「ダークナイト」で空前の大ヒットを記録したクリストファー・ノーランが自分のファミリー(=一家)を使ってノーラン自ら書き下ろしたオリジナル脚本で前代未聞のSFクライム・アクション超大作「インセプション」を作り上げました。
監督: クリストファー・ノーラン
製作: クリストファー・ノーラン、エマ・トーマス(ノーランの実妻:「ダークナイト」「プレステージ」「バットマン ビギンズ」「フォロウィング」
製作総指揮: トーマス・タル(「ダークナイト」)
脚本: クリストファー・ノーラン
撮影: ウォーリー・フィスター (「ダークナイト」「プレステージ」「バットマン ビギンズ」「インソムニア」「メメント」)
編集: リー・スミス (「インセプション」「ダークナイト」「プレステージ」「バットマン ビギンズ」
音楽: ハンス・ジマー(「ダークナイト」)
クリストファー・ノーランが製作・監督・脚本・編集・撮影した処女作「フォロウィング」を除くすべての映画を見ましたが、共通しているのが、暗い心の内を敢えて覗こうとしているところです。「ダークナイト」では登場人物に自らの良心を問いただし、揺れ動く人間的な心の葛藤をクライムアクション映画という異質な映画で描いて見せました。私が好きな「プレステージ」では19世紀末のロンドンを舞台に、マジックに人生の全てを捧げる2人の天才マジシャンの壮絶な確執が、驚愕の顛末を招いていく様を幻想的に描きました。二人の心の内を覗いているうちに観客は見事に騙されていたことに気づくラストは見事というほかありません。「メメント」は、前向性健忘という記憶障害に見舞われた男が、最愛の妻を殺した犯人を追う異色サスペンスでした。主人公の心理を再現するため、時間軸を新たに組み合わせ複雑な脚本を衝撃のラストへと観客を導く力は、今やハリウッドNO.1と云って過言ではありません。
ノーラン監督は一映画ファンとしては007シリーズがお好きなそうで、特にボンドが自分の結婚式直後に殺された新妻を抱きしめるシーンで終わる「女王陛下の007」がお気に入りだそうです。また難解と言われているスタンリー・キューブリック作品も大好きだとか。今までの映画を見るとクライム・アクション、サスペンス映画でありながら「女王陛下の007」のような純愛的展開がベースにあり、またキューブリックのように難解な脚本ですが、巨匠ほど観念的ではなく、複雑過ぎることはありません。独創的で非現実的でありながら共感できるところがどの脚本も秀逸です。
「インセプション」でもディカプリオ演じる主人公の純愛がベースにあり、夢の中であるという意識があるにも関わらず、愛する妻に銃を向けられないでいる彼の愛と切なさが伝わってきます。クライムアクション映画としては「ダークナイト」同様に異質な映画と云えます。しかも「七人の侍」のように最高のスペシャリストを集める娯楽映画的展開、<設計士>・<偽造士><調合師>らと一緒にターゲットの夢の中に潜入していく様は、古いSF「ミクロの決死圏」まで彷彿させました。しかし、ノーランは想像を遥かに越えたかつてない映像で観客を引き込んでいきます。まさにマジックです。しかも夢のまた夢、そのまた夢へと私たちを引き吊り込んでいく展開は「プレステージ」と同じようにとても緊迫感がありサスペンスフルです。
ラストシーンは現実なのか、小さなコマが回り続けるのは夢の世界という映画の中のルール(=マジック)に、いつの間にか観客は引きずられていきます。このような巧みな脚本に心から感服してしまいました。かつての名画を彷彿させながらも、想像もできない世界へと私たちを誘い、しかも前代未聞のジェットコースターの行き着く先は現実的な<情>の世界でした。結末になってようやく私の心を和ませてくれました。きっとノーランの本質は愛を信じ、心優しい人であるに違いありません。「インセプション」の製作をはじめ、「ダークナイト」「プレステージ」「バットマン ビギンズ」「フォロウィング」の製作に参加している妻のエマ・トーマスの影響があるのかもしれません。
