楽学天真のWrap Up


一語一句・一期一会
知的遺産のピラミッド作り

疑似科学入門

2008-06-07 09:19:28 | 科学
疑似科学入門 (岩波新書 新赤版 1131)
池内 了
岩波書店

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この本は、科学哲学の欠乏している地球科学にとって極めて重要である。
先の連合大会で、地球温暖化を巡って大きな議論があった。
政治家やマスコミ人をよんで、セッションが連日展開されたのである。
その中でも、実は「科学とはなにか」、「疑似科学とはなにか」、ということがその底流に流れていたからである。
池内氏の論をまつまでもなく、科学を少しでもかじった者には第1種疑似科学、オカルトや迷信は分かりやすい。
そして、マイナスイオンなどの科学用語をちりばめた第二の疑似科学は時間がたつと化けの皮が剥がれる。
しかし、第三の疑似科学、すなわち複雑系の科学がからみ、科学自身に困難を伴っている未来予測が絡んでいる場合は、巧妙である。

先の地球温暖化と地球環境問題をめぐる課題はその最たる対象だ。

だからこそ、一層の科学哲学が求められている。
このテーマは科学が、政治の意思決定にはじめて本格的に持ち込まれた例でもあるのだ。

「複雑系に関わる第三種疑似科学は、体制や世間の趨勢に反発したくなる人が陥りやすい傾向がある。みんながいうことに簡単に迎合せず、疑って文句をつけてみるという意味ではけなげな精神の持ち主といえる。ーー。自分の物差しだけで世の中の寸法を測ろうとして、かえって自分が疑似科学化していることに気がつかないのである」(p176)


そして知る人ぞ知る池内氏のこれまでの生き様も良く自覚していて、
「私もそうでないか気をつけねばならない」(p.177)
とのいましめは、彼の明晰さをきわだだせている。

連合大会のときに、大きな反響のあったシンポジウム参加者にこの本を読んでの感想を聞いてみたいと思う。
私には大変納得のいく、そして時を得た著作であると思う。



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人類5万年ー壮大な旅

2008-05-21 23:59:22 | 科学
5万年前―このとき人類の壮大な旅が始まった
安田 喜憲,沼尻 由起子,ニコラス・ウェイド
イースト・プレス

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この翻訳本は本当に目から鱗が落ちる!
私は全く門外ではあるが感動的に読んだ。
この書が書かれたのはすでに二年前。
翻訳本が出版されたのは昨年秋。
私はこの二年間にどう事態がさらに解明されたのか、知りたくて、ネットサーフするはめになった。
連合大会も近い、学生の準備がどうなっているか気になる。四川の大地震もありかなり忙しい。
しかし、知りたいという思いには逆らえない!
そして、national geographicのサイトを見て驚いた。
3年前に描かれていた図と今の図が大きく違うのである!
この分野では今、革命が起きていると確信するに至った!
今週末から連合大会がはじまり大忙しであるが、追跡と思考は続くーー。
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人類進化の700万年

2008-05-16 23:04:59 | 科学
人類進化の700万年―書き換えられる「ヒトの起源」 (講談社現代新書)
三井 誠
講談社

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人類起源論第三弾。
新聞記者らしい追跡。
いろいろ疑問も挟みながら、実にわかりいい。
サイエンスライターの少ない日本。
このようにのめり込んで書く人がどんどん増えるといい。
昨今、あまりにも細分化している科学。
となりは何をする人ぞ、の世界になっている。
かくいう私もそうであった、と反省するばかりであると同時に、
そのような科学者へもこのような本は大変勉強になる。
私は、わからない、しかし知りたいと思う分野のことはまずカッパブックスから、というのが習慣化しているが、
最近の新書ブームにのって、多いにサイエンスものを出版してほしいものだ。
それにしても人類の起源論と日本人の起源論は、21世紀に入り完全に革命期だね。
ゲノム解析の威力はすざましいものがある!

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日本人の祖先

2008-05-12 23:34:07 | 科学
日本人になった祖先たち―DNAから解明するその多元的構造 (NHKブックス 1078)
篠田 謙一
日本放送出版協会

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先の本に引き続き、この本ものめり込むように読んだ。
DNAは一気に人類観をかえた!
ミトコンドリアで追いかける母系の先祖。
Y染色体で追いかける父系先祖。
すべてはアフリカへ。それ以前のネアンデルタールや北京原人などとは違う新人の短期間での爆発的拡散。
基本的フレームは解き明かされてしまった感がある。
あとはヒマラヤの北回りをどうするかとか細部だ。

先に読んだ形態分類の人類学と異なり、論理が単純明快なので分かりやすい。
しかし、分かり易いということが真実というわけではないことも、著者の言う通り。
この単純さを仮説として、細部が今後つめられていくのだろう。

日本人起源論の弥生人部分はもはや確定的だ。
大昔に読んだ埴原説に軍配だ。

さて、新人を切り離したのはよしとして、旧人の拡散過程はどう解かれていくのかね、今後。
私は地球科学者。

従って、気候変動、海峡形成、地殻変動などが背景としてどうからむのか、興味の湧くところだ。
だって、背景として温暖化したとか、寒冷化したとか、海は渡ることができたとか、少々簡単に扱い過ぎ。
まじめに考えると本当に符合しているかどうか自明ではないような気がする。

門外ではあるが、まだまだ楽しめそうだ。


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大嵐

2008-02-24 10:09:27 | 科学
この2日間、航海の後始末の会議で缶詰であった。昨日は朝はポッカぽか、しかしにわかに暗転し、深夜の首都高速は風に揺すられ、ふらふらしながら運転だった。怖いね。今朝も一部の電車は止まっている。

会議で打開策が見えないと紛糾する。
おまけに英語で缶詰だ。
この会議のためだけにアメリカからやって来ているのだから、先が見えないと大変だ。
断続的に休憩を入れ、打開策を探る。
夜飲んで、表の会議では言う事のできない本音のところ、本当の事情のところをぶつける。
だって、昼の会議は議事録が残る。
てなことをもう何回もやってきているので、少々ぶつかっても決定的に分裂する事はない。
お互いの文化の違いも個性もかなり知り尽くして来ている。

次はどこでやる?
最後の議題はこれ。
「次は夏!もういつものような、東京、サンフランシスコ、シアトルなどは飽きた。アンカレッジにしよう!」
私は叫んだ。
「だって、アラスカは本当に日本とアメリカ本土の中間線で測地線上の距離はちょうど半分くらいだ!」
「妹がアンカレッジにいる!」と前から言っているアメリカ人は大賛成。
お金の面倒を見ることになっているアメリカ側の責任者
「みんなで合意して、価格が合理的であればOKだよ」

その前に、4月アメリカ、6月アメリカと中国、7月実現すれば「アラスカ!」
忙しすぎる! 
「授業はどうしよう?」
不安がよぎる。

新学期に向けて、最近、表のサイトの更新でも忙しい。
論文も書かねばならない。

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