2009年全豪オープン男子シングルス準決勝は、ナダルがベルダスコとの死闘を制した。
第1シードのラファエル・ナダルが第14シードのフェルナンド・ベルダスコとスペイン勢対決した。6-7(4)6-4 7-6(2) 6-7(1) 6-4で競り勝ち、初の決勝進出を果たした。■( )内の数字はタイブレイク(7点先取、6点同士なら2点差の8点で勝利)での負けた相手のポイントのこと。
まさに死闘という言葉がふさわしい。かつてこのような一歩も引かないガチンコ勝負を見たことがない。5時間14分の試合時間は、1991年B・ベッカーとO・Camporeseとのマラソンマッチ5時間11分を超える全豪オープン最長試合となった。
ベルダスコはショットではナダルを完全に上回っていた。高く弾むエッグボールを打てばライジング気味のファアのフルショット放たれた。しかも200kmを越えるファインサーブの成功率も70%を下回らない。拾いまくるナダルは防戦一方に見えたが、左右に振られながら鋭いリターンやサイド攻撃を連発。第1セットは互いに1ゲームも落とさず、タイブレークに突入。(これは凄い試合になる予感がした…。 本当にその通りになった…。)
たとえ左右に振られようが、拾いまくるテニスはナダルの真骨頂。しかも困難な姿勢からのスーパーショットこそ勝利の女神を呼び込むと信じるナダル。これは彼の信念に違いない。相手が決めようとしたショットを奇跡のようなファインショットによって相手の勇気を挫くとを信じて疑わない。きわどいダウン・ザ・ラインショットで何度もゲームが中断。ナダルのボールがINする画面が何度も写り、ベルダスコの苦笑いまで誘った。しかし、第2セット以外、ベルダスコの闘志は最後の最後まで衰えなかった。
第1セットを取ったにも関わらず、ナダルに第2、第3セットを連取され、まさに背水陣で迎えた第4セット。ベルダスコの角度のあるフォアのスーパーショット、左右への切り返し、ナダルが放つ攻撃的な武器へと変貌を遂げたスライスを、冷静沈着にバック、フォアで打ち返した。ナダルがようやくブレイクに成功するが、次のゲームでは反対にナダルのサーブに鋭いリターンを連発、なんと40-0でブレイクバック。
走りまくり、拾いまくり、奇跡のようなショットでナダルがまたもブレイクに成功。しかし、しかし! まだまだぁー! ナダルの走りまくり、拾いまくりがベルダスコに乗り移ったように動き、そして攻撃的なショット、彼の精神力はまったく途切れない。5時間を超える戦いに観客は二人のファインプレーに総立ちの大声援を送った。しかし、その希にみる強い精神力を持つ同胞ベルダスコも、ついにナダルの前に頭を垂れるときが来た。
5-4で迎えた第5セット、ベルダスコのサーブに0-40となりマッチポイントを迎えたときだった。ナダルの表情は何故か哀しく見えた。本当にそう思えた。それは「パパ、もう終わりなの?」という父親にもっと遊ぼうよとせがむ子供の表情に思えた。ナダルはいつでも勝てると確信していたのだ。もっとゲームを楽しみたかったのだ。ゲームの勝敗は195勝対195勝、まったくの互角。95本のウィナーを取ったベルダスコ。それに対してナダルはその3分の1。しかし、ナダルのアンフォーストエラーの数はベルダスコの3分の1。ここにナダルの真骨頂がある。ミスが圧倒的に少ないのだ。「強い守りの中から勝利もぎ取る」これがナダルのスタイルだ。相手が先に精神的に負けるのを待っているのだ。
大会前のインタビューで目標は?との問いに、ナダルは「進化し続けること」と答えている。言い換えれば、目標はフェデラーのような具体的人物ではない。自分が進化し続ける精神力を持つという観念的なものだと云っている。まさにそれはイチローが歩む野球道のようだ。ナダルの態度や言葉にどこか東洋的スピリッツを感じる。チェンジコートの際、どんな格下のプレーヤーでも道を譲るスタイルにそのスピリッツが見える。道を譲る22歳の若者の謙虚な態度こそ<進化し続ける>スピリッツ(=心のスタンス)が象徴されている。私はあの態度に驚きと感動を覚える。
