米朝首脳会談の「落としどころ」は日本にとって最悪だった

2018年06月14日 | 国際紛争 国際政治 
米朝首脳会談の「落としどころ」は日本にとって最悪だった
6/14(木) 6:00配信 ダイヤモンド・オンライン
米朝首脳会談の「落としどころ」は日本にとって最悪だった
Photo:AFP/AFLO
 「大山鳴動して鼠一匹」とは、まさにこれだ。米国のドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の米朝首脳会談が行われた。両首脳は、(1)「米国と北朝鮮の新たな関係の樹立を約束」(2)「朝鮮半島の持続的かつ安定的な平和構築に共に努力」「北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に向けた作業を行うと約束」「戦争捕虜、戦争行方不明者たちの遺骨収集を約束」の4項目で合意し、文書に署名した。しかし、「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」(CVID)という表現は明記されず、全ての項目において、「いつまでに、どのように実現するか」の具体策は示されなかった。

 本連載が主張してきた「米国には決して届かない短距離・中距離の核ミサイルが日本に向けてズラリと並んだ状態でとりあえずの問題解決とする」(本連載第166回)という状況が出現する。「史上最大の政治ショー」が起こるかのように大騒ぎした割には、何一つ決まらなかった。「落としどころ」は至って平凡で、日本にとっては最悪なものとなった。

● トランプ大統領は「拉致問題提起」を 日本からカネを引き出すために利用した?

 首脳会談終了後の記者会見で、トランプ大統領は「完全な非核化」実現のために「圧力は継続する」と述べた。また、首脳会談で「日本人拉致問題」を提起したという。安倍晋三首相はこれを高く評価し、感謝の意を表した。後は、首相自らが動いて「日朝首脳会談」を開催し、拉致被害者を取り返すだけとなった。

 だが、トランプ大統領は記者会見で「非核化のための費用は、日本と韓国が出す」とも述べた。「圧力を継続」と言いながら、非核化のためという名目で日本に「カネを出せ」とクギを刺したということだ。これで安倍首相は日朝首脳会談に「手ぶら」では行けなくなった。

 安倍首相は、日朝首脳会談の開催前から、拉致問題を首脳会談で提起するように、トランプ大統領に積極的に働きかけてきた。そして、そのことを日本国民に対してアピールし続けてきた。トランプ大統領も安倍首相に会うたびに「シンゾー、任せろ。必ず金正恩に話す」と応え、実際に会談で提起したという。拉致被害者の会の皆様は「これが最後のチャンス」と切なる思いで見守っている。いまさら安倍首相が平壌には行かないと言い出せない状況になっている。

 この連載は、「北朝鮮との融和」は拉致問題を動かす好機と指摘してきた(前連載第1回)。そして、今回はこれまでとは違い、本当に拉致被害者を少なくとも数名取り戻せるかもしれないと考えている(第181回)。実際に、そういう状況が出現したといえるかもしれない。だが、それは日本が「非核化のためという名目でいくらカネを出すのか」を提案することと、バーターとなっているのではないだろうか。

 日朝首脳会談で、北朝鮮に非核化のためのカネを出すことを決めれば、その見返りに拉致被害者が2~3人帰国するかもしれない。もしそうなったら、日本の世論は歓喜するだろう。だが、北朝鮮に渡すカネが、本当に非核化のために使われるかどうか、わかりはしない。逆に、日本が渡すカネが「最大限の圧力」が形骸化するきっかけとなる懸念もある。しかし、その時、拉致被害者を返してもらった日本政府と国民は、北朝鮮に面と向かって厳しく批判できるだろうか。

今の北朝鮮にとって、拉致被害者を2~3人返すことなど、たやすいことだ。金委員長は米朝首脳会談の実現によって、長年の「国家的悲願」であった「米国による体制保証」をトランプ大統領から引き出したのだ。それに比べたら、拉致問題など、言葉は悪いが実に小さなことだ。

 「拉致問題は解決済み」という立場の北朝鮮にとって、さらなる拉致の事実を認め、日本に謝罪することは「国家的な恥」ではある。だが、米国による体制保証という「国家的悲願」の実現と比べれば、実に小さな「恥」である。

 金委員長が安倍首相に対して「祖父・父の時代に、恥ずかしい振る舞いがあった。だが、私はそれを解決する」と言えば、朝鮮中央放送が「金委員長が寛大な心で偉大な決断をされた」と大絶賛するだろう。それで安倍首相からカネを引き出せるならば、簡単なことだ。

