西野了ブログ テキトーでいいんじゃない?

日々浮かんでくる言葉をエッセイにして・・・・・・。小説は「小説を読もう 西野了」で掲載中です。

書評 夏目漱石 「坊ちゃん」

2007-04-13 08:37:36 | Weblog
みなさんもご存知の、夏目漱石の「坊ちゃん」という小説を先日、恥ずかしながら初めて読みました。この小説は、痛快な青春小説だ!と言われていますが、はたしてそうでしょうか?
 主人公の坊ちゃんは無茶苦茶です。母親が病気で死ぬ2.3日前に台所で宙返りをして騒がせ、重病の母に怒られます。また悪さばかりして、父親から親子の縁を切られ、兄とも仲が悪い。唯一、お手伝いの清というばあさんだけが、「坊ちゃんは気性がまっすぐで偉い」とほめてくれます。本人はなぜ褒められるのかわからない。数学の教師として松山に来るのですが、生徒からはからかわられ、いたずらをされて、すぐ切れてしまいます。そして教頭の赤シャツの罠にはまり、友達の山嵐と暴力事件を起こし、警察につかまり、新聞沙汰になってしまいます。当然山嵐はクビ。坊ちゃんも先生をやめるのですが、二人を陥れた赤シャツに仕返しをするために、1週間以上、張り込みをします。今でいう、ストーカーですね。最後に赤シャツと子分の野だいこを二人でぼこぼこに殴って、松山を離れます。この間、赴任して1ヶ月、坊ちゃんは1ヶ月しか先生をしていません。痛快青春小説というよりは先生失格小説という感じです。(今で言えば暴力教師です)
 それから、この本を読まれた方はお分かりでしょうが、坊ちゃんは松山が大嫌いです。言い方は悪いですが、松山の事を「ぼろくそ」に言っています。たとえば教師たちは、生徒のことよりも自分の保身のことばかり考えている、また生徒たちはいたずらをしても、のらりくらりと追求をかわし、うわべだけの反省しかしない、松山は文化不毛のど田舎のような描写などなど。
 それなのに、現在、松山の方では、嬉しそうに「坊ちゃん団子」とか「坊ちゃんスタジアム」「坊ちゃん劇場」とかつくって喜んでいます。不思議なものです。松山の人間は自虐趣味でもあるのでしょうか?

 漱石はこの作品を1週間くらいで書き上げたそうです。(すごい!)100年以上も前の小説ですが、勢いのあるいきいきした文体と社会に対するものすごい批判精神が表れていて、それがこの作品の素晴らしさであると思います。

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