日本のアニメ「ドラゴンボール」の大ファンの彼。東洋的悟り・観念を学んだか? 昨年までの二の腕を見せたシャツ姿は主人公の悟空を思わせた。宮本武蔵が剣を通して生きる道を捜した修験者のように剣の道を極めていったが、ナダルはラケットを通して<テニス道>を極めようとしているかに見える。自分を律する気持ち(試合中での悪態が若者に関わらず殆どない)にストレスを感じさせない。困難に堪えてこそ己の真の成長があるという東洋的哲学を感じて仕方がない。ナダルはそんな境地を目標に突き進んでいるかのようだ。
明日、最大の敵フェデラーとの対決が待っている。ようやくここまで来たナダル。昨年ナンバー1シードの称号を得たが、ナダル自身4大グランドスラム大会をフェデラーより先に奪取して初めてその地位につけると思っているはずだ。フェデラーは全仏ローランギャロスのクレーコートだけ一度も勝てていない。すべてナダルが阻止しているのだ。(サンプラスも全仏だけ勝てず)だからこそ、全豪で勝って次の全仏へ弾みをつけたいはすだ。この両者の戦いこそ、2009年全豪最大の見せ物と誰もが感じている。
昨年以来、まるで静かに流れるような円熟のテニスへと進化したテニスに再びパワーが戻ってきたフェデラー。攻撃的なスライスに緩急を織り交ぜ、さらに成長した鋭いバックと200kmでエースをももぎ取れるほど磨き上げてきたサーブ、これらの武器を身にまとった悟空ことナダル。王者フェデラー対ナンバー1シードナダルの戦いは明日幕を開ける。ナダルに死角は見えない。
昨夜、真夜中の死闘を制したナダルは
「今は疲れより喜びのほうを感じている。
自分のキャリアの中で最高の試合の1つとなった」と語った。
第1シードのラファエル・ナダルが第14シードのフェルナンド・ベルダスコとスペイン勢対決した。6-7(4)6-4 7-6(2) 6-7(1) 6-4で競り勝ち、初の決勝進出を果たした。■( )内の数字はタイブレイク(7点先取、6点同士なら2点差の8点で勝利)での負けた相手のポイントのこと。
まさに死闘という言葉がふさわしい。かつてこのような一歩も引かないガチンコ勝負を見たことがない。5時間14分の試合時間は、1991年B・ベッカーとO・Camporeseとのマラソンマッチ5時間11分を超える全豪オープン最長試合となった。
ベルダスコはショットではナダルを完全に上回っていた。高く弾むエッグボールを打てばライジング気味のファアのフルショット放たれた。しかも200kmを越えるファインサーブの成功率も70%を下回らない。拾いまくるナダルは防戦一方に見えたが、左右に振られながら鋭いリターンやサイド攻撃を連発。第1セットは互いに1ゲームも落とさず、タイブレークに突入。(これは凄い試合になる予感がした…。 本当にその通りになった…。)
たとえ左右に振られようが、拾いまくるテニスはナダルの真骨頂。しかも困難な姿勢からのスーパーショットこそ勝利の女神を呼び込むと信じるナダル。これは彼の信念に違いない。相手が決めようとしたショットを奇跡のようなファインショットによって相手の勇気を挫くとを信じて疑わない。きわどいダウン・ザ・ラインショットで何度もゲームが中断。ナダルのボールがINする画面が何度も写り、ベルダスコの苦笑いまで誘った。しかし、第2セット以外、ベルダスコの闘志は最後の最後まで衰えなかった。
