フジオ・プロのある町の会社に勤めて15年以上になる。
近くに赤塚不二夫が良く通っていた居酒屋がある。漫画にも描かれた寿司屋や洋食屋がある。
子どもの頃、赤塚不二夫に憧れて漫画家になりたくて、小学館の「漫画なんでも入門」を読んで赤塚賞を真剣にめざしていた僕にとっては夢のようなことなのだが、実は僕はこの町が大嫌いだ。
バカ(本当は馬鹿じゃないけど)でエロな僕の神様の対談集。
柳美里は簡単なことを無理に難しく要約しようとして、赤塚にばっさりやられる。
「理屈っぽい。」
まさしく僕もそう思う。面倒臭い女だ。
「◯◯ですよね?」と機嫌を取りながら、赤塚に気に入られるような言葉を必死に探しながら、おそるおそるしゃべっているのに、
「ちがう。」と簡単に切り捨てられる。
かなり厳しい。全否定だ。そこまで言わなくてもと思う。
ダニエル・カールもかなり手厳しくやられる。歯に衣着せぬ、これでもかというアメリカ批判。
ダニエルも一生懸命に先生の機嫌を取って、話を合わせようとするがコテンパンだ。
それなのにみんなちっとも怒らずに対談が成立しているのは、すでにこの対談の企画の時には赤塚不二夫が死にかけていたからなんだろう。
タモリや立川談志、たけし、アラーキーは、構えず自然に話して対談が成立している。
まあ、相互にリスペクとしているからなんだろうけど、「器がちがうな」と思うしかない。
松本人志もお笑い論をすごくまじめに素直に対談している。きちんと的を射た会話になっていて頭の良さを感じる。なるほど素直がいいのだ。取り繕ったり、カッコ付けたりすると赤塚先生にガツンとやられるのだ。
松本人志との対談の中で赤塚不二夫は
「漫画を漫画から学んではダメだ」と言っている。
良い映画を観て、良い絵を見て、良い音楽を聞いて、そういうところから吸収すべきだ、と。
まったく僕もそう思う。クリエイターは目の前の仕事を放り出してでも美術展へ行くべきだと20年以上前から僕は言い続けている。
アウトプットも大切だけどインプットの量と、本物を分かる力が必要だ。
「俺は下らないものしか好きじゃない。」
さすが、天才バカボンのパパを生み出した男は言う事が違う。