夢を見た。
さびれた町の小さな駅の近くに廃墟となった交番がある。
街灯の柱が立っていて貼り紙がしてある。
この建物は警察官が定期的に巡回しています、という意味のことが書かれている。
思えば、夢の中で文字を読んだのははじめてだ。
夢を見た翌日、
映画「FOUJITA」を観た。
夢の中で聴いたような音楽が流れていた。
夢のようなパリの風景、
仮装をしてお祭り騒ぎをするシーンは少し残念な気がした。
黒澤明の「夢」の狐の嫁入りのシーンの妖艶さを思い出していたから。
この映画、前評判はいろいろあるらしいが、僕はニュートラルに楽しんできた。
藤田嗣治は実在の画家だけれど、映画はドキュメントではない。
監督が解釈した藤田像、藤田の時代を表現すればそれで良いんだと思う。
みうらじゅん と いとうせいこうのザ・スライドショーにオレの◯◯というシリーズがあるが、
オレのふじた、オレのパリ、オレのモンパルナスでいいんじゃないかと。
僕にはわりとイメージ通りのカフェだった。
以前はああいう世界に憧れたけれど、
飲んでバカ騒ぎするのは疲れそうで、もう無理、とか思いながら眺めてる。
思いがけず藤田に絵をプレゼントされて、小躍りして喜ぶ女性。
サザエさんみたいだなと思った。
サザエさんはモダンガールだからフランス人女性の影響を受けてるんだな。
華やかなパリ時代の前半とうって変わってどんよりと重い後半の戦時中の日本の映像。
どんなメッセージを受けとめれば良いのだろうととまどい、そしてスッキリしないままに映画は終わる。
映画館が明るくなり席を立つ。
お客さんは僕以外は年配の女性3人だけだった。