各国海軍の軍艦が日本に相次いで寄港している。12日にはトルコ海軍艦が9年ぶりに東京へ寄港。10日のオランダ艦、11日のインド艦訪問に続いた。8月下旬ごろにはイタリアの軽空母「カブール」が初寄港を予定。空軍でもドイツがフランス、スペインと戦闘機の共同派遣を計画する。南シナ海で一方的な現状変更を進める中国を念頭にインド太平洋地域で存在感を高めたい狙いがあり、海空自衛隊が共同訓練などを検討している。
念頭に中国の動向
「海軍種間の協力を深め、知識を共有し、現在の海の問題に取り組むための共同能力を高める貴重な機会となる」。12日に東京都江東区の東京国際クルーズターミナルに入港したトルコ海軍「クナルアダ」の艦長、セルカン・ドアン中佐は式典でこう述べた。
国交樹立100周年記念の親善目的だが、ドアン中佐の念頭には中国の動向があるとみられる。
10日に蘭海軍のフリゲート艦「トロンプ」が長崎へ入港。11日には3年連続となる印海軍のフリゲート艦「シヴァリク」が横須賀港へ入り、それぞれ海上自衛隊が出迎えた。海自トップの酒井良海幕長は11日の記者会見で「これらを最大限に生かし、地域安定化に協力し得る活動を積極的に行いたい」と強調した。
「危機感の表れ」
6~8月に米海軍が主催する環太平洋合同演習「リムパック」に合わせ、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の動きが目立つ。伊海軍はF35B戦闘機を搭載する軽空母「カブール」を太平洋へ派遣。独海軍もフリゲート艦を太平洋へ派遣する。海空自衛隊は事実上の空母運用を見据えてF35Bを導入中で、海自は共同訓練を見込む。
海軍だけではない。独空軍は6~8月、仏、西空軍とともにユーロファイター戦闘機など計48機を共同派遣し、米アラスカ州、日本、オーストラリア、印などで多国間演習を展開する方針を明らかにしている。日本への複数国の共同派遣は初とみられ、空自関係者は「これだけ一度に飛来するのは危機感の表れ」と分析する。
ロシアのウクライナ侵略以降、NATO加盟国による対中露を意識したインド太平洋への関与が強まる。制服組トップの吉田圭秀統合幕僚長は5月30日の会見で「同志国と多層的な枠組みを構築していくことが必要だ」と話した。(市岡豊大)
産経新聞