 トランプ大統領が米朝首脳会談で拉致問題を提起した。それは「圧力一辺倒」で「完全なる非核化」を求め続ける安倍首相にカネを出させるために、周到に仕組んだ罠だったように思われてならない。

● 米国、中国、韓国、ロシアの 「完全な非核化」に対する本音

 日本を除く、「北朝鮮核ミサイル開発問題」の関係国である、米国、中国、韓国、ロシアは、口を開けば「完全な非核化」と言うが、実際は非核化に強い関心はない。米国は「アメリカファースト」であり、既に米国に届くICBMの開発を北朝鮮に断念させて、核実験場を爆破させた。それで目的達成なのである(第184回)。その意味で、トランプ大統領は米朝首脳会談に、「うまくいけば、ノーベル平和賞が取れるかな」という程度の、軽いノリで臨んでいた。

 しかも、ノーベル賞を取るのに、北朝鮮の完全な非核化までは実は必要なく、「朝鮮戦争の終結」とそれに続く「在韓米軍の撤退」で十分だと考えている。在韓米軍の撤退は、時期はともかくとして、既に米国では決定事項である(第180回・P.5)。しかも、トランプ大統領は「経費節減にいいことだ」と言い切っているのだ。その上、米朝首脳会談では「米韓軍事演習」の中止にまで言及した。

 要するに、トランプ大統領は「アメリカファースト」と「ノーベル平和賞」しか関心がなく、「完全な非核化」は、「金委員長と話はつけた。後は、やりたければシンゾーがカネを出してやれ」と言って、無関心なのである。

一方、ロシア・中国は、本音の部分では、北朝鮮が核兵器を持つことは悪いことではないとさえ考えている。東西冷戦期から、中国・ロシアは「敵国」である米国・日本と直接対峙するリスクを避ける「緩衝国家」として北朝鮮を使ってきた。米朝首脳会談でトランプ大統領が北朝鮮の体制を保証したことで、「緩衝国家」は今後も存続するのだ。

 その上で「緩衝国家」が核兵器を保有し、それを日本に向けることは、北東アジアの外交・安全保障における中国・ロシアの立場を圧倒的に強化することにつながる。換言すれば、緩衝国家・北朝鮮の体制維持と核武装は、中国・ロシアにとって「国益」だと言っても過言ではない(第166回)。

 韓国は、同じ民族であり、統一すれば領土となる土地に、北朝鮮が核を撃つわけがないと思っている。核はあくまで日本に向けられるものであり、それは悪いことではないと考えるだろう。

 トランプ大統領が言及したように、「在韓米軍」の撤退が、韓国が中国の影響下に入ることを意味し、北朝鮮主導の南北統一の始まりになるのかもしれない。北朝鮮よりも圧倒的に優位な経済力を持ち、自由民主主義が確立した先進国である韓国が、最貧国で独裁国家の北朝鮮の支配下に入ることはありえないと人は言うかもしれない。しかし、明らかに「左翼」で「北朝鮮寄り」の文大統領にとっては、それは何の抵抗もないどころか、むしろ、歓迎かもしれないのだ(第180回・P.6)。

● 日朝首脳会談をきっかけに なし崩し的な経済協力が始まる

 少なくとも、文在寅大統領は、南北首脳会談で金委員長が求めてきた経済協力を進めるだろう。一応、韓国も「完全な非核化」まで圧力を継続するという立場だが、日朝首脳会談で安倍首相が非核化のためのカネを出すことになれば、後はなし崩しとなる。

 北朝鮮の後見役を自認する中国が、米朝首脳会談での融和の進展を受けて、非核化のための圧力の有名無実化に動くことは自然である。そして、日本とともに「蚊帳の外」とされてきたロシアにとっては、北朝鮮への経済協力こそ蚊帳の外から脱する唯一の方法だ。

米朝首脳会談前にウラジーミル・プーチン大統領と安倍首相の日露首脳会談が行われた。日ロ経済協力は着々と進んでいる(第147回)。プーチン大統領から、「日ロ経済協力を発展させて、ロシア、日本、北朝鮮の『環日本海経済圏』をつくろう」とぶち上げられたらどうだろう。北方領土問題を抱える日本は、それを断れるのだろうか。

