さて、この白川尚史先生の言葉が「タイパ」をしきりに口にする層に響くお話かどうか。
俗に「一万時間の法則」と言われます。職業として行えるものは何であれ、プロになるまでにかかる時間はそれくらいになるようです。1日3時間としてざっくり10年ですね。1日9時間かけられるなら3年間。まあ、おおよそそのくらいかなあ、と、職業人としての生活を送った方なら得心していただけると思います。
「20時間の法則」というものも。こちらは、特定のスキルがとりあえずものになるまでの時間を指します。大学などの集中講義が1日8時間・5日間で1単位ですから、これもおおよそ納得できる数字です。
ちなみに単純に計算すると、とある職業や趣味でプロ並みに達するには500ほどのスキルを身につける必要がある、ということになります。
では、タイパなる概念を弄くるお歴々は、この20時間あるいは1万時間をどう考えるのでしょうか。
早回し省略動画(ファスト映画、著作権法的にアウトな判例が出ていたかと)10分で135分の映画を見た気になるような人と私では、どうも話が合いそうにないことは自覚しています。その上で敢えて言えば、120〜135分の映画1本を10分の動画に省略する作業にかかる時間は恐らくその十数倍〜数十倍かかかっているだろう、ということです。
さらに言えば、これらは全く消費者的な視点それのみからの「パ(フォーマンス)」であるということです。10分に省略した映画から得られるものは、単にその映画のあらすじを知っている、という以上の体験それのみだけになるのではないでしょうか。友人知人の会話について行けるだけ、という体験に10分もの時間を割くのは、それこそ「タイパ」が悪いような気がするのですが……
まあ、老害の繰り言と言われればそれまでですが。