★コロナ騒動「西浦教授の「42万人」理解する鍵「R(実効再生産数)とは>
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★コロナ騒動「西浦教授の「42万人」理解の鍵「R(実効再生産数) 感染者数1月千人は3月百万人になるか
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2020-05-31
【文責:田村和広】
情報検証研究所のブログ
【コロナ騒動を理解する鍵「R(実効再生産数)」のおさらい】 ~国民に周知徹底すべき重要テーマ~
◆「R0」「一人の感染者が何人の人にうつすか」の平均値「基本再生産数」と「R」実効再生産数」 の関係
R0とRの関係は、「R=k×R0」と考えてよいでしょう。ここで「k」は係数です。「掛け目」と言ってもいいかもしれません。kも実際には、「接触の削減」や「ワクチン接種」などの「各種の対策」と、時間経過による未感染の人の規模の縮小に連動する関数ですが一旦定数と見做してください。
(かみ砕く部分に私の解釈が入っていますので専門家の精密な説明とは違いますのでご注意ください。)
◆具体的にはどういうこと?例えばずっと2人に感染させる」
例えば「R0=2」の感染症の場合で、「k=1」で不変、つまり「R0=R=2」で「ずっと2人に感染させる」として計算すると次のように感染が拡大します。
1人(第一世代)×2 ⇒ 2人(第二世代)
2人(第二世代)×2 ⇒ 4人(第三世代)
4人(第三世代)×2 ⇒ 8人(第四世代)
8人(第四世代)×2 ⇒ 16人(第五世代)
…
512人(第十世代)×2 ⇒ 1,024人(第十一世代)
◆一般化するとどういうこと?
R0=2の感染者数の増加具合を一般化すると、第n世代では、2の(n-1)乗の人数になります。
そのため、「指数関数的」増加と表現されるのです。
感染者数はn週間で、「1人⇒2のn乗人」へと指数関数的に(爆発的に)増加する。
ところで指数関数なので、Rの値が1未満であれば、世代(n)が進めば0に収束して行きます。つまり、時間の経過とともに感染症は収束して終わりとなります。
一世代を1週間とすると、第十一世代(10週間後)=2.5か月です。「2.5か月で1,024人ならばそんなに怖くないかな」と感じますが、本当にそうでしょうか。
◆「R=2」はどれくらい恐ろしいのか?
R=2の場合、1,000人に到達した日から2.5か月後には100万人を突破します。具体的に日本が確認感染者1,000人に達した3月21日(1月10日)からで仮計算します。(隔離などの効果を考慮しない場合)
3月21日(1月10日):1,000人。(その2.5か月後は6月5日(3月21日))
↓
6月 5日(3月21日):1,024,000人となります。
この場合、致死率は0.5%としても5,000人、現実の日本の数値5%超を適用すれば5万人です。
この規模医では療崩壊は必至ですから致死率は10%超(:スウェーデン12%などイタリア他欧州の実績値)となり10万人にも達する大惨事になり得る感染症です。これでまだ6月時点ですから感染はさらに広がり最終的には12,600万人×60%=7,560万人が感染するまで進み、致死率10%ならば75万人が亡くなるという大惨事になります
◆ R0=2.5の場合、なぜ「国民の60%」で感染が収束するのか?
収束するには、R<1となることが必要です。
ところでR=k×R0なので、R0=2.5の場合、R=k×2.5=2.5kです。
R<1という不等式を解くと、
R=2.5k<1 ⇒ k<1÷2.5=0.4=40%となります。
つまり、60%以上削減すれば、
k<100%―60%=40%となりRが1未満となります。
ワクチンや物理的接触削減が無い場合、感染対象者が60%減れば、つまり既に感染してもう再感染しない人が60%に達すれば、R=2.5×(100%―60%)=1となり、それ以上は感染が拡大しなくなります。
◆結局「42万人」とは何だったのか?
