金融庁は5日、会社の支配権に影響を
及ぼす取引に公開買い付け(TOB)
を義務付ける「TOB制度」の見直し
に向けた金融審議会(首相の諮問機関)
の作業部会の初会合を開いた。
株式の大量保有者に一定の情報開示
を義務付ける「大量保有報告制度」を
見直すほか、株主名簿に載らない
ものの議決権指図権限を持つ「実質株主」
を把握できる仕組みも検討する。
1年程度かけて議論し、金融商品取引法
の改正も視野に入れる。
市場環境の変化を踏まえ17年ぶりに
総点検し、透明性や実効性を重視した
公平な制度へ改める。会合では優先
すべき検討課題について議論した。
TOB制度では、現在は対象外の市場内取引
でも議決権の3分の1超を取得する場合
にTOBの義務付けを検討する。
一般株主の投資判断に影響が及ぶ
情報開示がされないまま支配権を
取得する例があり、公平性の観点で
問題となっていた。
委員からは「制度趣旨や合理的な
投資判断をする観点から市場内取引
でも保護を図るべきだ」という意見があった。
「日本型」と呼ばれる支配権を取得する
買い付け自体にTOBを課す規制から、
支配権の取得後に残りの全株式にTOBを
求める「欧州型」の規制へと抜本的に
変えるかどうかについても議論する。
大量保有報告制度は「実効性が不十分」
との指摘があった。報告書の提出遅れが
年間1500件発生しており、ある委員は
「悪質な事例や問題がある事例を捕捉
できる制度を考えるべきだ」と述べた。
実質株主の問題について、委員からは
「日本は諸外国と異なり企業が実質株主
を把握するのが困難で判明するのに多く
のリソースを割いている。判明が容易に
なれば企業は投資家との対話により
注力して対話の質を高められる」と強調した。