「習近平の過信」が招いた過ち
日本にやってくる中国人富裕層が近年、特に増えている。彼らは「投資移民」とも呼ばれている。しかし、富裕層の移民は歓迎するムードもあるが、筆者が懸念しているのは今後、不法移民も日本に押し寄せるのではないかという懸念である。
前編「中国を脱出するのは富裕層だけじゃなかった…!習近平の「経済無策」で、日本に中国移民が「大量になだれ込む日」」では、直近の中国経済の惨憺たる状況について解説したが、本稿でも打つ手なしの中国政府の実態を明らかにし、不法移民が発生する可能性を検証していこう。
中国政府はかつて不動産バブルの崩壊で長期的な経済停滞を余儀なくされた日本の失敗を「十分に研究しているから、同じ過ちを繰り返さない」と胸を張っていた。ところが、不動産危機発生後の2年あまりの対応を見るにつけ、「何を研究していたのか」と首をかしげたくなる。
今回の対策の欠点は規模ばかりではない。地方政府が銀行からの融資で売れ残った住宅を買い取ることも問題だ。収益を生まなければ地方政府からの返済が滞り、銀行の不良債権が一気に膨らむリスクをはらんでいる。
1990年代後半、日本では戦後最大の金融危機が起きてしまったが、中国政府は金融危機の導火線に自ら火を付けているのではないかと思えてならない。
中国版「デフレの正体」
中国政府が政策メインに据えているのは「中国製造2025」に象徴されるイノベーション駆動型の経済成長の実現だ。
中国政府の号令の下、銀行貸し出しは近年、不動産部門から工業部門へ急激にシフトしており、これにより、中国は深刻な過剰生産能力を抱えるようになっている。
このため、中国ではあらゆる分野で「価格破壊」が生じている。
EVの過当競争ぶりは既に有名だが、この現象は人口知能(AI)にも波及している。
中国のアリババグループは自社で展開しているAIサービスを最大97%値下げした。この動きに百度(バイドウ)がすぐに対抗手段を講じており、AI市場でも熾烈な生き残り競争が始まっている(5月21日付ブルームバーグ)。
「若者失業率15%」と「無差別殺傷事件」のヤバすぎる関係
4月の若年層(16~24歳)の失業率は14.7%と相変わらず高水準だ。
EVやAI産業を担う民営企業が雇用創出に大きく貢献しているが、中国政府は民営企業への規制を強化しており、「金の卵」を産むガチョウの首を締め付けている有様だ。
不況のせいで中国でも家計債務は過去5年間で50%も増加し、約11兆ドルに達している。政府のブラックリストに載せられた借金滞納者の数も50%近く増加し、830万人に上っている。一度、ブラックリストに載ると旅行や高速鉄道などの利用が禁止されるなどの厳しい制裁が課されることから、多くの中国人が戦々恐々としているという(4月23日付ウオールストリートジャーナル)。
殺伐した世相を表すかのように、中国各地で無差別殺傷事件が後を絶たない。
生きられない人たちの「中国脱出」
実は日本にやってきている中国人富裕層は、日本に魅力を感じてやってきたと言うよりは、こうした中国の先行きを不安視してやってきているエクソダス(脱出)の可能性が高い。
日本国内の中国人居住者は昨年末に約82万2000人となり、前年に比べて6万人増加した。
飛行機でわずか数時間の距離にあり、円安で不動産価格が手頃な価格となっていることから、専門家は「中国人の日本への投資移民はさらに増加する」と予測している(5月3日付中央日報)。彼らは緊迫する本土の経済状況と思想統制的な政府の規制に危機感を抱き「自由」を求めて日本に移住しているのではないか。とくに中国の文化人などの数も増加傾向にある(5月18日付ニューズウイーク日本版)のは、その顕著な例だろう。
新宿区に 1万7千622人