国立がん研究センターが29日に初めて発表した、47都道府県ごとのがんの発症率では地域差が浮き彫りになった。各部位ごとの傾向も明らかになった。予防対策に独自に取り組む自治体も出ている。
がんと診断された人の割合(発症率)について、全国平均を100とした場合、患者が多い目安の110以上の地域は、胃は男女ともに東北、北陸から山陰地方にかけての日本海側で目立つ。肝がんは男女ともに山梨県や西日本で、肺がんは女性で北海道、近畿、九州北部で多い。大腸がんは男女ともに北東北、近畿、山陰地方で目立った。乳がんは地域的な傾向はないが、東京都をはじめ高い地域が点在していた。
国立がん研究センターによると、胃がんの発症率が高いのは食塩摂取量が多い地域と、肝がんは肝炎ウイルスの感染者が多い地域とおおむね一致するという。
ただ、発症率が高くても、がんで死亡した人の割合(死亡率)に差があった。例えば、男性で最も患者数の多い胃がんで110以上の地域は15県あったが、そのうち宮城、福島、福井県などは死亡率は110以下だった。一方、発症率が110以下だった茨城、栃木、大阪の府県では死亡率が110を超える「逆転現象」も起きている。国立がん研究センターの松田智大・全国がん登録室長は「死亡率が下がった地域は医療機関同士の連携が進んでいる可能性が考えられる」と話す。
2012年に新たにがん(上皮内がんを除く)にかかったのは男女合わせて86万5238人と推計され、過去最高だった。高齢者の増加が原因とみられ、その影響を除くよう補正すると、発症率は前年より少しだけ下がった。
松田さんは、大腸がんや乳がんの発症は増えているが、胃がんや肝がんの発症が減ったことで全体の発症率が下がったとみる。「胃がんの原因となるピロリ菌や、肝がんに進行する恐れのあるC型肝炎ウイルスの感染者ががんになりやすい世代で少なくなり、新たに発症する人が減った」と指摘する。
各地で様々な取り組みも広がっている。
今回、男女ともにがん死亡率が全国で最も低かった長野県は、保健師の活動を補助する「保健補導員」を住民が交代で担当し、がん検診の呼びかけや生活習慣の改善などに地域ぐるみで取り組んできた。
男性の胃がん発症率の高さが全国有数の新潟県は減塩運動に取り組む。県のホームページによると、08年に11・5グラムだった成人の食塩摂取量は11年には10・8グラムに減少した。