楽学天真のWrap Up


一語一句・一期一会
知的遺産のピラミッド作り

時が滲む朝

2008-10-04 22:32:37 | 読書
時が滲む朝
楊 逸
文藝春秋

このアイテムの詳細を見る

この本は、芥川賞受賞後すぐに買って読んだのだが、ここに書く暇もなく過ぎていた。

内容は(NHK週刊ブックレニューで今朝やっていたので、そこから以下パクリ)
天安門事件で挫折した、若者たちの半生を描いた物語です。
1988年、中国西北部の名門大学に合格した幼なじみの梁浩遠と謝志強。学問と愛国心に燃える二人は、情熱に突き動かされるまま、民主化運動に身を投じてゆきます。
天安門事件での敗北感と大学から下された退学処分、そして友の裏切り…。政治や経済の激しい変化に主人公の紆余曲折を重ねながら、理想と夢をくじかれた中国の若者の痛みと希望を力強く描き上げました。

時と場所と情景は全く異なるが、先に記した「望みは何と訊かれたら」(小池真理子)と空気は似ている。特に、脇役として登場し、消息不明となっていた恋人の女性のさっそうとした姿との再会は、突然、小説をスイッチしてもいいものかもしれない。

もっと長編にして、もっとこころの機微をえぐり出せば、圧倒的な小説になった気もする。小池真理子と比べるとちょっと物足りないか。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

望みは何と訊かれたら

2008-10-04 22:10:34 | 人間
望みは何と訊かれたら
小池 真理子
新潮社

このアイテムの詳細を見る


いつだったかNHKの週刊ブックレビューで紹介されているのを見て、
「お!読んでみたい」と思った。
小池真理子は私と同世代の女流作家。名前は知っていたが読んだ事はない。
学生運動を経験し、その最中の人間模様を描いているらしい。
私は、小説などはほとんど読まないが、昔、学生運動の経験もあり、引きつけられた。
そして、本屋で見つけて買ってあったが読む暇がなかった。
しかし、休みが取れたらこの本を読もうと決めていた。
(そのような本が、実は、山とあるのだがーー)

最後まで、読者を引きつけてやまないサスペンス調で展開しつつ、終わりはない。
なぜなら、まだ続いているからである。小池真理子が八十にになれば、更に書けるのかもしれないが。

貫かれていることは、
日常の安定の安堵と、非日常の不安定の緊張の恍惚の狭間で強く揺れる人間の性である。
この生き様は、あの時代に青春を経験した者でなければ理解不能かもしれない。

読んでいて私はふと、第二次世界大戦の時に青春を過ごし、いま人生を終えようとしている世代のことが頭をよぎった。
それは命を強制的に中断させられるという、非日常の中で過ごした青春、そしてその後の時間的には圧倒的に長い安定的な日常の人生(もちろん相対的にという意味でしかなく、私には想像でしかないのであるが)の対照があった。
そして、いま本当に命の灯火が消えようという時に、その非日常の青春の意味を確認し、後世に伝えたいという叫びが心を打つ。

あの揺れ動いた時代の青春は、このような世代に比べれば、ひよっこ程度のものでしかないかもしれない。
しかし、人生の中の、命をかけた非日常であったことだけは間違いない。

そういえば、私も「日常性から脱却せよ!」には引きつけられたな。いまでも、「非常識」が好きだ。






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする