滝蔵の嫁になるヨシは、街道筋の隣家であることは(5)に記した。この二人が仲良くなるのは、大正二年のことだ。次男と次女の気軽さがあったのかもしれない。街道の谷間は二人の相引きには格好の自然のデート場だ。
出来ちゃった。ヨシが身重になった。大正三年春、未婚のまま子を産んだ。十八歳。
女の双子だった。
しかし、最初の子は死産。あとの子も三日後に亡くなった。
ヨシの名をとり、ヨシノ、ヨシエと名付け、丁重に葬られた。
ヨシと滝蔵との仲はあまりにも明らかで、両家にとって大騒動だった。
両家は、この二人を結婚させることにした。大正三年の瀬も押し迫った冬、滝蔵を分家させ、ヨシを籍に入れた。
二人の住む家は、本家の隣。
仲睦まじく暮らす二人に、大正五年春、待望の次の子が生まれた。
長男、司。
狭い谷間、本家から分ける土地はない。二人は、本気で自立への道を考え始めた。蝦夷へ。
(つづく)