昇交点

五藤テレスコープ的天文夜話

マークX物語(9)

2013-11-01 12:47:00 | マークX物語

Pm8

Mdu_2

第9話 マークXのピリオディックモーション

いかに精度の良いモータードライブ(MD)を作っても、それが赤道儀に正しく取り付けられて、かつ赤道儀の性能もそれに合致した性能がないとMDは生きてきません。今日、長焦点での天体写真の撮影に、ほとんどのアマチュアはオートガイダーを使用していますが、マークX開発当時はそんな便利なものはまだなかったので、赤道儀のウォームギアのピリオディックモーション(PM)が追尾精度の鍵を握っていました。

マークX赤道儀を現在でもお持ちの方は、そこに組み込まれたウォーム軸の両端を見て下さい。そこには小さなくぼみがあるでしょう。これはセンター穴といって、ウォームを加工する時にこの穴を基準に加工や精度測定を行うのです。まず材料からウォームの形状を削り出すのですが、センター穴を測定器に掛けて、ウォームメタルと嵌合する部分の軸の偏心誤差を測定します。細かい数値はもう忘れてしまいましたが、数ミクロン以内の誤差に抑えていました。更に歯切加工もこのセンター穴を基準にします。


このように精密に加工されたウォームでも、これにMDを取り付けると不思議なことにPMが発生するのです。この原因の追究には長い時間を要しました。

最大の原因はウォーム軸と嵌合するMDの軸受です。今日の赤道儀は殆どMD内蔵型になっていますのでそんな問題は発生しませんが、当時MDは高価でしたので別売でした。すなわちアマチュアの皆さんがご自身でMDを赤道儀に取り付けなくてはなりません。嵌合の誤差を少なくすると、とてもウォーム軸に挿入しにくくなります。この嵌合の誤差が、MDを取り付ける時にねじで固定するため、偏心としてPMに現れるのです。

さまざまなテストの結果、MDを赤道儀に取り付ける時、しっかり固定するのではなく回転止めの役割をする長穴の接続金具を介して取り付けると、PMが非常に少なくなることが分かりました。そのテスト結果を受けて写真のようなU字型の接続金具が考え出され、非常に良好な結果をもたらしたのです。

次の写真は私が所有しているマークX赤道儀で、PMの値が測定の結果±8秒あります。35年以上前の赤道儀として、この値は結構良い数値ではないでしょうか。(suzu)

画像上:マークXのピリオディックモーション テスト
画像下:MDの接続金具


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