異形の仲間たち見聞録

私が見てきた精神疾患者たち

小説 『呆け茄子の花 その五十五』

2021年08月16日 02時42分34秒 | 小説『呆け茄子の花』
就職活動も難航に次ぐ難航、Dr.からは障がい年金の打ち切りの引導を渡され、絶望の淵にあった。精神的にも弱くなり、就職試験で面接を受けても「どうせ落とすんだろ?」と投げやりな思いが続いた。ある法人の就職試験を受けた。採用人数は4人。試験会場に集まったのは7人。「もしかして・・・」という気持ちはあったが、「負け犬根性」が染みついている今の尚樹には「また落ちる」という気持ち以外無かった。筆記試験、PC試験、面接と2グループに分かれて進んでいった。筆記試験では漢字や四字熟語、複雑な計算式があったのだが、自信を無くしたのが「割り算」だった。今は電卓やExcel等で計算する時代になって、おそらく、化学工場に勤めている時もやっていなかったであろうから、高校生以来のこの問題に向かった時、忘れている自分に愕然とした。漢字や四字熟語は日頃読書をしていることもあって何とか切り抜けた。PC試験は以前別の事業所で出た問題と似たようなものであったので持ち時間を持て余すほど早くできた。面接は「やる気の無さ」は始めの方に出て言葉に詰まることがあったが、後半は「いつもの自分」を取り戻し、今までの実績や思うところを話していった。試験が終了したものから順に帰って行き、尚樹は終わりの方であった。時間は15時をちょっと回ったぐらいではあったが、小腹が好き駅前にあるラーメン屋で腹を満たし、内心「もうここに来ることはないか・・・」と思いながら電車に揺られ帰途についた。





その五十六につづく






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