アフガニスタン政権崩壊に関連し、バイデン米大統領は19日に放送された米テレビのインタビューで、米国には日本、韓国などと同様、台湾に対しても防衛義務があると語った。発言は政権崩壊による同盟国の動揺を鎮める狙いがあったとみられるが、実際は米国には台湾への防衛義務はない。政権高官は釈明に追われた。
バイデン氏はインタビューのなかで「中国が台湾に対して『だから米国人を頼りにできないだろう』と言っている」と指摘され、「北大西洋条約機構(NATO)の同盟国が攻撃されれば、我々は(集団防衛を定めた)条約第5条を守ると誓約しており、反撃する」と強調。「日本とも同じ、韓国とも同じ、台湾とも同様だ」と語った。
ただ、米国に台湾の防衛義務はなく、発言は誤りだ。米国と台湾との実質的な外交関係は台湾関係法に基づく。同法は米国の台湾防衛の義務を明示していない。その代わり、「平和的手段以外で台湾の未来を決めようとするいかなる試み」も「米国にとって深い懸念」となると表現。米国はこれをもとに、中国の台湾侵攻時の対応について明確には答えない「あいまい戦略」を維持している。
「あいまい戦略」は、「一つの中国」原則をもつ中国をなるだけ刺激せずに台湾を軍事支援する一方、台湾の独立も促さないというもので、中台間の微妙なバランスに配慮した戦略だ。バイデン氏の発言に、政権高官は19日、朝日新聞の取材に「米国の台湾に関する政策に変更はない。米国と台湾の防衛関係は台湾関係法に基づいている」と釈明した。(ワシントン=園田耕司)