上記で恐ろしい計算をしましたが、これは「対策を何も取らない」“無為自然”状態だった時の最悪ケースです。西浦教授が示した「42万人」とは、まさにこの「何もしないなら最悪42万人死亡するような危険な感染症です」という意味でした。いわばベースラインとしての最悪ケースの提示でした。
この西浦教授
<西浦 博(にしうら ひろし、1977年 - )は、日本の医師、医学者、保健学者(理論疫学・医療管理学・衛生学)。学位は博士(保健学)(広島大学・2006年)。京都大学大学院医学研究科教授。
東京都立荏原病院内科・感染症科臨床研修医を経て、エバーハルト・カール大学テュービンゲン医系計量生物学研究所研究員、ユトレヒト大学博士研究員、香港大学公衆衛生大学院助理教授、東京大学大学院医学系研究科准教授、北海道大学大学院医学研究院教授などを歴任した。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E6%B5%A6%E5%8D%9A>
の「42万人」ケースの主要な設定条件として「R=2.5」がありました。これは上記の計算仮定R=2よりも大変厳しい数値です。2か月弱で1,000倍になります。先程の計算ならば6月5日が5月中旬に早まります。なぜこの厳しい数値を適用したかというと、「実際にドイツの状況に基づく数値」であり、「欧州のような最悪の状況になるようなことはあってはいけない」という西浦教授の考えが込められていたようです。(会見でそのような趣旨の理由説明をしていました。)
◆ 「8割削減」とは何を目指していたのか?
今回専門家会議では、「8割削減」を掲げておりますが、その意味は、「k=100%―80%=20%」ということです。「R0は2.5もある感染力の高いウィルスなのにワクチンもないので、感染を収束させるためには接触機会を物理的に減らすしかない。そのためには、『8割削減』で感染力も本来の能力の2割に低下させて、実効再生産数を『0.2×2.5=0.5』とすることで感染を収束させるしかない。本当は『6割削減』で達成できるのだが、実際には接触を減らせない仕事などもあるので平均で6割を達成するためには削減可能な国民には『8割削減』をお願いするしかない」という意味でした。
加えて西浦教授は「社会全体で8割ほど減らせば、急激に感染者が減少して収まることが分かった。7割でも減少するが、収束にはより時間がかかる」※とも説明しておりました。
(※読売新聞4月8日より引用https://www.yomiuri.co.jp/politics/20200408-OYT1T50083/)
つまり、「8割削減戦術」とは、
「現状では未だワクチンがないので、コントロール可能な接触削減、つまり「8割削減」を掲げ実際には「6割以上の削減」を達成することで、R(実効再生産数)を1未満に抑え込み感染を収束させる」
という作戦でした。この作戦自体は極めて合理的です。
◆ ではなぜ「緊急事態宣言は不要だ」と言われるのか?
現実には入国禁止措置や自粛活動の効果などだけでも、既にR<1(実効再生産数が1未満)となっていた可能性が高いことが見えてきました。これは、R0が実際の日本では2.5よりも小さかったこと(実際は1.7程度?)と、自粛活動やクラスター潰しの効果でkが十分小さくなり実効再生産数Rが1未満だった可能性が高いということです。そのため「緊急事態宣言がなくても収束したのではないか」とみられているのです。ただしそれがデータで判るようになったのは判断を迫られた時点よりも2週間以上後のことなので非難は行き過ぎであり、実際には再拡大などへの警戒からも必要だったと考えるべきと思います。
譬えるなら「既に致命的な打撃を受けた敵艦隊に、そうとはわからずその後全艦を撃沈するまでに撃った追撃弾のせいで、撃滅した殊勲の艦隊参謀を非難すべきか」ということではないでしょうか。(個人的な感想です。)
◆ 孔子曰わく、必ずや名を正さんか
物に名付けられた言葉とその指し示す意味を正しく一致させることが治世の第一歩と、約2500年前に孔子が言っておりますが現代でも同じではないでしょうか。(個人的感想)