学留学で外国に住んでいる。
「そんなことよりナツコ、浮気してたのか!」
「浮気ホリデー法でダメになった」
「会社が憎い」
「お前は元々、女性と話すのが苦手だったからな」
「子供が産まれてからも、保育所や小学生のママ友連中との会話も苦手で・・・」
「前にも話したけど、イジメに会ってから同性と話すのが苦手になって」
「OL時代も苦痛で、あなたと知り合ってすぐに会社を辞めたから」
「日中、あなたが居ない時の話し相手が男性」
「それが浮気って言われるなら仕方ないわ」
「ナツコ」
「あなたは包茎で、あたしたちの行為のあと、酷く痛そうにしてたから」
「肉体関係もほどほどだった」
「それでも、あたしたちの間に子供も出来て」
「子育てが一段落して、二人目は無理かな・・・って思ったあたりから」
「急に寂しくなって、家に居る間、他の男性と会ってたの」
「でも、フラれちゃった」
「憎い、憎くてしょうがない」
「ナツコ、俺もだ」
「悔しい、悔しさが込み上げてくる」
「あなた・・・」
「今日はイケそうだよ。ナツコ」
「あなたも勃起薬用意しなきゃとか言ってたくせに」
「ナツコ、きみのためだよ」
「浮気相手のためでしょ?」
「ナツコのためだよ、何言ってるんだ」
「勃起薬は愛する妻のためにあるのさ」
「ややこしいー」
椎名林檎 本能
「ナツコーーーーーーー」
「あ、あなた、忘れてる」
「忘れてないさ、良かった、ちゃんと出せて」
「この頃はコンドームが無くても、あなたのほうで勝手に中折れしてたのに」
「今日は出しちゃったの?中に」
「勃起薬はまだなくてもイケるもんだな」
「そういうことじゃなくて」
「コンドーム付けてしなかったでしょ?」
「コンドームは割り増し税率で通常消費税の1.5倍だからな」
「コンドームミクスも鬱陶しい」
ナツコに中出しをしてから5分後。アキオはナツコの高齢者妊娠がだんだんと怖くなった。その後中絶も視野に入れたが、以前、ナツコが体調不良で中絶を余儀なくされた時に水子の痛ましさが脳裏に浮かんだ。
そして、タチバナ夫婦は中絶をする前にピルを処方してもらいに産婦人科へと向かった。
「ピルは医者の診断からじゃないと貰えないから」
「何年ぶりだろ、あなたと産婦人科に来るの」
「妊娠してから、いろいろ検査とかしたな」
「性病、エイズ検査とかも」
「最近さ、クイーンのフレディーマーキュリーがエイズで亡くなったことが」
「ぜんそくで亡くなってるとか、ネットに書かれてるよね」
「歌は有名だけど、亡くなったのはエイズだったよね?」
「俺は覚えてるけど、ぜんそくって!」
「そりゃないだろ」
「エイズってこの頃、聞かないよね」
「今日はどうなされました?」
「あの、ピルを頂きたくて」
「浮気にピルは必要ですか?」
「いえ、あの、今朝旦那と、うっかり中出ししてしまいまして」
「今朝ですか?旦那様と?」
「はい」
「診察したあとに」
「お医者様からピルの処方箋が出されますので」
「こちらにどうぞ」
「よろしくお願いします」
「お待たせ」
「どうだった?」
「中出しのピルは、一回中出しにつき、一回分の処方だってさ」
「乱用はできないだろうから当然と言えば当然だけど・・・」
「コンドームのほうがお買い得か」
避妊用のピルは、ひとり1中出しにつき、1回分のピルの処方箋が配られた。
続く
次回
浮気ホリデー NIPPON
浮気ホリデー 歌舞伎町の女王
タチバナアキオ、ナツコの旦那、派遣会社勤務。以前はブランドメーカーの総務部、人事課に勤めていたが、会社の人件費改革によって人事課ごと左遷された。人事課を派遣子会社化したアキオの元会社は、キャリア候補社員以外は派遣子会社から雇い、アキオは今はその派遣会社の主任を務めている。ブランドメーカーの人事権はキャリア役人が握るようになり、社員教育はメーカー各部署に任せられ、人事課そのものはメーカー社員の教育から外された形となった。
「俺が昔、人事課勤めをしていた頃は、社員教育が俺たちの仕事だった」
「セクハラ、パワハラ、不倫など、文系を出た俺たちがあれこれ考え講習をしていた・・」
「今じゃ、浮気ホリデーに不倫が推進され」
「俺たちは浮気相手の人材集め」
「なんとも情けない」
「そして俺は昨晩、浮気を申し込みフラれた・・・」
「おはよ」
「どうしたの?朝から浮かれない顔をして」
