可憐な白い花をつけるスプリング・エフェメラルの「アマナ」。この写真では、花弁の背面の紫の筋がよく見える。甘菜という名前は、葉ではなく根が食べられて甘いかららしい。クワイに似た球根が食べられるようだ。
(2020-03 高尾山)
「アマナ」
アマナ(甘菜、学名:Amana edulis)は、単子葉植物ユリ科アマナ属の多年草。チューリップによく似ており、かつてはTulipa edulisとしてチューリップ属に入れられていた。
名前は球根が甘く食用できるところから。別名ムギクワイと言い、これは球根の形をクワイになぞらえたもの。調理法もクワイと同様である。
特徴
地下には広卵形の球根をもつ。球根は外側に黒っぽい皮がある。10cm位の深さに埋もれており、しかもそれに繋がる茎が細いので、掘り出そうとしても切ってしまうことが多い。葉はこの茎の中程からつくので、地表では根出葉のように見える。葉は2枚、ほぼ同じ大きさのものが向かい合う。線形で長さ10-25cm、幅は5-10mm、中央がくぼんでUの字になっている。色は緑色で裏面はちょっと紫がかり、全体に白い粉を吹いたような感じに見える。
この葉の間から早春に15cm程の花茎を立て、その先端に白い花を一つだけつける。花の少し下には一対の苞があり、小さな葉状で緑色をしている。花被は六個、長さ20-25mm、披針形で先端がやや尖り、白で背面には紫の筋が入る。釣り鐘状に抱えて咲き、上向きかやや斜めに向く。雄蘂は六個で花被より少し短く、葯は黄色い。花の見かけはごく小さなチューリップそのものである。なお、晴れた日には花がよく開くが、曇りの日には閉じてしまう。
果実は丸くて緑色、長さ10mm。
アマナの花
季節
春の花の中でも特に早く咲くもののひとつである。新春に葉を伸ばし、それから花が咲くと、葉は夏頃まで残る。周囲の草丈が高くなると埋もれてしまう。いわゆるスプリング・エフェメラルの型に入る植物である。
生育環境など
日向の草地に生える。やや湿ったところに多い。背丈の高い草地には生えないため、実際には春先に草刈りや野焼きの行われるような、里山的環境に見られることが多い。水田の畦や河川の堤防などに生育地が多かったが、現在ではそのような環境は大きく変化しており、見られる場所は少なくなっている。
本州東北地方南部以南、四国、九州、奄美大島に分布し、国外では朝鮮、中国東北部から知られている。