<酒としょうべん>
むかし ある 村に 酒の 大好きな 男がいました。
(今夜の晩酌を買うでござる)
(ホームセンターも寄ってみるでござる)
毎日 とくりを 持って、酒を 買いに 町まで でかけていきました。
町の 入り口に せき所がありました。せき所の 役人が 顔を覚えこんで、
「せいが でるのう。ところで、おまえの 手に 持ってるのは なんだ。」と、聞きました。
「お酒ですが。」
「ほほう 酒か。それは ちょうどよい。わしも 酒は きらいではない。どうだ、一ぱい飲ませろ。」
「はあ、しかし……。」
「飲ませないのか。それじゃ この せき所は 通らせないぞ。」
「そ、そんな むちゃな。」
「じゃあ 飲ませろ。飲ませたら 通してやる。」
男は しかたなしに 飲ませました。
ところが つぎの 日も
つぎの 日も、
「飲ませろ。飲ませたら 通してやる」
と、いって 役人が おどします。
あんまり 毎日 つづくので 男は はらを たてました。なんとか うまい 方ほうは ないものだろうかと考えて、つぎの 日は うそを つくことに きめました。
酒を 買って 帰ってくると、役人は やっぱり 待ちかまえています。
「これこれ、おまえの 手に持っているのはなんだ。」
「はい、これは 水です。ただの 水です。」
「なに、水か。わしは のどが かわいて こまって いたところだ。ちょうど よい。その水を 飲ませろ。」
男は 苦しまぎれに いいました。
「お役人さま。水と いったのは うそです。ほんとは しょうべんです。」
「なんでも いい。もんく いわずに ださないか。でないと せき所は 通さんぞ。」
役人は どなりました。男は こわくて ふるえながら とくりを さしだしました。
「ふむ、この しょうべんは なかなか うまい。」
役人は そう いいながら、とくりの 酒を みんな 飲んでしまいました。男は くやしなみだを こぼしながら 家に 帰っていきました。
けれども これは どう 考えても はらの たつことです。しかえしを してやりたい ものです。
(梅毒?)
(はい)
あくる 日、男は ほんとうの しょうべんを 入れて 町から 帰ってきました。
「おそかったぞ。待ちかねて いたところだ。さあ とくりを わたせ。」
「いえ、お役人さん。きょうのは ほんとうの しょうべんですから こらえてください。」
男が おしそうに とくりを だきしめました。役人の 顔が だんだん こわくなりました。
「また うそを つく。その しょうべんが 飲みたいのだ。」
「いえ、きょうのは うそでは ありません。ほんものの しょうべんです。」
「ぐずぐず いわずに、その しょうべんを よこせ。わたさなければ ひどいぞ。」
「わたしますよ。わたしますけど、あとから はらを たてませんか。」
「ああ おこりゃせん。やくそくする。さむらいは うそは いわん。おまえの しょうべんは なかなか よい 味じゃ。」
役人は とくりを 口に あてて、ぐびぐびと しょうべんを 飲みました。
(梅 梅毒!)
それから、へんな 顔をして むねを おさえていましたが、たまりかねて へどを はきました。
(おーほっほっほ。ちょん切っちゃえば? おーほっほっほ。)