「夕べ、フラれた」
「浮気を申し込んで」
「あなたはまだ、会社の言いなりになってるの?」
「俺だってこんなことはしたくない」
「だけど、結果を出さないと今の派遣会社にもいられなくなりそうだ」
「会社はプロフェッショナルを求めてる。派遣集めにも浮気集めにも」
「夏季休暇中に浮気相手を申請しないと、ボーナスも減る」
「減り続けている。オスプレイのように落ちてばかりだ」
「あたしも、浮気相手にフラれたわ」
「この際、言っちゃうけど」
「浮気相手にフラれちゃった!」
「ナ、ナツコ!」
「ナツコなんて呼ぶの久しぶりね」
「今まで、ママとしか呼んでなかったくせに」
ナツコとアキオ夫婦には子供がひとりいて、今は語学留学で外国に住んでいる。
「そんなことよりナツコ、浮気してたのか!」
「浮気ホリデー法でダメになった」
「会社が憎い」
「お前は元々、女性と話すのが苦手だったからな」
「子供が産まれてからも、保育所や小学生のママ友連中との会話も苦手で・・・」
「前にも話したけど、イジメに会ってから同性と話すのが苦手になって」
「OL時代も苦痛で、あなたと知り合ってすぐに会社を辞めたから」
「日中、あなたが居ない時の話し相手が男性」
「それが浮気って言われるなら仕方ないわ」
「ナツコ」
「あなたは包茎で、あたしたちの行為のあと、酷く痛そうにしてたから」
「肉体関係もほどほどだった」
「それでも、あたしたちの間に子供も出来て」
「子育てが一段落して、二人目は無理かな・・・って思ったあたりから」
「急に寂しくなって、家に居る間、他の男性と会ってたの」
「でも、フラれちゃった」
「憎い、憎くてしょうがない」
「ナツコ、俺もだ」
「悔しい、悔しさが込み上げてくる」
「あなた・・・」
「今日はイケそうだよ。ナツコ」
「あなたも勃起薬用意しなきゃとか言ってたくせに」
「ナツコ、きみのためだよ」
「浮気相手のためでしょ?」
「ナツコのためだよ、何言ってるんだ」
「勃起薬は愛する妻のためにあるのさ」
「ややこしいー」
椎名林檎 本能
本能 | |
クリエーター情報なし | |
UNIVERSAL MUSIC LLC |
「ナツコーーーーーーー」
「あ、あなた、忘れてる」
「忘れてないさ、良かった、ちゃんと出せて」
「この頃はコンドームが無くても、あなたのほうで勝手に中折れしてたのに」
「今日は出しちゃったの?中に」
「勃起薬はまだなくてもイケるもんだな」
「そういうことじゃなくて」
「コンドーム付けてしなかったでしょ?」
「コンドームは割り増し税率で通常消費税の1.5倍だからな」
「コンドームミクスも鬱陶しい」
ナツコに中出しをしてから5分後。アキオはナツコの高齢者妊娠がだんだんと怖くなった。その後中絶も視野に入れたが、以前、ナツコが体調不良で中絶を余儀なくされた時に水子の痛ましさが脳裏に浮かんだ。
そして、タチバナ夫婦は中絶をする前にピルを処方してもらいに産婦人科へと向かった。
「ピルは医者の診断からじゃないと貰えないから」
「何年ぶりだろ、あなたと産婦人科に来るの」
「妊娠してから、いろいろ検査とかしたな」
「性病、エイズ検査とかも」
「最近さ、クイーンのフレディーマーキュリーがエイズで亡くなったことが」
「ぜんそくで亡くなってるとか、ネットに書かれてるよね」
「歌は有名だけど、亡くなったのはエイズだったよね?」
「俺は覚えてるけど、ぜんそくって!」
「そりゃないだろ」
「エイズってこの頃、聞かないよね」
「今日はどうなされました?」
「あの、ピルを頂きたくて」
「浮気にピルは必要ですか?」
「いえ、あの、今朝旦那と、うっかり中出ししてしまいまして」
「今朝ですか?旦那様と?」
「はい」
「診察したあとに」
「お医者様からピルの処方箋が出されますので」
「こちらにどうぞ」
「よろしくお願いします」
「お待たせ」
「どうだった?」
「中出しのピルは、一回中出しにつき、一回分の処方だってさ」
「乱用はできないだろうから当然と言えば当然だけど・・・」
「コンドームのほうがお買い得か」
避妊用のピルは、ひとり1中出しにつき、1回分のピルの処方箋が配られた。
続く
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