大型映画館、東京でようやく再開も場当たり対応に関係者怒り
9都道府県の緊急事態宣言の再延長に伴い、東京都が独自の措置として実施してきた大型映画館や博物館などの休業要請が6月1日から緩和されることになった。政府方針より厳しい措置を守って休業してきた関係者からはひとまず安堵(あんど)の声が上がったが、業界が受けたダメージに憤りの声も。準備、周知期間がほとんどないままのたび重なる変更に事業者も利用者も翻弄され続けている。
これまで、劇場やイベントが一定の制限のもとで開かれる一方、大型映画館に休業要請が出ていたことに、業界団体などから強い不満が表明されていた。
多くのスクリーンを抱える東京都内の映画館の上映の可否は、全体の興行収入に大きく影響する。集客が見込めず公開を延期した大作も多い。
「大型連休後も宣言が延長されたことで、僕の映画は5月の公開が延期となり、公開日を告知していたチラシがゴミになった」と憤るのは、ある映画プロデューサーだ。
しかも、政府や都の方針が示されるのは解除期限直前で、準備期間はほとんどない。映画は事前の告知、宣伝が重要な業界だ。「映画には製作者や俳優、劇場関係者ら多くの人が関わっている。映画館が閉まるとフリーの人は仕事がなくなり生活できない。行政はそんな実情が分かっているのか」。31日まで続く大型映画館の休業に、ベテラン宣伝担当者はこう嘆息する。
都内の大型映画館の関係者は29日、前日の都の方針決定を受けて「ひとまず開けられるのはよかった」と語ったが、手放しでは喜べない。再開後も、客席は50%の制限に午後9時までの時短営業となる。映画館の収入を支える売店もアルコール販売などに制限がかかる。それでも、検温や消毒作業でスタッフの人手は必要だ。別の映画関係者は「コロナでクラスターを1件も発生させなかったことは誇り。それが全く考慮されていないという思いは消えない」と話す。 産経新聞