異形の仲間たち見聞録

私が見てきた精神疾患者たち

小説 『ボケ茄子の花 その三十』記念号

2018年04月04日 01時04分49秒 | 小説『呆け茄子の花』

今日は少し長く書くことにしよう。

その電話は年末も押し迫った師走の30日でった。

上司からであった。

年末のあいさつかと思いきや「勤務をサボっている」という内容の注意であった。

その内容は「障害者雇用」ということをないがしろにして、

「健常者並に働け!」というものだった。

詳しく述べると「体調を悪くして、他の人に仕事をお願いしてきながら、

早退せずに就業時間通り勤務するとは何事だ!」ということだった。

尚樹にしてみれば、「体調が悪いながらも遅れている仕事をやっていた。」

という言い分だったのだが、上司は全く聞く耳を持たず、

「健常者職員だったら、もっと厳しくしている。」とまで言い放った。

しかし、上司のデスクがある部署の実態を尚樹は知っていた。

上司がいない時は、空き時間を見つけては職員間の談笑やお菓子をつまんで

和気藹々とした雰囲気だったからだ。

それを『就業報告書』という文面だけで「時間いっぱい働け!」というわけだ。

普段は笑顔が絶えない尚樹であったが、上司と電話口で口論となるほど、

ヒートアップしてしまい、暗澹とした年越しから新年を迎えることとなった。

尚樹は、元旦・二日と勤務であった。

『病院ならでは』といったところである。

その時、尚樹の頭の中には、上司との嫌な口論の記憶は薄かった。

元旦・二日、それから任されていた集計の仕事に気を集中させていたので、

それ程に不快な感じは無かったが、正月も二週目になって、

集計の仕事も終わり、一段落着くとあの忌まわしき記憶が

尚樹の頭の中をなめ回すように巡り次第に床から起き上がることが困難になった。

結果、尚樹は一ヶ月半ほど寝込むことになった。

尚樹は床の中で思った、「このままでは済まされぬ・・・」と。

 

その三十一に続く・・・

 

 

 

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