● 拉致問題の進展は完全な非核化を 遠のかせるかもしれない

 「日本人拉致問題」の解決は、拉致被害者とその家族の皆様にとっては、まさに「最後のチャンス」である。できることならば、横田めぐみさんをはじめ、全員が帰国できることを願ってやまない。

 安倍首相は、拉致問題についての日本国民の期待を高めてしまった。いまさら「平壌に行かない」とは言えない。しかし、平壌に行ったら、日本は北朝鮮の非核化という名目で、カネを出さなければならないことになる。「拉致問題」は完全にトランプ大統領と金委員長に、いいように利用されたのではないだろうか。

 拉致問題の進展は、北朝鮮の完全な非核化の実現を遠のかせてしまうという、相反する結果をもたらしてしまうのかもしれない。

 (立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)


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大気で作るガソリンを開発、実用化へ道筋、カナダ

2018年06月14日 | Science 科学
大気で作るガソリンを開発、実用化へ道筋、カナダ
6/14(木) 7:40配信 ナショナル ジオグラフィック日本版
大気で作るガソリンを開発、実用化へ道筋、カナダ
大気から回収した二酸化炭素で作った液体燃料。(PHOTOGRAPH COURTESY CARBON ENGINEERING)
夢の「炭素フリー」燃料、低価格化が見えてきた
 家の近くのガソリンスタンドで、「レギュラー、ハイオク、それとも炭素フリーにしますか」と聞かれる日が来るかもしれない。

写真で見る「ドイツのエネルギー革命」10点

 カナダのカーボン・エンジニアリング社は、低コストで大気から二酸化炭素を回収し、それを水素と合成して液体燃料を製造することに成功、エネルギー専門誌「Joule」に論文を発表した。

カーボン・ニュートラル
 これは、2つの点で有意義な技術である。一つは大気中の二酸化炭素を回収できること、もう一つは回収した二酸化炭素を使ってガソリンや軽油、ジェット燃料を製造できることだ。大気で作った燃料なら、二酸化炭素を排出してもプラスマイナスゼロ、つまり「カーボン・ニュートラル」だ。

「気候変動の影響から地球を救うことはできないまでも、低炭素経済の実現へ近づく大きな一歩となるでしょう」と、論文著者であるデビッド・キース氏は語る。同氏は米ハーバード大学応用物理学教授で、カーボン・エンジニアリング社の創立者でもある。

 大気から二酸化炭素を回収し、燃料を作るという技術自体画期的ではあるが、キース氏によると、それ以上に3000万ドルの投資、8年におよぶ研究、そして正確な工程を練り上げるための「数万という細かい調節」が必要だったという。

 二酸化炭素の回収にかかる費用を1トンにつき100ドル以下に抑えることも重要だった。カーボン・エンジニアリング社は、2015年からカナダのブリティッシュ・コロンビア州スコーミッシュで実験プロジェクトを実施、既存の工程を応用しつつ、規模を拡大して費用を大幅に削減した。

「論文では、年間100万トンの二酸化炭素を回収できる本格的な工場にかかる経費とエンジニアリングについて説明されています」と、キース氏は言う。

 これまで、二酸化炭素回収には少なくとも1トンにつき600ドルかかると考えられてきた。大量に回収するとなると、費用がかかりすぎて実際的ではない。世界では、化石燃料の燃焼によって毎年400億トン近くの二酸化炭素が大気に排出されている。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によれば、地球の気温上昇を2度未満に抑えるという国際的な目標値を維持するには、何らかの方法でこの二酸化炭素を大量に回収して永久的に貯留する技術が必要であるとしている。

 だが、1トンにつき100ドルでも、二酸化炭素を買い取りたいという業者は少ない。そこでカーボン・エンジニアリング社は、カーボン・ニュートラルな液体燃料を作ることにした。回収された二酸化炭素を、水を電気分解して得られた水素と合成する。大量の電力が必要だが、スコーミッシュの試験プラントでは、再生可能な水力発電を利用している。

 その結果でき上がった合成燃料は、ガソリン、軽油、ジェット燃料として混合してもよいし、それだけで使うことも可能だ。これを燃焼すると、排出される二酸化炭素の量は燃料を製造するのに使われた量と同等になるため、カーボン・ニュートラル(炭素中立)になるという仕組みだ。


化石燃料と競争できるか?
 同社最高経営責任者のスティーブ・オールダム氏はインタビューのなかで、「今のところは1バレルの原油よりも費用がかかりますが、カリフォルニア州のように低炭素燃料基準があるような地域で、排出量1トンにつき200ドルの『炭素価格』がつくようになれば、十分競争できると思います」と語った。

