「通説や俗説ではこう語られているが、実は......」な描き方の今作大河ドラマ。史実無視との声もありますが、実は真相はこうだったと描く本作に対しては微妙にズレた批評かもしれません(何事にも限度というものはありますが)
これまでの築山事件の描写が生々しい方向であったのに対し、実に美しい方向に描くなあ、と思いました。対する信康切腹の描写は血糊つきで割と凄惨(史実に準じ服部半蔵が介錯、実際は半蔵は手を下せず他の家臣が介錯)。
お瀬名さんの企みが200年ばかり時代を超越していた(経済同盟から統一へ、という点から見るとちょっとだけ似ているドイツ関税同盟は1834年)のが批判を浴びていましたが、確かに築山殿が企む中身の部分はもう一練り必要だったかもしれません。
15で結婚してからざっと22年。本作家康にとっての「家族」が失われた回でしょうか。今回までかたくなに髪型や衣装を大きく変えなかったことに、「弱い」家康の在りようが反映されていたのかもしれません。
伝えられるところでは、家康は天下を取った後も築山殿と信康それぞれの墓所に格別の取り扱いをしていません。通説通り築山殿は悪逆で信康は暴虐だったから、家康としては手厚い供養を追加することは不要とした、と考えることもできますし、あるいは天下人の過ちを認めることはその面目を失うことになるとしてあえて何もしなかったのかもしれません。本作で、このあたりが後日どう描かれるのか見守りたいと思います(描かれないかも)
次回予告で随分外観の変わる家康殿。次回は武田滅亡(真栄田勝頼が突撃していました)からの信長を接待する富士見物なのでしょうか(通説でも実に行き届いたおもてなしだったらしい)。来たる豊臣秀吉の天下へ、本格的な布石が始まるのでしょうかね。
放映後、松本潤さんと有村架純さんが築山殿の墓所に花を手向けていたのが印象的でした。