6番でバーディを奪ったものの、7番でボギー。9番パー5では第3打をグリーンオーバーしピンチに見舞われた。だが、キッチリ寄せてパーセーブ。流れを取り戻すと、11番では直角に曲がるフックラインを読み切ってバーディ、13番でもスコアを伸ばし、タイガーは通算21アンダーと快調に突っ走った。
14番からの3連続ボギーでスコアこそ落としたが、それでも通算19アンダーでホールアウト。2位の今田竜二と8打差の圧勝で、ツアー62勝目を飾った。この勝星はサム・スニード(米)の82勝、ジャック・ニクラウス(米)の73勝、ベン・ホーガン(米)の64勝に続く史上4位タイで、御大アーノルド・パーマー(米)に並ぶ大記録。同時に、同一大会4連覇は2度目(1度目はアーノルド・パーマー招待)となり、こちらは史上初の快挙となった。(スポマガゴルフ編集部よりの転記)
今年もタイガー・ウッズは好調のようだ。2位なった今田竜二のことを少しだけ紹介しておきましょう。1976年生まれでタイガーより1歳若い。14歳の時、単身で日本を離れ、アメリカ・フロリダ州タンパに引っ越した。15歳でアメリカのジュニア・トーナメントに初優勝を記録し、「ロレックス・ジュニア年間最優秀選手賞」を受賞。全米アマチュアランキングでタイガー・ウッズに次ぐ2位になったこともある。こんな彼の経歴で一番の注目したのは、14歳で単身アメリカに渡った度胸の良さだ。中学卒業後、どんなにゴルフが好きな少年でも単身渡米するのはなかなかできるものではない。昨夜もインタビューに笑顔で答えていたが、流ちょうな英会話もさることながら、清々しい笑顔に心洗われる思いがした。(本当にいい気性なんだなと思わせる笑顔)旧知の仲のタイガーに次ぐ2位(最終日はタイガーイーブン、今田は9バーディ、4ボギーの5アンダーで最終日だけではトップの成績)で「私は風の強い方が好きです。みんなが悪くなるから」と平然と言ってのけた。ゴルフプレーでは、風の強い日ほど嫌な物はないと云われている中、やはりただ者ではない。強引な攻めで優勝を逃した試合も2,3回見ています。なんだか優男(?)に見えても単身アメリカに渡った強心臓は健在なようです。
では、ゴルフを知らない方もいらっしゃるようなので私なりに簡単に説明してみましょう。
プロの試合でお話しますが、ゴルフの試合は、簡単にいうと18ホールを4日間トータルでより少ない打数で終えた人が優勝するゲームです。1ホールの基本は4打です。これが18ホールで合計72打(パー72と表現します)でも、4打(パー4)だけではつまらないので、ロングホール(5打で上がるホール、パー5と云う)、ショートホール(3打で上がるホール)、パー3と云う)を各9ホール2つずつが大体のコースでセッティングされています。合計は72、つまりパー72のコースとなります。
タイガーは27日。初戦優勝を決めましたが、4日間で19アンダー、つまり72打×4日間=288打のコースを-19、269打で回ったのです。2位の今田は11アンダーですから277打で終わったことになります。タイガーが圧倒的勝利を獲得したと云えます。
さて、タイガー・ウッズの強みはパターにあると常々思っています。3歳の頃から米国特殊部隊出身の父からゴルフ指導を受けましたが、「ゴルフプレーの中でスリーパットが一番悪いミス」と教わりました。私はこの言葉に「ゴルフプレーの神髄」があるように思えてならないのです。
何故そう思うのか、ゴルフプレーは出来る限りミスを無くしてアンダーパーを目指す競技ですが、「ボールはカップ届かないと入らない」と良く云われます。しかし、強気に打てばカップを行きすぎ、入れようとして外したために落胆した感情で打つ返しのパット難しくなります。同じ距離のパットでは2打目方が外す回数が多いことを知っています。プロは違います。外し方を冷静に見て、逆からのパットの方向・強さを真剣に脳裏に残すので、3パットは少ないですが、それでも落胆する気持ちをコントロールできないと外すプロも少なからずいます。そんな選手はその後、ドンドンスコアーを落としていきます。
野球に置き換えると「バントミス」「エラー」は3パットに当たります。野球の女神が見放すのです。ゴルフでは3パットは心の緊張に針を刺してしまい、勝機という空気が抜けていくような現象を呼んでしまうのです。ボギー以上に3パットはこたえます。100を一度も割ったことがない人にはこの落胆はあまり見られませんが、80を切りたいと持っている人にはかなりこたえるミスになります。
ここに「ゴルフの神髄」、
つまり、「強気を忘れずに、しかも己の感情をコントロールせよ」があるのです。これは今まで読んできた本からの引用ではなく私自身への戒めの言葉でもあります。しかし、分かっていてもできないのがゴルフであり、人生でもあります。頭の中にいくら偉人たちの言葉、名君たちの言葉、映画の名セリフが溢れていても実践できることとは大きく違っているのです。
タイガーの父は幼い息子にゴルフの神髄を初めは決して伝えなかったはずです。ただ「3パットが一番悪い」だけ教えたのでしょう。何度も3パットをして父に叱られ、泣き出すこともあっても決してパターを投げ捨てなったのでしょう。様々なグリーンで何時間でも練習できる集中力を身に付け、何故3パットしたかを幼い子ながらに分析し修整してきたに違いありません。
パターには特にその人が持っている人間力が試されます。
「グリーンの傾き、芝の向き、上り、下り、朝方(露がボールを遅くする)昼過ぎ(グルーン乾き早くなる)グリーン全体の形状とカップ位置、グリーン荒れ具合、風(強いと影響される)などあらゆる状況を冷静に把握し、そして分析して勇気を持って狙い所、方向、強さを決断しその決定を自分の体(手や指先)に伝えます」しかし、「なんであんなに強く打つの?」「どうしてそんなに弱いの?」「どこに打ってるの?」ことはこの直後にたびたび起こります。思っても出来ないのです。この辺がアマチュアたる所以でもありますが……。
父は3パットの要因を幼いタイガーに考えろときっと云わなかったのではないだろうか?失敗の要因を幼い子に探させるよりは巧く出来たパットを誉め、グリーンをチェックするのも楽しみながら体で覚えさしていったのではないだろうか。幼い子供は好きなことには信じられない集中力を発揮します。
タイガーがトーナメントで見せるグリーン上での状況把握のルーティーンにはいつも澱みが無く、しかも鋭い視線の先にはボール通る道筋以外にはない。観客のしゃべり声もグリーン外の騒音も全く聞こえない無の境地を入り込み、ファーストパットへ全神経を集中させています。(私などは、どうせこんなの入る分けはないからとにかく近づけようと打ってしまう自分よく感じます)そんなパットでは近づくパットも離れてしまいます。
昨年の暮れ、ようやくこの境地に達しました。30歳後半の頃は80台を連発していて殆ど90を越えなかった私ですが、距離を出すことに挑戦し始めてすべてを失った感がありました。10年を無駄にしたとは云いませんが、結果的にはそうなります。しかしその道を歩んだからこそ今の自分がいるのだと思い返し、2008年度には是非とも40を切ろうと目標を立てました。映画もスポーツ観戦も大好きですが、実際のゴルフプレーには及びません。タイガーの父の言葉を常に忘れず、新たなスタンスでゴルフに望みたいと思っています。