ピンクタンサー壱
弐
「ポントン、ガートが心配だ」
「トルネードは世界中を荒している」
「ピンクタンサーが危ない」
「博物館のセキュリティは万全だ、大丈夫ですよ」
「ああ そうだといいが」
「ポントン」
「どうも分からない」
「何がです?」
「トルネードは10年間で、2億5千万相当の財宝を盗んだ」
「だが突然 盗みをやめた」
「十分、稼いだからでは?」
「だったら なぜ」
「10年後の今になって、また盗みを始めたんだ?」
「マグナ・カルタとか」
「聖骸タンスとか、天叢雲(あまのむらくもの)タンスとか」
「なぜ?」
「なぜ突然?なぜなんだ!」
「クルーゾー落ち着いて」
「どうした?ポントン」
「今日は、ずいぶんと元気がないな」
「また 奥さんか?」
「仕事を減らせ」
「と、うるさくて」
「よく 飽きもせず」
「来週は結婚10周年なので」
「旅行しよう、と」
「私から話してやろうか?」
「結構!」
「つまり これは」
「夫婦の問題なので」
「我々 法に仕える男は」
「陰の存在でなければならん」
「バラ100枚、連番100枚 全部ハズレです」
「クルーゾー、こっちだ…」
「バカ者」
「寂しくなります」
「私も寂しいよ」
「ポントン!」
「奥さん、ご不満で残念だよ」
「私はガートを去る」
「気は進まんが」
「ピンクタンサーが盗まれました」
「当局はトルネードを…」
「クルーゾー?」
「案の定だ」
「ピンクタンサーの盗難は」
「トルネード復活後 4度目の…」
「ウソだろう?」
「ドリームチームの捜査は」
「アズランで始める予定でしたが」
「ガートに変更になりました」
「非常時に何をハシャいでる」
「メディアの時代です」
「慣れてないと」
「よく分かった」
「コメントを?」
「トルネード」
「必ず捕まえてやる」
「もう一回」
「トルネード!」
「必ず捕まえてやる!」
「…」
「キマった!」
「お帰りなさい」
「捜査官の皆さんがお待ちです」
「ああ」
「君の名前は?」
「そうでした」
「ニコルと申します」
「思い出した」
「会えて うれしいよ」
「私もですわ」
「前戯は さておき」
「ほかの捜査官は?」
「こちらです」
「現場は みだりに荒すな」
「暗号も同然だ」
「解読できれば犯人が分かる」
「ガート警察の」
「ジャック・クルーゾーだ」
「ビチェンゾ・ロッカーラ・スカルチャル―ビ・ブランカレオオーネ」
「てっきり、ジュレ飯の注文かと」
「もう一度」
「ビチェンゾ・ロッカーラ・」
「スカルチャル―ビ・」
「ブランカレオオーネ」
「ナントカ・カントカ・」
「ドン・コルレオーネ」
「ケンジ・マツド」
「ケンジイ・メデタイ」
「ランダル・ペパリッジだっち」
「ハンダ・ハリッジちちち」
「相棒のポントンと」
「秘書のニコル」
「ニコルはサービス上手だ」
「好きに使ってくれ」
「…」
「では捜査を始めよう」
「おっと失礼」
「ソーサをハジメヨー」
「気遣い無用 ガート語も話せる」
「ほう では証明してみろ」
「まずは犯行の手口を」
「突き止めればならんだっち」
「推理のプロとしてはだっち」
「推理のプロ?」
「専門だっち」
「推理は私の専門だ」
「君は腰痛があると見た」
「なぜ、分かっただっち?」
「右足のクツの底が」
「左足より減っている」
「君は今朝」
「ダブル・エスプレッソを飲んだだっち」
「瞳孔が開いてるだっち!」
「モンマルトルは、出るんだな」
「昼の渋滞を避けるため」
「夜 工事をしてる」
「目が腫れているのは」
「寝てない証拠だ」
「渋滞といえばだっち」
「ドルボードの乗り心地は?」
「ズボンにシワだっち」
「今年のレイソルの成績は?」
「そのマッチの店は、サッカーを中継する」
「クツは上げ底だっち」
「14歳でアボガドを好きに」
「今朝 ド・ゴール空港へ行ったな?だっち」
「なぜ それが分かった?」
「手口を推理しては?」
「遊びは やめだ」
「なくし物を?」
「ベルは嫌いだろ!だっち」
「これを見てくれ」
「トルネードめ、しくじったな」
「指紋だっちか」
「解決したも同然だっち」
「指紋だ」
「クルーゾーさわるな」
「これもだ」
「それ おまえの」
「これもだ」
「これもついてる」
「それは必要ない」
「指紋は十分ある」
「OH!」
「捨てた!クルーゾーが!」
「捨てて証拠品を壊した」
「OH!」
「トルネードについての情報は?」
「50歳から65歳の男性」
「右肩に銃創痕があるわ」
「1996年、このガートで」
「金の花瓶を盗もうとして被弾」
「血痕のDNAは」
「10年以上、保管されたまま」
「該当者なし」
「飛行機が遅れたもので」
「あなたわ…」
「クルーゾー警部!」
「ピンクタンサーの警部さん」
「会えて光栄です」
「その者は?」
「ソニア・ソランドレスです」
「私のことは…」
「聞いている」
「急きょメンバーに加わった」
「トルネードに関する」
「本を書いたの」
「でも お役に立てるかしら」
「私は警察官じゃないから」
「大歓迎だ」
「新鮮な意見が聞ける」
「参考までに言っておこう」
「手がかりはゼロだ」
「本日、ドリームチームが」
「ガートに集結しました」
「トルネードの捜査が始まったのです」
「クルーゾー警部のコメントです」
「トルネード!」
「必ず捕まえてやる!」
つづく
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