ついに最終回です。
西へと急ぐように落ちて行く太陽。
私の気持ちもちょっと焦って来ました。
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桜に光が当たらなくなったら、もったいない。
それに何より、山の中で暗くなるのは絶対に避けたい。
急がなきゃという気持ちと、最後の光を撮っておきたい気持ちがせめぎ合って。
心の中は、この山の色合いのようなモザイク模様でした。
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この美しい場所に、いつも立っている気分になれるように。
写真を残したい、と思う。
その5でくぐってきたミツバツツジの道を向かい側に眺めます。
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綺麗だったなぁ……。
だいぶ近づいてきた、あの大屋根。
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下の道路を走っているのは、私が朝乗ってきたのと同じルートのバスです。
杉の木立から差し込む、眩しい光。
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ほんとうは、もっともっとキラキラです。
時間が遅くなってしまって、当初予定していた見所をスルーすることになりました。
如意輪寺や五郎兵衛茶屋など。
このあたりにはたくさんのいいポイントがあるんです。
仕方がないので来年のお楽しみにとっておくことにします。
どっちかだけでも見れるかなって思ったけれど、山がついに日陰に入ってしまったから。
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今回はこれで充分です。
暗いところの桜も、紫がかって杉の闇に沈んだように見え、幻想的でした。
急な坂を下ったり、ぐねぐねした道を進んでいると。
こんな谷間に出ました。
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おひさまがくれた、最後のプレゼントだと思いました。
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逆光ならではの、破裂しそうな光の塊。
そしてその奥には、闇に沈んだ桜も浮き上がって見えています。
これを最後に見て行きなさいよ、って、山に言ってもらっている気がしました。
ついに、山に日が沈みました。
薄暗くなる山の谷間。
分岐点を見つけます。
真っすぐ→五郎兵衛茶屋、右→吉野駅。
こう書いてありました。
このとき、
(ん?茶屋はもう行かないから、方角から言えば右の吉野駅かなぁ?)
と考えました。
右へ下りて行くと、アスファルトの道が現れました。
(歩きやすい道になったなぁ。でも人気はないし暗くなってきたし……、ちょっと怖い。
早く元の道に戻りたいなぁ……)
土産物屋が立ち並び、観光客がいっぱいのにぎやかな道が、恋しくなりました。
てくてく、てくてく。
歩けど歩けど、薄暗い道が続きます。
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だんだんと、不安になってきました。
早くマップを見ておけばよかったんです。
iPhoneで現在地を確認すると、私は元の道と平行に走る『ささやきの小径』という道に来ていました。
え~~~~!
戻れないの!?
なんとか左へ、元の道へ戻れるルートを探しましたがちっとも見つからず。
この辺りで、吉野駅に行くということはどういうことか分かったのです。
つまり、駅までこの道で帰るということ。
お土産屋さんのはしごもできない。
暗くさみしい道がえんえんと続く。
最悪だ~~~~
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あえてこの恥ずかしい失敗談を書いたのは、ひとえに私と同じ間違いをしてほしくないからです。
あの標識では分からないですよ~~~。
いや、あそこでちゃんとマップを見ておかなかった私が悪いんですが。
五郎兵衛茶屋と一緒に金峯山寺とか書いておいてほしかった……。
もしもこれから行かれる方がいらっしゃれば、どうぞお気をつけ下さいね。
iPhoneのマップで進み具合を何度も見ながら。
てくてくてくと歩いて行きます。
横は、こんなちょっと怖い岩が見えていたりして。
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まあでも、よく見るとちょっと高千穂の黒い岩に似ています。
岩の間からしみ出る水とか。
悪くないよ、うん。
無理矢理そんな風に心を落ち着かせようとしたり。
突然、こんな美しい門が現れました。
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何?何かの旅館かな。
調べてみると、ここは『吉野温泉元湯』というところで、かの島崎藤村が逗留していた宿だそうです。
暗かったので、人気もなくちょっと怖かったですが、明るい時間はきっと素敵な、鄙びた温泉宿なのでしょう。
あ、ケーブルカーだ!!
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やっと吉野駅に帰ってきたようです。
はあ~~、やっと着いたか……。
あ~あ、失敗しちゃったなぁ。
あんなに目指していた金峯山寺の蔵王堂も、見られずじまい。
どうにも情けない気分です。
蔵王堂の勇姿をご覧になりたい方は、こちらの記事をご覧下さい。
『紅葉の吉野山(1/4)』
と、駅前に漂う、お肉が焼けるいいにおい~~~
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見ると、屋台が出ていて、牛串とか鶏串とか書いてあります!!
高かったけど、両方を速攻ゲット!!
あ~おなか空いた~~~。
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色気もそっけもないですねぇ……。
きっと体がタンパク質を求めているんだ、うんそうだ、とだれかに言い訳してました
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牛肉も鶏肉も、塩がきいてジューシーで、とっても美味しかったですよ。
そのあとは、駅前のお土産屋さんでさくら羊羹と葛餅を購入して。
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中身の写真を撮るのを忘れました……おバカでしょう~~。
駅前のベンチでゆっくり休憩してから、ぬる過ぎる缶コーヒーを買って、電車に乗りました。
はあああああ、終わったなぁ~~~~。
大きなため息をひとつ。
足はさすがにふくらはぎが張っていました。
これで、桜の吉野山、終了です。
長々とお付き合い、ありがとうございました。
最後は尻つぼみで申し訳ありません。
次来た時は、もう少しかしこく歩こうと思います。
ブログをいつも読んでくださるジージさんが、あの黒い岩を見て和歌の上の句を書いてくださったので、下の句を作らせていただきました。
み吉野の いにしえの岩 物語る
とく散る桜と 人の世もまた
歴史のある場所に来ると、自然と風流な気分になります。
それでは、今日は、イブちょのあらよっと踊りでお見送りしてもらいましょう。
あらよっ!
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ばったん!
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ほっっ!!腹筋!!
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相変わらずお散歩ではしゃぎまくりのイブちょさんでした。
それでは、また次回でお会いしましょう~
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