トランプ氏と昭恵夫人の面会は日本に大きな貢献 前回就任前は外務省が抵抗 高橋洋一
安倍晋三元首相の妻、昭恵さんとドナルド・トランプ次期米大統領夫妻が面会した。
トランプ氏は、フロリダ州の私邸「マールアラーゴ」の自宅で、昭恵さんと会った翌日、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長とも会った。記者会見では、トランプ氏は孫氏とともに現れ、今後、ソフトバンクグループが米国に1000億ドル(約15兆円)の投資を行い、少なくとも10万人の雇用を創出すると発表した。
この順番で分かるのは、トランプ氏にはまず「友情」、次に「カネ」がモノを言うことだ。
会見でトランプ氏は、石破茂首相との会談の可能性について質問されると「首相と会うだろう」と述べた。さらに「(来年1月20日の)大統領就任式の前に会うこともあるのか」という質問には「彼らが望むなら、そうする」と述べた。前日に面会した昭恵さんを通じて、石破首相に本などを贈ったとも明らかにした。
この会見では、トランプ氏は安倍元首相の名前を何度も出したが、石破首相の名前を出すことはなく、「日本の首相」という表現だった。トランプ氏が「ぜひ会いたい」と述べたとの報道もあったが、トランプ氏の会見の様子からは、そこまでの熱意は感じられなかった。
日本政府は水面下で石破・トランプ会談を模索していた。昭恵さんとの夕食会もあったので、トランプ氏は石破首相と会う意向はあるのだろう。
筆者としては、石破首相がトランプ氏と会って、自らの「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」を説明したらどうかと思っている。トランプ氏は、アジア版NATOのメンバーを聞くだろう。もしその中に中国が入っていれば、日本は「敵国」に認定されてもおかしくない。「中古の原子力潜水艦でも購入したい」と持ちかければ応じてくれるかもしれないが、深い話ができるだろうか。
ある民放の情報番組で、トランプ夫妻と会食した昭恵さんを非難するコメンテーターがいた。「(国民が)選んでも託してもない」「マイナスの結果が出たらどうする」などと発言していた。
実際には昭恵さんと孫氏が、かろうじてトランプ氏の日本への関心をつなぎ止めてくれた。日本のことを思うと、素直に評価したい。いずれも、日本政府とは別のチャンネルだが、広い意味での日本の国益にかなっている。
2016年当時も似た状況で、トランプ氏の就任前の会談には外務省が抵抗して消極的だった。そこで、安倍元首相の個人的なツテを頼りにトランプ氏との会談を行った。筆者もそのときは微力ながら協力させてもらった。
石破氏がアジア版NATOを主張していることは、トランプ氏の側近であれば知っているだろう。それを転じて、米英豪の安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」に加わりたいというくらいでないと日米同盟を深化させられないのではないだろうか。いずれにしても、世界中の人がトランプ氏との会談を望んでいるので、日本としても出遅れることなく頑張ってほしい。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
産経新聞
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