はぎやまのりへいの日常

読書、映画、美術展、そしてキャリア教育。
好奇心と愛で書き綴ります。

Vol.275 祝祭

2013-10-11 22:04:11 | 映画


大学でチャペルシアターというのがあってチャペルで映画が鑑賞できる。
今週の水曜と、今日がそのチャペルシアターの日だった。

水曜日は「ソウル・サーファー」という作品。
そして、今日上映されたのは韓国の映画で
イム・グォンテク監督の「祝祭」という作品。

痴呆とは自分の人生を過去にさかのぼりながら生きること。

「翁草は春を数える花」という童話と、
儒教式の韓国のお葬式を紹介しながら、
著名な作家の母親の、本当に祭りのようなお葬式を軸に物語は進んでいく。

童話の中には14倍年齢が違うおばあちゃんと孫が登場する。
6歳と84歳だろう、きっと。

おばあちゃんはお父さんの親なのに、お父さんやお母さんより身体が小さい。
年齢を重ねると身体は大きくなると思っていたのに、と不思議がる娘に、お父さんは説明する。

「おばあちゃんはお前に年を分けているから、お前が大きくなる分、
 自分の身体が小さくなっていくんだよ。」

ありがたいけど、複雑な気分。

おばあちゃんはどんどん子どものようになっていき、
わがままになって、そして赤ちゃんのようになる。

お父さんは、
「おばあちゃんは孫のお前に知恵を分けているから、
 自分がどんどん子どもになっていくんだよ。」 と説明する。

「そしてこれ以上小さくならないところまで来たら、姿を消すんだ。
 でもちっとも悲しむことはない。おばあちゃんは別のところで生まれ変わるんだから。」

おおよそ、そんな童話。

あらためて読んでみたいと思ってAmazonで検索したけれどヒットしなかった。
きっと日本ではまだ出版されていないのだろう。

時折、田村正和っぽさを感じさせるアン・ソンギという俳優が演じる、主役のジュンソプは、 舞台が韓国であり、作家であることから、来年度から聖学院大学の学長になる姜尚中先生と、 僕には重なって見えてしまう。

そういえば、姜尚中先生のベストセラー小説「心」が映像化されるなら 主役の先生役はきっと田村正和だと、僕は勝手に想像していた。

母親は87歳で大往生。
人生を生き抜いたと思えば悲しくはないけれど、 これまで過ごしてきた時間を思い出すと寂しくなる。
じんわりあったかいけど、感動というのと少し違う。
なんか不思議な心持ちだけど、好い映画だったと思う。

人生をさかのぼっていくといえば、「ベンジャミン・バトンの数奇な人生」を思い出すが、 ベンジャミン・バトンを見終わった後も、こんな心持ちだったかも知れない。

こんな映画を観れるなんて、なんて好い大学なんだろう。