西野了ブログ テキトーでいいんじゃない?

日々浮かんでくる言葉をエッセイにして・・・・・・。小説は「小説を読もう 西野了」で掲載中です。

増殖するボールペン

2007-04-24 22:13:22 | Weblog
 僕の机の上にある筆入れに、ボールペンが何本あるか数えてみた。
 9本もある。そのうち水性ボールペンが3本。ちなみにシャープペンシルは3本。他の部屋にも何本かあるので、我が家には相当の数のボールペンやシャープペンシルが存在する。
 僕は事務的な仕事もするので、筆記用具は欠かせない。しかしここ10数年来、筆記用具を買った記憶はない。けれども時が経てば経つほど、ボールペンやシャープペンシルは増えていく。カール・マルクスの資本論ではないが、筆記用具というものは自己増殖するのだろうか?答えは「否!」である。朝起きていたら、三菱ボールペンが子どもを生んでいたという場面に出くわしたことはない。それでは、サンタクロースや家族がプレゼントをしてくれたのであろうか?この答えも「否!」である。2年前、次女が誕生日に1本シャープペンシルをプレゼントしてくれたが、それ以外は記憶にない。
 それでは、なぜボールペンやシャープペンシルが知らない間に増えていくのであろうか。それは、僕がものすごい田舎に住んでいるからだ。なぜものすごい田舎に住んでいるとボールペンやシャープペンシルが増えるのかというと、葬式が多いからである。
 若干、論理が飛躍したようなので、もう少し丁寧に説明しよう。わが国において、ものすごい田舎といえば、犬も歩けば年寄り当たるほどの超高齢化社会を意味する。だから毎月、地域で何人かのお年寄りが亡くなる。田舎のすごいところは、顔と名前がほぼ一致する。とくに、我が家ではしっかりものの母が健在なので、僕や妻が知らない人でも、母にとってみれば知っている人だ。それから、またまた田舎のすごいところは仕事よりも葬式が大事ということである。だからお葬式にはきっちり出席するか、参加できない場合は人に頼んで香典をわたす。すると当然香典返しが来る。少し前までは、香典返しとして、ハンドタオルとか香典袋(数枚入りセット)とかが多かったが、香典返しに香典袋を貰っても、たまる一方である。いったい何人葬式をすればなくなるかと言いたいぐらいたまる。そこで、最近は香典返しに、ちょっと洒落たボールペンやシャープペンシルをつつむ人が多くなった。ということで、ものすごい田舎では知らず知らずのうちにボールペンやシャープペンシルが増えるという、いわゆる「過疎地における筆記用具の増殖過程」を無事説明することができた。
 ところで、ボールペンはペンの先端が小さなボールで、それが回転してインクを適量出すのだということを知ったとき、あなたは感動しなかっただろうか?僕は「おおっ!」と少し感動した。しかし、ボールペンで記述しているとき先端のボールがくるくると回転していると感じる人がいるのだろうか。ほとんどの人が普通のボールペンだと、まず感じることはできないであろう。地球がものすごいスペードで回転しているのに、それを感じることができないことと同様である?人間の感覚は、きわめて限定された範囲でしか機能しないのだ。ところが、僕の場合、お気に入りのボールペンで書いているとき、それを感じることができる・・・ような・・・気がする。そのボールペンとは「三菱ユニLakubo 100」である。僕は三菱ボールペンには何の義理もないが、このボールペンは非常に書きやすい。このポールペンだと字がうまく書けるような気がする。大事な書類を書くときは必ず「三菱ユニ」を使う。ゆえに僕の筆記用具の中では、「三菱ユニLakubo 100」がNO1と思われるかもしれないが、実は違う。心を込めて書く手紙などは、パソコンで印刷したものよりも、直筆で書きたいものだ。その場合「三菱ユニLakubo 100」ではなく、えんじ色の光沢が美しいパイロット万年筆「ECRINO」を使う。この万年筆を使うと、さらに字がうまく書けるような気がする。筆記用具は奥が深い。
さてボールペン、万年筆について述べてきたが、それではシャープペンシルはどのように使っているのか。シャープペンシルはビジネス手帳でメモするときに使う。メモなので、字の体裁にはこだわらない。こだわらないというよりは、どきどき何て書いてあるかわからないくらい汚い。愛用のシャープペンシルは「赤い羽根募金 共同募金」(ピンク色)もらい物である。蛇足ではあるが、シャープペンシルは行政の外郭団体の名前で、やたらもらってきた記憶があるが、最近は財政逼迫のあおりを受けて、その機会が減ってきたような印象を受ける。残念だ。
ここ数年、文書処理はパソコンを使うことが多くなってきたが、やはり日本は紙の文化である。日本人なら紙に字を書け!なのだ。そこで、今年の正月の年賀状、少しは筆で書くべしと筆ペンをとったが、あまりの字の下手さに1枚でやめてしまった。筆記用具に愛着があっても、字が下手だと彼らに申し訳ない気もしないでもない。
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宮沢賢治の不思議な文体 7.4.16

