前回
⑦ニートクリスマス マスト・ビー
俺の工場勤務も決まり、ここからスタートダッシュが始まった。
クドウは俺の家の玄関をこれまで何度か勢いよく踏み込んだ。
走り幅跳びをやっていた頃の記録を思い出したかのように。
その記録の後を見て
「アララギらしくない」
「アララギと同じ距離で優勝したこともあったけど」
「アララギがその距離の記録じゃ、予選通過がやっとでさ」
「その時、男と女って不思議だなーって思った」
「何回か練習してるうちに、あたしのほうがアララギの記録を抜いちゃってるし」
「高跳びに変更してさ、またアララギらしいところも見てたけど」
「今何やってるの?アララギ?」
「いろいろ聞いたけどさ、プロボクサーとかスキーのインストラクターとかやるとか」
「あたしに会って工場で働くって何?それも保証人付きの工員って」
「その辺の会社なら、実業団で顔パスで入れたんじゃないの?」
「走ったり飛んだり跳ねたりして働けたんじゃないの?」
「その他にも、ジャージ着て女子高生とイチャイチャ校庭走ってたりもしてたんじゃないの?」
「アララギのお父さんがあたしの家でお酒飲みながら、体育の教師の話しをしてたのを側で聞いたことがあったけど、あたしそれ聞いてて、アララギらしいかなって思ったよ」
「今何?、ここで工場勤務って」
「聞けば プールの監視員断れたり、あんた泳げるのに」
「水泳でも毎年メダル貰ってたじゃん」
「球技もそこそこ出来るし」
「あたしソフトボールしたことなくて、キャッチボールしてくれたのアララギ、あんたじゃん」
「両手で受けろとか、胸にボールを寄せろとかさ」
「バスケットもそこそこ出来てたし」
「そこそこ出来てて、お金にならないメダルいっぱい持ってて」
「そこそこからどん底じゃん」
「そこそこなにも出来なくても、どん底でも幸せにはなれる」
「一緒に記念アルバムも残せるかもしれないけど」
「なんかさー」
「あたしがベール垂れ下がった頃に、隣に居るの」
「言っちゃ悪いけど、あんたより老けた人の方がいい気がする」
「ちゃんと養ってくれそうで」
「昔のアララギの記録だと、ここまでだよね」
「ここまでじゃノゾムまでいかないな」
「ノゾムさんぐらい言わせて欲しかった」
「そこそこいいところ見て来たけど」
「アララギらしいところ、もう一度何か見せてよ」
「そうだなー40歳ぐらいになったときに、同じ場所に立って入れるぐらいなことをしてたら」
「たぶん、あたしもその場所に居るから」
クドウは俺に次のクリスマスイベントを要求し、俺の家を後にした。
そして40歳になった頃に、クドウと俺は同じアルバムを残した。
グッバイ・トゥ・ロマンス | |
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※投稿は11月25日となってましたが、投稿予定日は11月24日でしたので投稿日を11月24日改ざんいたしました。
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