「ダークナイト」でもかつてない脚本に驚愕しましたが、今回はついに感服するに至りました。クリストファー・ノーランは実に頭のいい人です。まるで優秀な脳外科医、数学者のようでありながら、様々な非現実的なマジックを散りばめて観客を別世界へと連れていく展開(=脚本)は、今までのどの監督にもない能力と云っていいでしょう。映像も音響も編集もピカイチのファミリーと云えます。私の好きな映画「プレステージ」をまだ観賞していなければ、是非お奨めしたいと思います。幻想的世界にどっぷり浸かりきっていたマジックに、見事に填められたという驚愕と感動を味わえるはずです。
今年今まで見た映画の中ではピカイチの作品です。来年のアカデミー賞レースには多数獲得が予想されます。
グッドラック感動のお奨め度:(91点)
重要・感動面積<81>
1)オリジナルティーあふれるストーリーと意外な展開は説得力があり、
しかも様々な愛と哀愁・切なさが含まれている。(20点満点-19)
2)考え抜かれた自然なセリフ(脚本)に何度も胸を打つ(10点満点-9)
3)今までにない主演者の演技とストーリー展開での登場人物の成長・変貌
・怒り・悲しみに胸を打つ(10点満点-9)
4)助演者・脇役らに存在感があり、各シーンに溶け込み表情
・セリフを自分ものにしている(10点満点-8)
5)動と静の音楽が各シーンの感動を増幅させて、メインテーマは心に残る(10点満点-8)
6)撮影が新鮮で記憶に残るシーンが随所にある(10点満点-10)
7)テンポのいい編集は心地よい緊張と緩和を生み、
感動のラストシーンへ導いていく(10点満点-9)
8)違和感のない特殊効果は映画の質を落とさずリアリティーを感じる or
凝った美術・衣装・時代考証は違和感がなく自然で美しい (10点満点-9)
9)総合点:この映画・DVD・ビデオを見てもがっかりしない、満足度、お奨め度(10点満点-10)
監督: クリストファー・ノーラン
製作: クリストファー・ノーラン、エマ・トーマス(ノーランの実妻:「ダークナイト」「プレステージ」「バットマン ビギンズ」「フォロウィング」
製作総指揮: トーマス・タル(「ダークナイト」)
脚本: クリストファー・ノーラン
撮影: ウォーリー・フィスター (「ダークナイト」「プレステージ」「バットマン ビギンズ」「インソムニア」「メメント」)
編集: リー・スミス (「インセプション」「ダークナイト」「プレステージ」「バットマン ビギンズ」
音楽: ハンス・ジマー(「ダークナイト」)
クリストファー・ノーランが製作・監督・脚本・編集・撮影した処女作「フォロウィング」を除くすべての映画を見ましたが、共通しているのが、暗い心の内を敢えて覗こうとしているところです。「ダークナイト」では登場人物に自らの良心を問いただし、揺れ動く人間的な心の葛藤をクライムアクション映画という異質な映画で描いて見せました。私が好きな「プレステージ」では19世紀末のロンドンを舞台に、マジックに人生の全てを捧げる2人の天才マジシャンの壮絶な確執が、驚愕の顛末を招いていく様を幻想的に描きました。二人の心の内を覗いているうちに観客は見事に騙されていたことに気づくラストは見事というほかありません。「メメント」は、前向性健忘という記憶障害に見舞われた男が、最愛の妻を殺した犯人を追う異色サスペンスでした。主人公の心理を再現するため、時間軸を新たに組み合わせ複雑な脚本を衝撃のラストへと観客を導く力は、今やハリウッドNO.1と云って過言ではありません。