「炭素価格」とは、二酸化炭素を排出する企業がその排出量に応じて支払うコスト。ブリティッシュ・コロンビア州では、1トンにつき35カナダドルの値が付き、炭素税として徴収されている。カナダ全体では、2018年9月に10ドルと定められ、2022年にはそれが50ドルにまで引き上げられる。米国で炭素税を導入している州はないが、ワシントン州は排出量1トンにつき「炭素汚染料」として15ドルを徴収する発議案を住民投票にかける予定だ。

「とても楽しみなプロジェクトです。Joule誌で示されている数字は期待が持てそうです」と、1990年代に大気から二酸化炭素を回収するという概念を提唱した米アリゾナ州立大学ネガティブ・カーボン・エミッション・センターのクラウス・ラックナー氏は言う。カーボン・エンジニアリング社は、それが実現可能であり、費用対効果も高いことを証明した。産業界にとって非常に重要な一歩であると、ラックナー氏はインタビューで語る。

 次の段階は、スケールの拡大だ。「炭素フリー」燃料を大量に生産する本格的な工場の数を増やしていけば、さらなる低コスト化が図れる。太陽光や風力エネルギーも、生産規模の拡大により数十年の間に大幅にコストが下がった。価格が下がれば、参入者も増えるだろう。

「(気温上昇を2度未満に抑えるには)この産業が1兆ドル規模になる必要があります。途方もない規模と思われるかもしれませんが、今の航空産業の方がはるかに大きいですから」と、ラックナー氏。

 カーボン・エンジニアリング社は、低コストの再生可能エネルギーを使って1日に200バレルの合成燃料を製造する大規模工場を建設中である。2020年の操業開始を見込み、この技術をライセンス化することも検討中だ。

「規模を拡大して、世界的な市場にすることは十分可能だと思います」と、オールダム氏。「必要な原料は空気と水だけ。それにわずかな電力さえあれば」。そして、この技術のライセンスを取ることだ。

文=Stephen Leahy/訳=ルーバー荒井ハンナ
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トランプ氏「脅威もうない」=米朝融和で非核化置き去りも―国際包囲網に緩みか

2018年06月14日 | 国際紛争 国際政治 

トランプ氏「脅威もうない」=米朝融和で非核化置き去りも―国際包囲網に緩みか

6/13(水) 18:04配信

時事通信
トランプ氏「脅威もうない」=米朝融和で非核化置き去りも―国際包囲網に緩みか

トランプ米大統領は13日、シンガポールで12日行われた史上初の米朝首脳会談で北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との良好な関係を築き「非核化で進展があった」と成果を強調した=12日撮影

 【シンガポール時事】トランプ米大統領は13日、シンガポールで12日行われた史上初の米朝首脳会談について、ツイッターで、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との良好な関係を築き「北朝鮮の核の脅威はもはやない」と成果を強調した。

〔写真特集〕米朝首脳会談~史上初、トランプ氏と金正恩氏~

 だが、融和ムードだけが先行し、最大の焦点だった非核化が置き去りになる懸念もある。

 トランプ氏は帰国直後に「オバマ前大統領は、北朝鮮が米国の最大かつ最も危険な問題だと言ったが、もはや違う」ともツイートし、首脳会談の結果を自画自賛した。ベーダー元国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長は、トランプ氏の会談成果として、朝鮮半島での戦争危機の低下や、核・ミサイル実験の停止などを挙げ、朝鮮半島の平和維持という点で一定の評価を与える。

 だが、共同声明では「朝鮮半島の完全な非核化」を確認したものの「米国の受け入れられる唯一の結果」(ポンペオ国務長官)とされた「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」は盛り込まれなかった。検証方法や期限などを詰められるかは、来週以降、北朝鮮側との協議を行うポンペオ氏の外交努力に懸かっている。

 トランプ氏は、核・ミサイル実験凍結や核実験場閉鎖を成果と誇示し「進展があった」と主張しているが、既に保有する核兵器の廃棄が議論されないまま融和ムードが広がれば、北朝鮮を核保有国として事実上認めることにつながりかねない。

 一方、北朝鮮が求めてきた体制保証については、トランプ氏が「北朝鮮への安全の保証の提供」を約束。共同声明には「米朝が朝鮮半島の永続的かつ安定した平和体制の構築」に向けて努力することなども明記された。

