13日の衆院外務委員会では尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の排他的経済水域(EEZ)内に中国が大型の観測ブイを設置した問題を巡って上川陽子外相と野党議員が論戦する場面があった。無所属の松原仁衆院議員は上川氏に対し、「ブイを撤去するかどうか明確にしないと国益は守れない。事実上放置する判断をしているとしかみえない」と指摘したが、上川氏は「有効な対応を適切に実施していく」と述べるにとどめ、議論は平行線をたどった。
回収できない理由巡り7回やり取り
ブイを巡っては昨年7月に尖閣の北西約80キロで中国の海洋調査船による設置が確認されて以降、岸田文雄首相が昨年11月の日中首脳会談で習近平国家主席に対し即時撤去を求めるなど、外交ルートを通じて中国に撤去要請を行っているが、中国側に応じる気配はない。中国にとってブイの設置は尖閣周辺海域で管轄権を既成事実化する狙いがあるとみられ、中国の研究者がブイの観測データを基に少なくとも4本の学術論文を発表したことも明らかになった。
松原氏は外務委で「日本がブイを回収すべきだ。回収できない理由をいってほしい」と追及したが、上川氏は「回収に関する国際法上の基準が不明確で、その中で政策的な判断となる」と述べ、同様のやり取りが計7回繰り返された。
その上で松原氏は「中国は国際法を自己都合で無視する。こうした国家に対して、政治決断で行動しないと国益は保たれない」とし、「中国の行動を放置するのか、対抗措置をとるのか、選択する時期に来ている」と語った。上川氏は「有効な対応を適切に実施していく。具体的な時期を明示することはできない」と述べるにとどめた。
力による現状変更に申し入れで対応
日本維新の会の青柳仁士衆院議員も上川氏にブイの強制撤去など対応を求めた。青柳氏は中国の研究者がブイの観測データを論文に活用している問題を挙げて「既に出された論文を差し止めるなど具体的な措置を至急行うべきだ」と指摘した。
一方、上川氏は「あらゆる機会をとらえて中国に対してブイの即時撤去を強く求めている」とし、「ブイの撤去や移動、わが国によるブイの設置を含むさまざまな対応について、関係省庁で連携、検討し、可能で有効な対応を適切に実施していく」と繰り返した。
青柳氏は「中国によるブイの設置は力による現状変更で決して認められない。しかし、行っていることは申し入れという答弁なわけだ。具体的な措置は今すぐにできるわけだから、今すぐやるべきだ」と政府に対応を促した。(奥原慎平)
産経新聞