2007-04-16 22:25:25 | Weblog
 活字中毒者にとって、好きな作家というものは、その文体によるのではないか。
 僕の場合、疲れたときに読む作家は村上春樹である。とくに心が疲れたときは、「ダンス・ダンス・ダンス」や「羊をめぐる冒険」を読む。村上春樹の文章は、とくに「ダンス・・」や「羊を・・」あたりの文章は体にフィットする。物語がすーと入ってくる。
 反対に元気なときは、ドストエフスキーの長編を読む。この怪物的なエネルギーをもった作家の作品を読むには、こちらも相当なエネルギーが必要なのだ。しかし、ドストエフスキーの長編小説における後半の、とりわけ残り三分の一くらいからの文章力、物語の悪魔的吸引力は凄い。「白痴」を読み終わった後、2週間くらい晩酌しなくてすみました。頭が酔っ払っちゃたわけですね。禁酒するなら、ドストエフスキーを読め!です。
 さて、宮沢賢治です。宮沢賢治の文体は一種独特で、作品の内容も、児童文学の範疇をはるかに越えて普遍性を獲得している。ところが賢治の文章は、ダイレクトに僕の中に入ってこない。読みにくいわけではない。ワンクッション置いて、入ってくるのである。この感覚は僕だけでなく、宮沢賢治ファンの多くの人が感じているのではないだろうか?物語の内容もユーモアにあふれて、子どもに読み聞かせすると、子どもが笑う箇所がいくつかある。しかし、である。大人の僕が読むと、ふーむと考えてしまうことが多い。物語の内容は面白いのだが、何かひっかかるのだ。何がひっかかるか、よく分からないのだが、気になる感覚が残ってしまう。これは読後の消化不良ではなく、言葉に表したいのだが、表せないもどかしさと言ったほうが正確かもしれない。それは、おそらく光あるものであり、僕がちゃんと生きようと思う限り、宮沢賢治の魂が僕に訴えているのだと思う。だから、宮沢賢治は気になる作家であり、ときどき手にとって、30ページくらいの童話を読み、しばらく考えて、すこしいい気持ちになるのだ。

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書評 夏目漱石 「坊ちゃん」

2007-04-13 08:37:36 | Weblog
みなさんもご存知の、夏目漱石の「坊ちゃん」という小説を先日、恥ずかしながら初めて読みました。この小説は、痛快な青春小説だ!と言われていますが、はたしてそうでしょうか?
 主人公の坊ちゃんは無茶苦茶です。母親が病気で死ぬ2.3日前に台所で宙返りをして騒がせ、重病の母に怒られます。また悪さばかりして、父親から親子の縁を切られ、兄とも仲が悪い。唯一、お手伝いの清というばあさんだけが、「坊ちゃんは気性がまっすぐで偉い」とほめてくれます。本人はなぜ褒められるのかわからない。数学の教師として松山に来るのですが、生徒からはからかわられ、いたずらをされて、すぐ切れてしまいます。そして教頭の赤シャツの罠にはまり、友達の山嵐と暴力事件を起こし、警察につかまり、新聞沙汰になってしまいます。当然山嵐はクビ。坊ちゃんも先生をやめるのですが、二人を陥れた赤シャツに仕返しをするために、1週間以上、張り込みをします。今でいう、ストーカーですね。最後に赤シャツと子分の野だいこを二人でぼこぼこに殴って、松山を離れます。この間、赴任して1ヶ月、坊ちゃんは1ヶ月しか先生をしていません。痛快青春小説というよりは先生失格小説という感じです。(今で言えば暴力教師です)
 それから、この本を読まれた方はお分かりでしょうが、坊ちゃんは松山が大嫌いです。言い方は悪いですが、松山の事を「ぼろくそ」に言っています。たとえば教師たちは、生徒のことよりも自分の保身のことばかり考えている、また生徒たちはいたずらをしても、のらりくらりと追求をかわし、うわべだけの反省しかしない、松山は文化不毛のど田舎のような描写などなど。
 それなのに、現在、松山の方では、嬉しそうに「坊ちゃん団子」とか「坊ちゃんスタジアム」「坊ちゃん劇場」とかつくって喜んでいます。不思議なものです。松山の人間は自虐趣味でもあるのでしょうか?

 漱石はこの作品を1週間くらいで書き上げたそうです。(すごい!)100年以上も前の小説ですが、勢いのあるいきいきした文体と社会に対するものすごい批判精神が表れていて、それがこの作品の素晴らしさであると思います。

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