知り合いのM氏から聞いた話
彼の学生時代のことだから、かなり昔の話である
当時、六畳一間のおんぼろアパート住まいだったM氏
毎日、アパートから5分ほどのところにある銭湯を利用していた
暑い夏には、一番風呂を目指して行ったが
さすがに誰もいないと思いきや、
先客が一人だけいた
70代くらいのおじいさん
その銭湯には、熱めの湯と、普通の湯の湯船が二つあったが
おじいさんは、いつも、熱い方のお湯に、あごまで浸かっていた
後から入ってきたM氏が上がるまで、ずっとそのまんま
のぼせないんだろうか?
M氏は、心配になったという
その後も銭湯の一番風呂で、何度か顔を合わせ、
なんとなく、
おはようございます
おう
と、挨拶を交わすようになった
ある時、M氏は、おじいさんに声をかけた
じいちゃん、背中くらい流すよ(おもいっきりタメ口)
すると、件のおじいちゃん
お、そうか? すまんな
と、湯船から上がってきた
上がって見たら
背中全体、お見事なくらいオールカラーで華やかなこと
ずっとお湯に浸かっていたので気付かなかったのだが
今さら後に引けないM氏
言葉も改めて、背中を流させていただいた
そんなこんなで
ある時、そのおじいさんが
何かの時には、これを出しなさい
と、自分の名刺をくれた
たいがいのことは、それを出せば済むはずだから…
……
たいがいのことって?
どういう時に使えって言うんだ?
モシカシテ水戸黄門ノ印籠的役割
とりあえず、名刺は大切に取っておいたが
幸い、使う機会はなく、学生生活を終えた
それをもらう前か後か聞きそびれたけれど
ある時、夜中にどやどやという音が聞こえてきて
いきなり部屋のドアが蹴破られ、数人の男が入ってきた
そのうちの一人が
真っ暗な中、大声で怒鳴りながら、
寝ていたM氏に馬乗りになって首をいきなり締めた
てめぇ、わかってんだろうな!
な、なんです???
この野郎、ふざけやがって!
と、他の男が部屋の明かりを点けた
パチッ
馬乗り男は、M氏の顔を覗き込んだ途端、一言
あ、間違えた!?
…まちがえた??
M氏、ぼーぜん…
(当然のことながら、M氏は
その筋には全然関係のない普通の学生)
男たちは、慌てて隣の部屋へ移動したが
隣部屋に住んでいた本命(?)は、既に逃げた後だった…
(M氏、どういう環境の所に住んでいたんだ?)
オレ、ここに居たら、
また間違われて、今度は殺されるかも?!
M氏は、すぐに引っ越しを決めたが
なぜか、引っ越しの際、
大家dさんに、壊されたドアの弁償金を要求された
むぅ
納得いかん…
その時に、その印籠を出せばねえ
(↑ いや、そうじゃなくて)
M氏の貴重なる(?)経験話でした
なかなかできない経験にポチッとお願いします(どこがフェレットネタじゃい?)