ノーラン監督は一映画ファンとしては007シリーズがお好きなそうで、特にボンドが自分の結婚式直後に殺された新妻を抱きしめるシーンで終わる「女王陛下の007」がお気に入りだそうです。また難解と言われているスタンリー・キューブリック作品も大好きだとか。今までの映画を見るとクライム・アクション、サスペンス映画でありながら「女王陛下の007」のような純愛的展開がベースにあり、またキューブリックのように難解な脚本ですが、巨匠ほど観念的ではなく、複雑過ぎることはありません。独創的で非現実的でありながら共感できるところがどの脚本も秀逸です。
「インセプション」でもディカプリオ演じる主人公の純愛がベースにあり、夢の中であるという意識があるにも関わらず、愛する妻に銃を向けられないでいる彼の愛と切なさが伝わってきます。クライムアクション映画としては「ダークナイト」同様に異質な映画と云えます。しかも「七人の侍」のように最高のスペシャリストを集める娯楽映画的展開、<設計士>・<偽造士><調合師>らと一緒にターゲットの夢の中に潜入していく様は、古いSF「ミクロの決死圏」まで彷彿させました。しかし、ノーランは想像を遥かに越えたかつてない映像で観客を引き込んでいきます。まさにマジックです。しかも夢のまた夢、そのまた夢へと私たちを引き吊り込んでいく展開は「プレステージ」と同じようにとても緊迫感がありサスペンスフルです。
ラストシーンは現実なのか、小さなコマが回り続けるのは夢の世界という映画の中のルール(=マジック)に、いつの間にか観客は引きずられていきます。このような巧みな脚本に心から感服してしまいました。かつての名画を彷彿させながらも、想像もできない世界へと私たちを誘い、しかも前代未聞のジェットコースターの行き着く先は現実的な<情>の世界でした。結末になってようやく私の心を和ませてくれました。きっとノーランの本質は愛を信じ、心優しい人であるに違いありません。「インセプション」の製作をはじめ、「ダークナイト」「プレステージ」「バットマン ビギンズ」「フォロウィング」の製作に参加している妻のエマ・トーマスの影響があるのかもしれません。
「ダークナイト」でもかつてない脚本に驚愕しましたが、今回はついに感服するに至りました。クリストファー・ノーランは実に頭のいい人です。まるで優秀な脳外科医、数学者のようでありながら、様々な非現実的なマジックを散りばめて観客を別世界へと連れていく展開(=脚本)は、今までのどの監督にもない能力と云っていいでしょう。映像も音響も編集もピカイチのファミリーと云えます。私の好きな映画「プレステージ」をまだ観賞していなければ、是非お奨めしたいと思います。幻想的世界にどっぷり浸かりきっていたマジックに、見事に填められたという驚愕と感動を味わえるはずです。
今年今まで見た映画の中ではピカイチの作品です。来年のアカデミー賞レースには多数獲得が予想されます。
グッドラック感動のお奨め度:(91点)
重要・感動面積<81>
1)オリジナルティーあふれるストーリーと意外な展開は説得力があり、
しかも様々な愛と哀愁・切なさが含まれている。(20点満点-19)
2)考え抜かれた自然なセリフ(脚本)に何度も胸を打つ(10点満点-9)
3)今までにない主演者の演技とストーリー展開での登場人物の成長・変貌
・怒り・悲しみに胸を打つ(10点満点-9)
4)助演者・脇役らに存在感があり、各シーンに溶け込み表情
・セリフを自分ものにしている(10点満点-8)
5)動と静の音楽が各シーンの感動を増幅させて、メインテーマは心に残る(10点満点-8)
6)撮影が新鮮で記憶に残るシーンが随所にある(10点満点-10)
7)テンポのいい編集は心地よい緊張と緩和を生み、
感動のラストシーンへ導いていく(10点満点-9)
8)違和感のない特殊効果は映画の質を落とさずリアリティーを感じる or
凝った美術・衣装・時代考証は違和感がなく自然で美しい (10点満点-9)
9)総合点:この映画・DVD・ビデオを見てもがっかりしない、満足度、お奨め度(10点満点-10)