 米朝の融和ムードを受けて、中韓両国政府が北朝鮮との協力を活発化させる可能性が出てきた。米国が構築した北朝鮮に対する国際包囲網が緩むのは避けられず、非核化への圧力が低下する恐れもある。 


さりとて、、、日本じゃどうにもできないのだから仕方ない。

エリンギはトランプの大統領任期切れを狙うだろう。その間、銭や資源を頂くわけだ。

瓢箪島は安倍がのこのこ出ていきタンマリ血税を騙し取られる「南朝鮮の10億どころではない」

まあ、トランプ後の大統領が誰になるかにかかってる訳でアメリカが時刻のダメージを覚悟で北朝鮮に核を打ち込めば全ては完了するが、アメリカは時刻の民間犠牲者が出てまで実行などしない。

こうなると日本は核武装しなければ防衛ができない事態となる。




「対日請求権200億ドル、北朝鮮再建の『種銭』可能」

6/14(木) 9:05配信

中央日報日本語版
「対日請求権200億ドル、北朝鮮再建の『種銭』可能」

1960年代の昭陽江ダム建設現場。当時対日請求権を行使して受け取った資金で用意したトラックなど重装備が活用された。(写真=韓国水資源公社)

第2次世界大戦が終わった1945年。連合軍は敗戦国である日本に大規模な賠償責任を課した。戦争で破壊された被害国のインフラを再建するのに日本が直接資金を支援しろという意味でだ。日本の侵略で被害を受けたアジア諸国は順に賠償金を受ける。

1954年にビルマ(現ミャンマー)が2億ドル、56年にフィリピンが5億5000万ドル、58年にインドネシアが2億2300万ドルを順に受け取った。そして65年に韓国は3億ドルを受け取る。日本に侵略被害補償金を請求する権利、対日請求権を行使した事例だ。

サムスン証券は、北朝鮮が対日請求権を行使し200億ドル(約2兆2061億円)を受け取ることができ、これを経済再建の種銭として活用できという分析を出した。同社リサーチセンターの北朝鮮投資戦略チームが13日に刊行した報告書の内容だ。

サムスン証券はこの報告書で「過去韓半島(朝鮮半島)統一費用の算定は統一ドイツ方式を前提にした。しかし米国などが北朝鮮の体制を認めた状況で当分は(ドイツのような)吸収統一に基づいた費用算定は非合理的」と指摘した。

その上で「北朝鮮再建費用は南北間の漸進的な経済統合を前提に推定するのが望ましい。一定期間北朝鮮の経済を再建するのに必要とされる経済的投資費用などを含まなければならない」と主張した。経済統合のほかに体制転換費用と社会的混乱、南北住民間の対立費用などを包括的に含む既存の統一費用算定は合わないという分析だ。

サムスン証券は北朝鮮の対日請求権に注目した。報告書で「今後日朝修交過程で対日請求権がイシューとして浮上する見通し。北朝鮮がこの資金を受け取ることになるならば経済再建の種銭として活用できるだろう」と指摘した。

北朝鮮が受け取れる対日請求権金額に対する予想は入り乱れている。サムスン証券は「北朝鮮が300億~400億ドルを要求したという説があり、2002年の日朝平和宣言では100億ドル水準で日本が提案したという報道があった」と伝えた。16年前の100億ドルを消費者物価、購買力を基に現在の価値に換算すれば200億ドル水準だとサムスン証券は算出した。

ただサムスン証券は「事前の徹底した準備と計画後に効率的に資金を使う必要がある。また可能ならば資金受領期間の短縮を要求し、初期に受け取れる資金の割合を拡大する戦略が有利だろう」と提案した。もちろん「請求権資金をレバレッジとして日本の影響力が過度に拡大する可能性など懸念もある」と指摘した。

この報告書を作成したサムスン証券のユ・スンミン北朝鮮投資戦略チーム長は、「今回の米朝会談で北朝鮮は後戻りできない変化の橋に入ったものと評価する。体制の安定を維持して経済開発を推進するために特区と開発区を中心に経済開発を集中的に推進すると予想する」と話した。

北朝鮮が一部特区を中心に改革・開放に向かう理由について、「体制の安定を維持しながら成果を出そうとする意図」とサムスン証券は観測した。また、主要特区の中で金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長の故郷である元山(ウォンサン)が注目されるかもしれないと予想した。
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