第1セットを取ったにも関わらず、ナダルに第2、第3セットを連取され、まさに背水陣で迎えた第4セット。ベルダスコの角度のあるフォアのスーパーショット、左右への切り返し、ナダルが放つ攻撃的な武器へと変貌を遂げたスライスを、冷静沈着にバック、フォアで打ち返した。ナダルがようやくブレイクに成功するが、次のゲームでは反対にナダルのサーブに鋭いリターンを連発、なんと40-0でブレイクバック。
走りまくり、拾いまくり、奇跡のようなショットでナダルがまたもブレイクに成功。しかし、しかし! まだまだぁー! ナダルの走りまくり、拾いまくりがベルダスコに乗り移ったように動き、そして攻撃的なショット、彼の精神力はまったく途切れない。5時間を超える戦いに観客は二人のファインプレーに総立ちの大声援を送った。しかし、その希にみる強い精神力を持つ同胞ベルダスコも、ついにナダルの前に頭を垂れるときが来た。
5-4で迎えた第5セット、ベルダスコのサーブに0-40となりマッチポイントを迎えたときだった。ナダルの表情は何故か哀しく見えた。本当にそう思えた。それは「パパ、もう終わりなの?」という父親にもっと遊ぼうよとせがむ子供の表情に思えた。ナダルはいつでも勝てると確信していたのだ。もっとゲームを楽しみたかったのだ。ゲームの勝敗は195勝対195勝、まったくの互角。95本のウィナーを取ったベルダスコ。それに対してナダルはその3分の1。しかし、ナダルのアンフォーストエラーの数はベルダスコの3分の1。ここにナダルの真骨頂がある。ミスが圧倒的に少ないのだ。「強い守りの中から勝利もぎ取る」これがナダルのスタイルだ。相手が先に精神的に負けるのを待っているのだ。
大会前のインタビューで目標は?との問いに、ナダルは「進化し続けること」と答えている。言い換えれば、目標はフェデラーのような具体的人物ではない。自分が進化し続ける精神力を持つという観念的なものだと云っている。まさにそれはイチローが歩む野球道のようだ。ナダルの態度や言葉にどこか東洋的スピリッツを感じる。チェンジコートの際、どんな格下のプレーヤーでも道を譲るスタイルにそのスピリッツが見える。道を譲る22歳の若者の謙虚な態度こそ<進化し続ける>スピリッツ(=心のスタンス)が象徴されている。私はあの態度に驚きと感動を覚える。
日本のアニメ「ドラゴンボール」の大ファンの彼。東洋的悟り・観念を学んだか? 昨年までの二の腕を見せたシャツ姿は主人公の悟空を思わせた。宮本武蔵が剣を通して生きる道を捜した修験者のように剣の道を極めていったが、ナダルはラケットを通して<テニス道>を極めようとしているかに見える。自分を律する気持ち(試合中での悪態が若者に関わらず殆どない)にストレスを感じさせない。困難に堪えてこそ己の真の成長があるという東洋的哲学を感じて仕方がない。ナダルはそんな境地を目標に突き進んでいるかのようだ。
明日、最大の敵フェデラーとの対決が待っている。ようやくここまで来たナダル。昨年ナンバー1シードの称号を得たが、ナダル自身4大グランドスラム大会をフェデラーより先に奪取して初めてその地位につけると思っているはずだ。フェデラーは全仏ローランギャロスのクレーコートだけ一度も勝てていない。すべてナダルが阻止しているのだ。(サンプラスも全仏だけ勝てず)だからこそ、全豪で勝って次の全仏へ弾みをつけたいはすだ。この両者の戦いこそ、2009年全豪最大の見せ物と誰もが感じている。
昨年以来、まるで静かに流れるような円熟のテニスへと進化したテニスに再びパワーが戻ってきたフェデラー。攻撃的なスライスに緩急を織り交ぜ、さらに成長した鋭いバックと200kmでエースをももぎ取れるほど磨き上げてきたサーブ、これらの武器を身にまとった悟空ことナダル。王者フェデラー対ナンバー1シードナダルの戦いは明日幕を開ける。ナダルに死角は見えない。
昨夜、真夜中の死闘を制したナダルは
「今は疲れより喜びのほうを感じている。
自分のキャリアの中で最高の試合の1つとなった」と語った。