<ニートクリスマス>
俺は現在無職。年齢は24歳。
24歳無職、22歳までに大卒並みの給料のいい会社に入ろうと転職を繰り返したがダメだった。
学歴は高卒。同い年の奴らが大学を卒業するまでにいいポジションでいようと思ったがダメだった。
貧乏不良不男の中卒野郎も小さな町工場に安月給で就職し、共産党を心の支えにコツコツ長く勤めたこともあり、今じゃ工場じゃ係長の管理職。
貯金も貯めてて、俺は時々金を借りたり古くなった家財道具をもらったり。あげくには車も中卒野郎の中古のお下がりに乗っていた。
その車に入れるガソリンも出せなくなって、俺は部屋で独り籠っていた。
フローリングの部屋に布団が一枚、そしてテレビが一台。テレビもまた、中卒野郎が俺に買ってくれたものだ。
20歳ぐらいからバッタリ会うようになり。壊れた家のテレビの話をしたら、俺の家にディスカウントショップで買ったような、二流メーカーのテレビを俺の家に持って来た。高校を卒業して24歳になったが、俺は中卒野郎より下に生きている。
中卒野郎が就職の世話をすると言ってきたが、俺は断った。
なぜ断ったんだ?給料が安そうだし仕事がきつそうだからだ。
俺は給料も高く、デスクワークの仕事に憧れてたんだ。大卒ならそれも可能だと嫉妬心もあった。
しかし、高卒なだけになかなかそういった仕事にもありつけない。
せめて初任給の高い会社を探しては、転勤を繰り返したがダメだった。
そう、ダメなんだよ。それじゃーだから俺は24歳でもニートなんだよな。
「深夜放送おもしれー」
「番組終了か、んじゃー次はゲームか」
ピンポーン
「なんだこんな夜中に」
ピンポーン
「誰だよん?女!」
「わ!」
「やっぱりまだおきてたね」
「そうだね」
「カノ!クドウ!」
「あんたぐらいしかこんなことしないよ」
「ローマ字シールでRANBOUって貼るの」
「あははは おじゃましまーす」
「おい!うわ!このふたり酒くさー」
カノとクドウ。この女組二人は、高校の同級生。カノは高校からでクドウは中学からの知り合いだ。
高校時代はそんなにつるんだことはなかったが、クドウとは中学の頃に部活が一緒だったり、クラスが一緒だったりもしていた。だが、クドウは部活をすぐ辞めたりして、そんなに仲良しってほどではなかった。最近になって俺が勤めていた会社で偶然にも会うことができた。
一方、カノはというと、けっこうスタイルの良い女だった。実はカノとはちょくちょくクドウのいないところで会っていた。
時々会って昼飯食べたり。俺が勤めてた会社のノルマ製品をカノに頼んで買ってもらったりもしていた。
大学生だった仲間に会い。カノを呼んではクリスマスパーティーを開いたこともあった。だが、そのあとの進展はなかった。俺は「カノに彼氏がいるんじゃないか?」と、常々想っていたのだ。
それが酔っぱらってクドウとふたりで夜中に俺の部屋にやってくるなんて驚くよ!驚くに決まってるよ。
「何で来たんだおまえら?」
クドウの家は俺の家から近くにあった。歩いても行ける距離だったんだが・・・
「タクシーが途中でここに停車したの」
「アララギの側の公園がさ、ある意味目印だったから。その先があたしの家だけどさ、そこの公園でタクシーが停車して。あたしの家を聞かれたけど、めんどくさくなってここで降りたの」
「そしたらアララギの話になって外寒しさ、11月の終わりだし」
「それでアララギの家に来て、クドウがこの辺だって言ってたから」
俺の名前はアララギノゾム、漢字では蘭望と書くのでランボーと呼ばれるようになり、シャレで自分の家の玄関にもローマ字シールでRANBOUと貼っていた。呼び名は知り合いの男はランボーと呼ぶ奴が多かったが、女連中はわりとアララギと呼んでいた。
「ちょっと上がらせて」
「あとでまたタクシー呼ぶからさ」
「カノおくっていかなきゃいけないし」
カノとクドウはオバサンの如く、づけづけと俺の部屋に入って来た。
「うわ!さむーい」
「なに布団だけでここにいるの?」
「ああ・・・」
「今ファンヒーターあるからつけるよ」
カノとクドウは俺の部屋のフローリングで酒の匂いをプンプンさせ、座りながらペラペラと話していた。俺はカノのスカート姿の足をチラチラと見ていた。
※2018年5月30日編集
②ニートクリスマス誕生前夜
③ニートクリスマスハートビート
④ニートクリスマス燃える欲望
⑤ニートクリスマス スキック
⑥ニートクリスマス ナ・ナ・ナ
⑦ニートクリスマス マスト・ビー
⑧ニートクリスマス血塗れの英雄
⑨ニートクリスマス 長持ち
ニートクリスマス スポークンワーズ
<みうらじゅん「僕が」から「私で」になるとき>
みうらじゅんが来年2月に60歳になる
学年で言えば
みうらじゅんが20歳の時は、僕は10歳だった
僕が10歳の頃は小学4年生、宮藤官九郎は小学1年だった
ピンクレディーがブレイクし,キャンディーズが解散宣言した頃だ。
ザ・ベストテンもその頃に始まり、ジュリーがソロアイドル界に殴り込みをかけていた頃だ。
みうらじゅんはその頃20歳で、ピンクレディーやキャンディーズなどが恋愛適齢期
山口百恵もその2年後、20歳で三浦友和と結婚している
みうらじゅんが三浦友和になっててもおかしくない時代だ。
僕が恋愛適齢期を迎えた20歳の頃は、みうらじゅんは30歳
その頃であれば、僕も僕の主導で結婚できたかもしれない
僕が20歳からの10年間は、みうらじゅんも恋愛対象として受け応えできた時代だ。
同性カップルの話ではない
みうらじゅんが女性だった場合だ
年下の僕の主導で、持てるバトンの恋愛間隔は10年間
だとしたら
僕が20歳の頃であれば、みうらじゅんが30歳だとしても、僕がよければ恋愛ができた
でも、今は「僕がよければ」というバトンは消え、逆に「私でよけれバトン」を待たなければならない。
10年という歳の差は、バトンを渡せる10年が幾度か過ぎると、そのあとはバトンを待つ10年なのだ。
みうらじゅん「僕がよけれバトン」から「私でよけれバトン」になるとき