第10話 手動式MDとなった減速微動装置
マークXシステムの発売当初よりある駆動用付属品として、減速微動装置という製品がありました。これは超焦点の写真レンズや望遠鏡で天体写真を撮影する場合に、赤経はモータードライブ(MD)のコントロールボタンで微妙な追尾が可能ですが、赤緯方向はウォームを手で回すことになるので微妙な動きが出しづらく、このためにウォームの回転をおよそ1/10に減速する付属品が必要となったのです。
実はこの装置、MDの減速ギヤーをそのまま使っているのです。物語第8話でも書いた通り、当時のパルスモーターは1, 2, 5rpmといった決まった回転数のものが入手可能なため、MDのモーターには1rpmが使われていました。このモーターをウォーム軸に連結するために使われた4枚の歯車が、そのまま減速微動装置にも使われました。減速比はおよそ1/11.4になり126歯のウォームホイルに伝えられます。
すなわちこの装置はMDのモーターを取り外し、それにつまみを付けたものということになります。すると……、そうです。このつまみを1分間1回転すればMDの代わりになることに気づきます。つまみには5秒おきに12等分目盛が入っていて、アナログ時計の秒針を見ながらつまみを回転させれば、恒星時追尾が手動でできます。
物が豊かな現在の天文屋さんには考えられないことですが、高価なMDが買えなくてこの減速微動装置をMDとして使っておられた往年の天文屋さんも多いはず。本当にご苦労をかけてしまいました。反省!(suzu)
画像上:MXカタログに表れた減速微動装置
画像下:減速微動装置とアナログ時計