10月から消費税10% 公共料金上げ、ポイント還元開始
- 2019/9/30 4:00
鉄道各社は運賃表の差し替えを急ピッチで進めている(JR東日本の桜木町駅)
明日、10月1日から消費税率が10%に上がる。様々な制度や公定価格が変わる。食料品などの税率を8%に据え置く軽減税率制度の導入や幼児教育・保育の無償化など新制度が始まる。一方で、鉄道運賃や電気やガスといった公共料金など値上げされるサービスもある。キャッシュレス決済を対象とするポイント還元制度をうまく活用することが、家計負担を減らすポイントになりそうだ。
この秋以降、家計にとって最大の変化が5年半ぶりとなる消費増税だ。あわせて初診料や再診料も引き上げられる。政府は消費への悪影響を和らげる狙いもあり、軽減税率制度を初めて導入する。飲食料品と定期購読の新聞などは8%のままでの税率を適用する。
■子育て世代に支援策
さらに、子育て世代を支援するために、消費増税による税増収を財源にした幼児教育・保育の無償化が始まる。3~5歳児は原則全ての世帯で、0~2歳児も住民税が非課税の世帯は保育料などが無料になる。
対象サービスとしては、認可保育所と認定こども園は保育料が無料になり、幼稚園も月2万5700円を上限に補助される。自治体によっては独自の助成制度を設けるところもある。子育て世代は増税の負担増を加味しても、習い事や貯金など子供の将来のためにお金を回しやすくなるケースが増えそうだ。
一方で、子供が大きくなっていたり成人したりしている中高年世帯や独身世帯はこうした無償化の恩恵に乏しい。消費増税による外食や光熱水道、自動車関連、通信で負担増になる。
■ポイント還元50万店
負担軽減のカギは政府が20年6月までの時限措置として導入するポイント還元事業だ。クレジットカードやスマートフォン決済などで払うと、一般の中小店舗では5%分、コンビニエンスストアなど大手のフランチャイズチェーン(FC)に加盟している中小店舗では2%分のポイントをもらえる。
10月1日時点の参加は約50万店程度にとどまるが、スタート後も途中参加が認められており、対象店舗は段階的に増えていきそうだ。還元事業の対象外の大手スーパーや百貨店でも、対抗したキャンペーンの動きが今後出てきそうで、こまめな情報収集が家計の助けになりそうだ。
■公共料金で値上げ
10月の消費増税で、身近な鉄道や宅配便などのサービス、電気やガスなどの公共料金が改定される。一部では増税分以上の値上げもみられ、家計の負担が増すことになる。
交通機関の運賃は10月から増税相当分の改定となる。鉄道の場合、JR北海道を除くJR5社や私鉄大手が運賃を2%程度引き上げる。JR東日本の山手線はICカードでの初乗り運賃が133円から136円になる。
新たな移動手段として利用が増えているカーシェアリングでは、増税分の反映を超えた値上げがみられる。最大手のパーク24は設備投資の増加を理由に、最低料金で6.8%引き上げる。
宅配便の場合は佐川急便が1円単位で、日本郵便が10円単位で端数を四捨五入する形で、それぞれ増税分を反映する。最大手ヤマト運輸は、現金払い料金への増税反映だと10円単位で端数分を切り上げ実質値上げとする一方、1円単位で転嫁し改定幅が小さく割安なキャッシュレス決済の料金を新設して移行を促す。
電気やガス、水道では、増税を反映した料金引き上げのタイミングがずれる。使用期間が増税前の9月を含めば経過措置により8%で計算する。このため増税反映は電気・ガスでは11月分から、水道は隔月の検針のため12月分から反映される場合が多い。
消費増税対策として政府が準備した低所得者向け「プレミアム付き商品券」の利用申請が進んでいない。東京23区と全国20の政令指定都市を対象に聞き取り調査をしたところ、申請率は平均2割程度だった。手続きの煩雑さや購入費用の負担がネックになっている。
プレミアム付き商品券は子育て世帯と住民税非課税の所得が低い人が購入できる。商品券には25%のプレミアムが付く。このうち子育て世帯には自動的に商品券の購入に必要な引換券が送られてくるが、低所得者が購入を希望する場合には事前に自治体に申請する必要がある。
聞き取り調査では申請率が最も高い神戸市でも32%だった。10%台前半のところもあり、ある自治体の担当者は「手続きが複雑で敬遠されている」と打ち明ける。北九州市のコールセンターには「商品券を買うお金がない」、「現金支給の方が良い」などの苦情が届いているという。
申請期限は自治体によって異なり、年明けまで受け付けるところもある。政府は2100万人の住民税非課税者の利用を見込んでいる。