教育落書き帳

教育とは何か…子どもの視点を尊重し、親、伴走者、市民の立場から語ります。子どもを語ることは未来への信頼と希望を語ること。

不登校・フリースクールを取り巻く現実と理想と(1)

2010年07月04日 | 不登校
▼フリースクールでの現実の対応に追われて
本当は、「漫画で作文」の実践を具体的かつ理論的に理解して頂くためにも、「視覚的映像認識から論理的言語表現へ」などのテーマのもとに話を進めたいところ。しかし、子ども達の勉学等の活動に接したり、外部から来られる様々な悩みを抱えた方々の相談にのったり、現場で日々の業務を行っていると、一つの文書を作るにせよ、活動の狭間でしたためるしかなく、研究者然とした時間はまず取れない。
▼学校の先生とは「忙しさ」の実態が違う
いや、「毎日が忙しい」と悲鳴をあげておられるという学校の先生と比べても、ずっとずっと私達の方が時間の余裕がないのではないだろうか。「忙しい」と不平は言っても、学校の先生方は少なくともそれで生活が保証されている訳だ。自身が「登校拒否」の先生であっても、バカな事件を起こして首にでもならない限り、その生活は保証されている。我々のようにスクールを維持するために身銭を切るなどという愚かしいことを一切する必要はないわけだ。
だから、学校の先生が「忙しい」という事態は決して喜ばしいことではないが、教育公務員の贅沢な不満に聞こえなくもない。「政権交代」が実現しても一向に変わらないばかりか、出来なかったことを免罪符とするような動きを見て尚更にそう思う。
▼「不登校」という現実に向かい合う
というわけで、何ら教育公費の支援を受けていない我々フリースクールの運営者やスタッフにとって、自分たちの教育活動を維持することだけでも大変な状況にあるが、これはどこのフリースクールでも同じ様だ。しかしこれは、我々だけの問題ではなく、実際に不登校となった本人やその親御さん達は「アンビリーバボー」な現実に直撃されることになる
我が子が学校を離れるというそれだけの行動をとっただけで、親の委託によって教育権を国家が保障する義務教育制度から我が子は放り出されることになるのだ。日本では─外国では考えられないことだが─「教育を受けること」=「学校に通うこと」と同義だからである(「これ、とてもおかしい」)。
その結果、子ども達は教育公費による一切の援助を受けられなくなり(学校に回されている不登校生分の教育公費は教員の人件費等に消えているようだ)、いわば「教育棄民」とでも言うべき状態に置かれてしまい、下手をすればこのまま引きこもってしまうのではないか、という不安で一杯の現実に初めて直面するわけである。
▼認められない子は自分を責め他を責める
そういう不安を抱いたご家庭の中で、ある程度経済的に─我が子のためならば─支えられるとお考えになった方々が、私達「ぱいでぃあ」のようなフリースクールの門を叩いて来られる。でも、そういう親御さんは全体の不登校生のうちの何%かに過ぎない。大部分の不登校生の親御さんはまだ若く、経済的に独自に支援することは大変なことである。
だから、圧倒的多数の子ども達は、最初の頃は相談室や保健室通いをしたとしても、フリースクールに通えるだけの経済的余裕はなく、やがて自虐的なマイナス感情で一杯になり家に引きこもるしか選択肢がなくなる。家でも家人からも理解が得られない場合には自室に鍵をかけて閉じこもるか、自傷行為に走るか、家の壁が突き抜け鉄骨が剥き出しになるような破壊行為を見せたりもする。現場で撮ったそういうリアルな映像もある。
▼自死を遂げた子ども達も…
そして、時には、自死を遂げるに至ることもある。今までにも、何人もの親御さんが我が子が身を投じたり、自死を遂げた後に私どものところにやって来た。でも、事前にフリースクールにでも救いを求め判っていれば食い止められたかもしれないその子の命も、行為の後ではどうにもならない。
その子が自死した後、その親御さんが自責の念に駆られ、どんな後悔の手記や出版物を残そうと、その子は戻っては来ない。逆に、そういう手記を書き綴り、記憶の中で反復し、どうにもならない現実に悶々とすることほど人の精神を傷めつけるものはない。
もしかして、その当事者でなかったなら、その事件の現場が学校であろうと、自死のきっかけに教師が絡んでいようとも、言い繕い、言い逃れ、仕事と割り切り、忘却の彼方へ連れ去ってしまうことも出来るかも知れない。だが、親の場合には、一生悔悟の念が脳裏から離れることはなくなる。そして、毎日が生き地獄のような生活になってしまうのだ。そういうことを学校の教員はどれだけ考えていることだろう。
(続く)
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